放課後等デイサービスの売却における株式価値の決まり方、進め方等の実務上の留意点

放課後等デイサービスを売却する際の留意点

放課後等デイサービスの売却を考え始めたとき、多くの経営者がまず調べるのは「いくらで売れるのか」です。しかし、相談の場で実際に多く聞かれるのは、別の問いです。「職員の雇用は守られるのか」「子どもたちと保護者にはどう説明すればいいのか」「自分は退任させられるのか、それとも残れるのか」「借入の個人保証は外れるのか」。売却は資産の取引であると同時に、これまで積み上げてきた支援と人間関係を他人に託す決断でもあります。

本記事では、放課後等デイサービスの売却について、価格の決まり方と進め方という基本を押さえたうえで、「譲渡後に何が起こるか」まで踏み込んで解説します。オーナー自身の処遇、個人保証の扱い、職員の労働条件、支援方針の継続、そして代金を受け取った後も売り手が負い続けるリスク。判断に必要な材料を、実務の順序に沿って整理します。

目次
目次

1. 放課後等デイサービスの売却が増えている背景と、検討すべきタイミング

近年、放課後等デイサービスの売却相談は明確に増えています。その多くは経営破綻を前にした駆け込みではなく、「単独で運営を続けることの限界」を冷静に見極めた結果としての選択です。まず、この構造的な背景を押さえておきましょう。

令和6年度報酬改定が収益構造に与えた影響

転換点になったのが令和6年度障害福祉サービス等報酬改定です。児童発達支援・放課後等デイサービスの基本報酬に、実際の支援時間に応じた区分が導入されました。支援時間による区分は「30分以上1時間30分以下」「1時間30分超3時間以下」「3時間超5時間以下」の3区分とされ、放課後等デイサービスで「3時間超5時間以下」を算定できるのは学校休業日に限られます。また、30分未満の支援は原則として算定対象外とされ、周囲の環境に慣れるために支援時間を短くする必要があるなど、市町村が認めた場合に限り算定が可能とされています。(出典:こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」

この改定は、事業所の収益モデルによって影響がまったく異なります。短時間の預かりを数多く回転させて定員を消化していた事業所は、1人あたりの単価が下がる方向に働きました。加えて、5領域を含む総合的な支援の提供、支援プログラムの作成・公表が求められ、運営基準そのものが重くなっています。

ここに、有資格者の採用難と人件費の上昇が重なります。児童発達支援管理責任者(以下「児発管」)は実務経験と研修修了が要件となるため、退職されても即座に補充できません。紹介会社への手数料や賃上げが利益を圧迫し、単独拠点や2〜3拠点の規模では、制度対応と採用と現場運営を経営者一人で背負う構図になりがちです。売却という選択肢が現実味を帯びるのは、この「制度対応コストが規模に見合わなくなる」局面です。

売却を検討すべきタイミングの見極め方

売却の相談に来られる方の状況は、おおむね次のいずれかに当てはまります。ひとつでも該当するなら、実際に売却し他グループに参画するかは別として、選択肢として検討を始める価値があります。

  • 報酬改定後、以前と同じ稼働率でも利益が出にくくなった。
  • 児発管や管理者が特定の1名に依存しており、その人が辞めたら事業が止まる。
  • 後継者がおらず、自分が引退したら廃業しか道がない。
  • 運営指導での指摘や請求内容に不安があり、専門的な管理体制の下に入りたい。
  • 近隣に競合事業所が増え、児童の確保が年々難しくなっている。
  • 追加出店や設備投資をしたいが、資金と人材の両方が足りない。

自社の位置づけを客観的に把握する目安として、収支差率を確認してみてください。令和5年障害福祉サービス等経営実態調査では、放課後等デイサービス全体の収支差率は5.8%とされています(参照:J-Net21「放課後等デイサービス」)。自社がこの水準を下回っているなら、その原因が改定の影響なのか、稼働率なのか、人件費構造なのかを切り分けることが、売却するにせよ自力で立て直すにせよ、最初の作業になります。

ここで強調しておきたいのは、業績が悪化しきってからでは選択肢が狭まるということです。買い手が評価するのは、直近の利益水準だけでなく、稼働率の安定性、有資格者の定着、記録類の整備状況です。赤字が続き、職員が抜け、記録も追いついていない状態になってから相談されると、価格が下がるだけでなく、そもそも引き受け手が見つからないこともあります。

ポイント
「まだ売る気はないが、いくらになるのか知っておきたい」という段階での相談は、まったく問題ありません。むしろ望ましい進め方です。企業価値の目安と、価格を上げるために何を整えればよいかが分かれば、1年から2年かけて磨き上げてから譲渡するという選択もできます。売却を決断してから相談するのではなく、判断材料を得るために相談する、と考えてください。

