【2025年最新】スタートアップの株式譲渡とは?流れ・注意点・成功のポイントを解説
スタートアップの株式譲渡においては、会社法上の承認手続・投資契約や株主間契約の制約・優先株の分配順位・税務・名義変更実務など、さまざまな問題が同時に発生します。

とくに未上場で譲渡制限が付く会社では、定款や会社法に基づく承認(取締役会または株主総会)が必要となるのが一般的で、「合意がなければ売れない」ケースも少なくありません。
加えて、VCや事業会社が入っていると先買権やみなし清算条項などが効き、誰に・いくらで・どの順番で売却代金が配分されるかが大きく変動するものです。

そこで本稿では、スタートアップ特有の落とし穴と成功のコツを、実務目線で整理していきます◎
スタートアップならではの株式譲渡の注意点
スタートアップの株式譲渡では、「売り手・買い手」の二者だけでは完結しません。
多くの場合、会社法や先買権、優先株の清算優先順位、SO(ストックオプション)を含む人事、名義書換・株主名簿管理といった論点が同時多発します。

そこでまず、実務でつまずきやすい6つのポイントを押さえておきましょう。
複雑な株式構造|優先株・転換社債が絡む場合のリスク
スタートアップでは、普通株に加えて優先株や転換可能な資金調達手段が併存することがよくあります。
こうした条件は、将来のイグジットを見据えて初期の段階から綿密に設計されるのが通例です。

また売却時の分配順序、いわゆるウォーターフォールは、投資契約や財産分配契約で厳密に定められます。
したがって、「売却額=創業者の取り分」とは限りません。
経済産業省の資料でも、みなし清算条項や同時売却請求権(ドラッグ・アロング)といった規定を組み込んだ分配設計の重要性が明確に示されています。
▶我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項 | 経済産業省 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会
とりわけシード期に広く用いられるJ-KISSは、将来の資金調達ラウンドで株式に転換されることを前提に条項が組まれているのです。
譲渡制限条項|投資契約で自由に売れないケース
未上場の多くは譲渡制限株式です。定款で別段の定めがある場合を除き、譲渡を承認するか否かを株主総会で決議することが原則になります(会社法139条)。
また、第三者に対抗するには株主名簿への記載・記録が必要で、名義書換が済むまで議決権・配当等の行使に制約が生じることも。

さらに、上場株式等の振替制度に該当しない非上場では、会社または株主名簿管理人での書換手続が基本とされています。
定款・取締役会規程・株主名簿管理人の手続を事前に確認し、承認→契約→名義書換の順序を崩さない運用が求められます。
同意の必要性|VCや既存株主との調整が必須
譲渡制限の承認だけでなく、投資契約や株主間契約には、既存株主が先に買う権利(ROFR/ROFO)、少数株主が同条件で一緒に売れる権利(タグ・アロング)、一定の要件を満たしたときに他の株主にも売却に応じてもらう権利(ドラッグ・アロング)を盛り込むのが一般的です。

経済産業省の「ベンチャー契約の留意事項」では、分配ルールを定める財産分配契約の位置づけが、M&Aの意思決定を素早くそろえるうえで大きな効果があると示されています。
同時売却請求権とは、ドラッグ・アロング・ライト(Drag Along Right)、又は売却請求権ともいわれ、多数の投資家の賛成等の任意に設定された一定の要件を満たした場合、発行会社、創業株主に限らず他の株主に対しても買収に応じるべきことを請求することができる権利である。
このように、財産分配契約において事前に M&A の発動に関する合意と M&A が生じた際の株主間の分配方針を定めることにより、投資家及び創業株主の Exit を円滑化するために重要な役割を果たしている。
引用:我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項 | 経済産業省 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 p13-14
しかし一方で、創業者や従業員、エンジェル投資家の意向に反して売却が進むおそれも否定できません。
守秘契約を交わし、ティーザーで概要を共有しながら意向の確認までを計画的に進めることで、混乱を防ぐ取り組みが必要です。
株主間契約の落とし穴|譲渡制限や優先交渉権に注意
株主間契約(Shareholders’ Agreement)には、取締役指名権・情報提供・競業避止・ロックアップ・上場時の取扱いなど、経営とExitの双方に関わるさまざまな条項が含まれています。
近年は「財産分配契約」として、みなし清算条項や同時売却請求権など、M&A時の分配・売却ルールだけを抜き出して全株主で締結する例も増えています。
Exitを明瞭にするという意味では非常に有効ですが、少数株主の保護や優先交渉権(買い手・既存株主)とのバランスを欠くと紛争の火種になることも。