2. 売却価格はどう決まるか──放デイ特有の評価ポイント

最も関心が高い論点です。ただし、「相場」という言葉だけを追いかけると、自社の実態と乖離した期待値を持つことになります。算定の考え方と、価格を左右する具体的な要素まで理解しておくことが重要です。

基本の算定式と相場観

中小規模の放課後等デイサービスの売却では、実務上、次の考え方で価格の目安が示されることが一般的です。

時価純資産 + 営業利益(正常収益力)の2年から5年分

「営業利益」とそのまま書きましたが、ここが最大の論点です。買い手が見るのは決算書上の営業利益ではなく、実態に引き直した「正常収益力」です。オーナーやその家族に支払われている役員報酬のうち労務の実態を超える部分、経費に混入している私的支出、オーナー所有物件への相場を超える賃料などを調整し、第三者が運営した場合に本当に残る利益を算出します。役員報酬を高めに取っていた事業所では調整によって利益が増える方向に働きますし、逆に、家族が無給で働いていた場合は人件費を上乗せして評価されます。

金額の規模感としては、単一拠点で黒字運営されている事業所の場合、数百万円から数千万円のレンジに収まることが多くなります。幅が大きいのは、利益水準そのものよりも、この後に述べる評価要素のばらつきが価格に強く反映されるためです。「相場はいくらか」という問いに一律の答えはなく、自社がどの要素で評価され、どの要素で減額されるのかを個別に把握するほうが実務的です。

拠点数によっても価格形成の論理は変わります。単一拠点であれば上記の年買法的な考え方が中心になりますが、複数拠点を持つ法人であれば、EBITDAに一定の倍率を乗じる方法が用いられ、拠点ごとの収益性のばらつきや黒字拠点の比率が評価に反映されます。

価格を押し上げる要素と押し下げる要素

同じ利益水準でも、次の要素によって評価は大きく変わります。自社がどちらに寄っているかを確認してください。

評価軸価格を押し上げる状態価格を押し下げる状態
人員児発管が複数在籍、有資格者の定着率が高い児発管1名に完全依存、直近で管理者が退職
稼働実利用延べ日数が安定、低学年の比率が高い契約児童数は多いが実利用が少ない、高校生が多く数年で自然減
記録個別支援計画・モニタリング記録が全児童分整備作成漏れや交付記録の欠落がある
行政対応運営指導での指摘がない、または是正済み指摘事項が未是正、過去に返還が発生
立地総量規制エリアで新規指定が困難、駅近や学校に近い競合が密集、送迎範囲が広く効率が悪い
物件賃貸借契約が安定、消防・建築基準に適合貸主の承諾が得にくい、設備の是正工事が必要
オーナー依存オーナーが現場に入っていないオーナーが児発管や管理者を兼務している
収益構造基本報酬で固定費を賄えている特定の加算に強く依存している

この表のうち、人員・記録・行政対応の3つは、譲渡を決めてからでも数か月で改善できる余地があります。逆に立地は変えられません。改善可能な項目に絞って手を打つことが、価格交渉における現実的な戦略になります。

注意点
処遇改善加算による収入を営業利益に足し戻して「これだけ利益が出ている」と主張しても、買い手側は必ず控除して評価します。福祉・介護職員等処遇改善加算は職員の賃金改善に充てることが前提とされ、実績報告により賃金改善の実施状況を行政に報告する仕組みだからです。加算収入と対応する人件費は一体で発生するものであり、利益ではありません。ここを織り込まずに希望価格を設定すると、交渉の初期段階で必ず食い違いが生じます。

総量規制エリアであることは価格の武器になる

ここは、多くの売り手が自覚していない評価要素です。児童福祉法第21条の5の15第5項は、都道府県障害児福祉計画に定める必要量にすでに達している、または新規指定によって超過すると認められる場合、都道府県知事(指定都市・中核市においては当該市長)が指定をしないことができると定めています。これがいわゆる総量規制で、政令指定都市・中核市を中心に、実施方針を公表している自治体が相当数あります。

買い手側から見れば、総量規制エリアでは新規に出店したくても指定が下りません。そのエリアに進出する唯一の手段が、既存事業所の取得です。つまり、自社の事業所が総量規制の対象地域にあるなら、それは希少性そのものであり、価格に反映されるべき要素です。

自社の所在地が対象かどうかは、都道府県や市の障害福祉主管課が公表する障害児福祉計画や指定に関する方針で確認できます。交渉の場で「このエリアは新規指定が下りない」と根拠をもって示せるかどうかで、提示される条件は変わります。

売却価格の算定根拠や倍率の考え方については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|企業価値評価と売却価格の決まり方

3. スキームの選択──手取りと「残る責任」が変わる

どの方法で譲渡するかによって、売り手が受け取る金額の性質も、譲渡後に残る責任も変わります。買い手から提案されたスキームをそのまま受け入れる前に、自分にとっての意味を理解しておいてください。

株式譲渡・事業譲渡・会社分割で売り手に何が起きるか

株式譲渡は、オーナーが保有する株式を買い手に売る方法です。法人格は変わらないため、指定も利用契約も労働契約も賃貸借契約もそのまま継続し、事業は1日も止まりません。代金は法人ではなくオーナー個人が直接受け取ります。放課後等デイサービスの売却で株式譲渡が主流なのは、この簡便さと手取りの良さが理由です。

一方、株式譲渡では法人が抱える債務がすべて買い手に移転します。だからこそ買い手はデューデリジェンスで過去の運営を徹底的に調べ、発見されたリスクを価格や契約条件に反映しようとします。売り手にとっては、過去の不備が価格交渉のカードとして使われることを意味します。

事業譲渡は、法人が保有する事業(事業所単位)を買い手に売る方法です。代金は法人が受け取るため、オーナー個人が手にするには役員退職金や配当、あるいは法人清算を経る必要があり、税負担の設計が別途必要になります。複数拠点のうち1拠点だけを譲渡したい場合や、法人自体は別の事業のために残したい場合に選ばれます。

会社分割は、対象事業を切り出して当該事業を包括的に別会社に承継させる方法です。手続はやや複雑ですが、利用児童との契約や労働契約が会社法に基づいて承継されるため、事業譲渡より現場への影響が小さく済みます。なお、労働契約の承継については、労働者への事前通知と異議申出の手続が法定されており、承継される事業に主として従事する労働者が承継対象から外れている場合、その労働者は異議を申し出て承継を求めることができます。

令和6年6月の事務連絡で事業譲渡のハードルは下がった

売り手にとって朗報となる制度変更があります。事業譲渡や会社分割の場合、買い手は自らの事業所として新規に指定を受ける必要があり、従来はこれが大きな障壁でした。書類を一から揃え直す負担と、指定が下りるまでの空白期間のリスクがあったためです。

この点について、令和6年6月21日付で厚生労働省・こども家庭庁から事務連絡「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」が発出されました。同事務連絡では、吸収合併・吸収分割・新設合併・新設分割・事業譲渡について、指定権者が「施設・事業所の職員に変更がない等、前後で事業所が実質的に継続して運営される」と認める場合には、次の取扱いを行うこととされています。(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」

  • 指定申請時に提出する書類は、旧法人の事業所が指定を受けた際の内容から変更があった部分のみで足りる。法人格以外に変更がなければ、登記事項証明書等の提出で差し支えない。
  • サービス等利用計画の変更を不要とする。
  • 会社法に基づき旧法人の権利義務を承継する場合(合併・会社分割)は、利用契約の再締結を不要とする。
  • 過去の実績に基づく基本報酬・加算・減算について、実績を通算する。

売り手にとっての意味は明確です。買い手が引き受けやすくなり、譲渡の選択肢が広がりました。特に実績の通算が認められることは重要で、勤続年数や過去実績を要件とする加算が譲渡によってリセットされないため、買い手が「買収直後に収益が落ちる」というリスクを織り込まずに済みます。

ただし、この簡素化は「職員に変更がない等、実質的に継続して運営されると指定権者が認める場合」に限られます。売り手としても、譲渡を機に職員が大量に離職する事態は、価格だけでなく手続の面でも不利に働くと理解しておいてください。

注意点
事業譲渡・会社分割はいずれも新規指定を要するため、総量規制を実施している自治体では、指定を受けられない可能性が残ります。手続が簡素化されたことと、指定が必ず下りることは別の話です。事業譲渡を前提に交渉を進めた後で指定が下りないと判明すれば、案件そのものが白紙に戻ります。案件の初期段階で、指定権者への事前照会を行っておくことが不可欠です。

スキーム比較(売り手視点)

売り手の立場から3つのスキームを整理すると次のようになります。

比較項目株式譲渡事業譲渡会社分割
代金の受取人オーナー個人(株主)法人オーナー個人(承継会社の株式を譲渡する場合)
課税株式譲渡益に申告分離課税(税率20.315%)法人に譲渡益課税+個人が受け取る際に再度課税適格分割なら分割時は課税されず、承継会社株式の譲渡益に申告分離課税
指定の扱いそのまま継続する買い手が新規に取得する承継会社が新規に取得する
利用児童との契約継続する再締結が必要再締結は不要とされている
職員労働契約がそのまま継続する個別同意による転籍が必要労働契約承継法に基づき承継される
売り手に残る債務債務は法人ごと移転するが、表明保証違反の補償責任は売り手個人に残る承継対象外の債務は法人に残る分割契約の定めによる。表明保証違反の補償責任は残る
個人保証金融機関との交渉により解除を目指す借入が法人に残る場合、保証も残り得る借入の承継の有無による
向いている場面法人ごと譲渡し、経営から退く1拠点のみ譲渡し、法人は残す特定事業を切り出しつつ現場への影響を抑える