譲渡制限・先買権の発動条件やドラッグ/タグの要件は最低限チェックしておきましょう。公的解説は経産省資料にもまとまっています。
株主間契約又は財産分配契約に、同時売却請求権が他のいかなる契約条件にも優先する旨を定めておき、投資家が株主間契約又は個別に交わした契約等で有する先買権や優先交渉権が、同時売却請求権の効力に影響を与えないようにしておくことに留意すべきである。
引用:我が国における健全な ベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項 | 経済産業省 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会 p51
少数株主トラブル|権利保護と対立回避のポイント
創業初期に分散した少数株主(元社員・エンジェル等)は、Exit時の同意取得や連絡体制の乱れが実務のボトルネックになりがちです。

情報不足による不信や価格不満、税務に関する誤解などがよくあるトラブルとして挙げられます。
中小企業庁の事業承継ガイドラインも、株式譲渡を含む承継局面で関係者調整と計画的準備の重要性について繰り返し説いています。
税務・ストックオプション|創業者や社員に及ぶ影響
株式譲渡益は申告分離課税20%(所得税15%+住民税5%)が基本で、復興特別所得税(2.1%)が上乗せされます。

SOは税制適格と非適格で課税時期が異なり、前者は権利行使時は非課税・売却時に譲渡所得、後者は行使時に給与課税+売却時に譲渡所得となるのが原則です。
さらに、行使株の売却によりキャッシュが発生したタイミングでの納税資金繰りを誤ると、従業員負担が発生するため注意が必要です。
Exit直前ではなく、少なくとも半年以上前から行使スケジュールと税額試算を回すよう心がけましょう。
▶No.1540ストック・オプション税制の適用を受けて取得した株式を譲渡した場合 | 国税庁
スタートアップの株式譲渡を成功させるためのポイント
株式譲渡の価格と条件は、交渉テーブルに乗る前の準備でほぼ決まります。
スタートアップ特有の契約制約・優先順位・同意要件・税務影響・名義書換までを逆算し、「誰にどんなシナジーが出るのか」を解像度高く示すことが、バリュエーションの上振れにも直結します。

以下の5点は、創業者・CFO・法務責任者が並走して同時に進めると効果的です。
チェックリスト化して、KPIや権利関係の抜け漏れを潰しましょう。
- 投資家・VCと早期に合意形成を進める
- 財務や契約を整理してデューデリジェンスに備える
- 契約書で重要条項を徹底的にチェックする
- Exitストーリーを明確にし、投資家のEXIT期限とも整合させる
- 専門家(弁護士・会計士・仲介会社)との連携体制を築く
投資家・VCと早期に合意形成を進める
まずは誰が承認権を持ち、どの順番で同意を集め、どの条件で横並びの扱いになるのかを一枚の表にまとめます。
価格だけでなく、支払いの時期、将来成果に応じた追加対価の有無など、条件面の優先順位も合わせて定義しましょう。
ウォーターフォール(分配シミュレーション)を共有し、創業者・従業員・投資家のインセンティブを揃えられれば、揉めるリスクが一気に下がります。

中小企業庁が公開している投資契約書のひな形をチェックしてみましょう。
株主間契約/財産分配契約の典型条項を整理しており、実務のなかで非常医参考になりますよ。
可能であれば月次のアライン会議を設け、議事とアクションを手早く配布する運用をとるのが望ましいです。
財務や契約を整理してデューデリジェンスに備える
デューデリジェンスで減点されない企業は、例外なく準備が早いです。
まずは土台固めとして、以下の方法は最低限把握しておき、最初の質問に即応できるよう備えましょう。
デューデリジェンス前に整理しておくべき情報
・直近24か月の月次PL・BS・主要KPIの推移
・トップ顧客の売上構成
・主要取引契約の一覧と譲渡可否
・知財台帳(発明者・帰属・共同範囲)
・人員リスト(役割と在籍形態)
・情報セキュリティ運用の要約
加えて、未処理の精算、売掛・前受、返金ポリシー、収益認識の基準など、会計方針についても整理できればベターです。
契約書で重要条項を徹底的にチェックする
最終契約(株式譲渡契約)で価格と同じくらい効いてくるのが、条件の設計です。

とくに注意したいのは、価格調整・補償・行動制限の3点。
事実関係を広く宣誓しつつ、上限を売却代金の何%にするか、紛争時の解決手段をどうするかまで含めて線引きしましょう。
競合での就業や顧客の引き抜き、キーパーソンの離脱など、価値を毀損しやすい行為をどの範囲まで禁じるのかも要検討です。
条文は難しく見えますが、「後から解釈が割れないように具体的に示す」ことが何よりも重視されます。
経営陣全員で同じ目線を持ち、重要事項を徹底的にチェックしましょう。
Exitストーリーを明確にし、投資家のEXIT期限とも整合させる
買い手が最終的に納得するのは、数字そのものより「事業が自社でどれだけ伸びるか」というストーリーです。
買い手それぞれにとっての収益の伸び方、コストの下がり方、販売網の活用余地などをスライド数枚で描きます。
毎月の主要KPIは“伸びの再現性”が伝わる切り口(コホート、継続率、顧客区分別の単価)で更新し、面談のたびに最新を提示できるようにしておきましょう。

Exitの設計を早く言語化するほど、評価はぶれにくくなります。
専門家(弁護士・会計士・仲介会社)との連携体制を築く
ここまで様々な注意点をお伝えしてきましたが、社内だけで走り切ろうとすると、必ずどこかで詰まります。
法務に不安がある場合は、スタートアップの投資契約とM&Aの両方に強い弁護士を軸に。会計・税務面では、ストックオプションや収益認識に明るい公認会計士・税理士を据えると安心です。

案件を進めていく段階では、買い手候補の開拓と条件比較に長けた仲介会社のアドバイスを取り入れるのが得策です。
外部の力を上手に取り入れられれば、譲渡プロセスの速さも正確さもアップします。
スタートアップの株式譲渡の流れ
株式譲渡の現場は「契約を結んで終わり」ではありません。
スタートアップの場合、とくに未上場で譲渡制限のある会社が多く、社内の承認や名義書換といった法的手続きが成否を左右します。

準備の段階から「どの承認が必要で、名義書換は誰が、いつ、何をもって行うか」を決めておくと交渉も決済も滞りません。
全体の流れを簡単におさらいしておきましょう。
株式譲渡の基本スキームを確認する
株式譲渡は、会社そのものを移し替えるのではなく、株主を入れ替える取引です。
事業の契約や許認可、資産・負債は会社に残り、所有者だけが変わるからこそ、買い手は負債や法令違反が潜んでいないかを幅広く精査します。
売り手側は、どの株主が何株を譲るか、価格はどう決めるか、支払いは一括か段階か…といった条件を最初に設計しましょう。
スキーム確認の段階で、承認ルートと名義書換の段取りまで併せて設計しておくと、後工程の手戻りを防げます。
株主総会・取締役会で承認を得る
譲渡制限のある会社では、譲渡を承認するか否かを会社が決めます。
取締役会設置会社であれば取締役会、それ以外は株主総会が原則の機関です。

定款で別の手順を置くこともできますが、最終的に会社としての可否判断を経る点は変わりません。
実務では、議案書・相手先の基本情報・譲渡数量と対価・承認しない場合の代替案(会社や指定人の買取)など、意思決定に必要な材料を事前に整えておき、決議後は遅滞なく申請者に結果を通知します。
株式譲渡契約を締結する
承認の目処が立ったら、最終契約に落とし込みます。
▼株式譲渡契約で設計する条項
- 株式数と価格、支払方法
- 双方が事実関係を約束する表明保証
- 誤りがあった場合の補償
- クロージングまでに満たす条件
- 競業や人材引抜の抑止、秘密保持など
価格は「決算日の残高を基準に後で調整する」「将来の成果に応じて追加で支払う」といった方式も取れます。
条項の目的やバランスについては、中小企業庁が公開しているガイドラインなどを参照しながら確認を進めてください。
▶事業引継ぎガイドライン~M&A等を活用した事業承継の手続き~ | 中小企業庁
株主名簿の書換・名義変更を行う
資金が動いても、株主名簿が書き換わるまでは「新しい株主です」と第三者に主張できません。名義書換が対抗要件だからです。
譲渡人と譲受人の情報、株数、取得日、裏付け資料など、会社が定める様式に沿って申請し、決済当日に書換まで終えられるよう段取りを組みます。
クロージングに関するチェックリストを事前に用意し、法律上の順番を守って手続きを進めることが、実務のトラブルを防ぐうえでの最大のポイントです。
クロージング後の投資家・従業員対応
創業者や従業員が株式を売却して利益が出た場合は、原則として申告分離課税の対象になります。
ストックオプションは、税制適格か否かで課税タイミングが変わるため、行使計画と納税資金の見込みを事前に設計しておくことが欠かせません。
PMI(統合)においては、誰が何をいつまでにやるかを予め整理し、税務・人事・広報が足並みを揃えて動けるようにしましょう。

クロージングが終わった直後こそ気を抜かず、社内外の“温度差”を生まない運用が大切です。
スタートアップ株式譲渡に関してよくある質問
最後に、創業者やCFOから頻繁に寄せられる疑問を取り上げます。
Q. VCが入っている場合でも自由に株式譲渡できますか?

自未上場企業の多くは譲渡制限株式で、会社として承認するかどうかを決議する仕組みです。
取締役会や株主総会を経ずに進めるのは現実的ではありません。
加えて、投資契約や株主間契約で、既存株主に優先的に買う権利を与える条項、一定条件で全員に売却に応じてもらう条項、少数株主を保護する同時売却の権利などが置かれているのが一般的です。
したがって、法定の承認ルートと、契約で約束した同意や通知のルールを両方満たす必要があります。
Q. 創業者が一部株式だけ売却することは可能ですか?

可能です。全部を手放す必要はありません。
ただし、会社の承認や契約上の手続きは同じように必要です。
一部株式だけを部分的に売却する場合は、買い手の支配権設計や既存株主間の公平性にも関わるため、相手方の属性・売却数量・価格の妥当性をしっかりと説明できように準備しましょう。
行使から売却までの資金繰りも含め、前もって税理士と試算しておくと安心です。
Q. 株式譲渡で発生する税金や節税対策はありますか?

基本は“申告分離課税”で、上場株式等と一般株式等を区分して計算します。
税金のルールはこまめに変更が入るので、税務当局の一次情報で確認しておきましょう。
ストックオプションは、適格なら行使時の課税を売却時まで繰り延べて売却時に譲渡所得課税へ。非適格なら行使時に給与課税、売却時に譲渡所得課税という流れになります。
Exitの手前で慌てないために、スケジュールや想定株価、税額、納税資金の出所などをひとまとめにしておきましょう。
税負担を軽くすることを考えるよりも、無理のない納税計画を先に作ることが結果的に節税につながります。
Q. 創業者利益や投資家との配分はどのように決まりますか?

一般的に、配分はウォーターフォールで決まります。
優先株に清算優先や参加の有無、上限がある場合、約束どおりの順番と量で分けるのが前提です。
M&Aでは“みなし清算”の条項を使って、清算に準じた分配を適用する設計も一般的です。
ここに、一定の多数決が成立したときに他の株主にも売却に応じてもらう条項、少数株主を保護する条項などを組み合わせ、全員が同じ出口に向かえるように整えます。
事前に数パターンの分配表を全株主で共有し、価格以外の条件(追加対価や留保金の扱い)も含めて、一体で判断できる場を用意しましょう。
Q. 共同創業者間で意見が割れた場合はどうすればいいですか?

まず、定款と株主間契約に書かれた意思決定のルールに立ち返りましょう。
譲渡承認の機関や手続き、先買権や共同売却の扱いが、紛争の“解決レール”になります。
次に、価格・支払い方法・将来の成果連動など、譲れる点と譲れない点を並べて同じ数字と条件で議論できるようにします。
分配についても、優先株や従業員インセンティブを含めたウォーターフォールを最新版で共有しましょう。
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