事業譲渡を選んだ場合の指定・許認可の引き継ぎ実務については、以下の記事で手続きの流れまで解説しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスの事業譲渡|指定・許認可の引き継ぎ実務

4. 売却の進め方と、社内に伏せておくべき期間

実際のプロセスと所要期間、そして情報管理の考え方を押さえておきましょう。ここでの失敗は、価格ではなく事業そのものを毀損します。

相談から成約までの流れと所要期間

一般的な進行は次のとおりです。相談から成約まで、順調に進んで6か月から1年程度を見込んでおくとよいでしょう。

  • M&A支援機関への相談と秘密保持契約の締結
  • アドバイザリー契約(または仲介契約)の締結
  • 企業概要書の作成(財務資料、稼働状況、人員体制、加算の算定状況を整理)
  • 買い手候補の選定と打診(社名を伏せた匿名の資料から開始)
  • トップ面談(経営理念、譲渡後の運営方針、職員の処遇について直接すり合わせ)
  • 意向表明・基本合意(価格やスキームの大枠を合意し、独占交渉権を付与)
  • デューデリジェンス(買い手による財務・法務・労務・制度適合性の調査)
  • 最終契約の締結とクロージング(代金決済、株式や事業の引渡し)
  • クロージング後の行政手続と引継ぎ

買い手候補への打診は、まず社名を伏せた資料(ノンネームシート)から始まります。地域、サービス種別、定員、おおよその売上規模といった、事業所が特定されない範囲の情報のみを記載したものです。関心を示した候補と秘密保持契約を締結して初めて、詳細をまとめた企業概要書を開示します。この二段構えによって、情報が広く出回ることを防ぎます。

企業概要書の質は、価格と成約可能性の両方に影響します。決算書だけでなく、月別の実利用延べ日数契約児童の学年別内訳職員の資格と勤続年数算定している加算の一覧運営指導の履歴といった、この業界特有の情報を整理して提示できるかどうかが問われます。買い手が知りたい情報を先回りして開示できている事業所は、デューデリジェンスでの追加調査も軽くなり、交渉全体が短期間で終わります。

このうち、売り手が最も力を注ぐべきはトップ面談です。価格の交渉は代理人を通じて行えますが、譲渡後に自分と職員と子どもたちがどう扱われるかは、相手の経営者と直接話さなければ分かりません。運営方針、職員の処遇、支援内容の継続について、この場で具体的に確認しておいてください。

職員・保護者への開示タイミングの設計

最も慎重を要する論点です。原則は、最終契約を締結するまで職員には伏せておくことです。冷たく聞こえるかもしれませんが、これは職員を守るための判断でもあります。

理由は二つあります。第一に、M&Aは基本合意の後でも成立しないことがあります。デューデリジェンスの結果や条件交渉の決裂で破談になった場合、「売却されるらしい」という情報だけが残り、職員は将来に不安を抱えたまま働き続けることになります。第二に、情報が漏れれば、不安を感じた職員の離職と、保護者による他事業所への移行が同時に起こります。放課後等デイサービスでは、職員の離職は指定基準の充足に直結し、児童の離脱は収益に直結します。結果として、譲渡自体が成立しなくなります。

一方で、児発管や管理者など、譲渡後の運営に不可欠なキーパーソンについては、最終契約前に個別に伝えて意思を確認しておく必要がある場合があります。買い手がその人物の継続勤務をクロージングの前提条件とすることがあるためです。誰に、いつ、どう伝えるかは、アドバイザーと相談して個別に設計してください。

保護者への説明は、最終契約後、速やかに行います。実務上効果的なのは、新しいオーナー企業の担当者が前面に出るのではなく、日頃から信頼関係のある現場の管理者や児発管から伝える形です。「支援の内容と担当職員は変わらない」というメッセージを、見慣れた顔から伝えるほうが、はるかに不安を鎮めます。

注意点
職員に伏せている期間中も、買い手候補による現地見学や資料の準備は進みます。「取引先の見学」「システム会社の来訪」といった説明で現場を通すことになりますが、不自然な動きが続けば必ず察知されます。訪問の頻度と時間帯、対応する人員を絞り、社内で不用意な憶測が広がらないよう、支援機関と段取りを詰めておいてください。

買い手側がデューデリジェンスで何を確認するのかを知っておくと準備が進めやすくなります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
放課後等デイサービス事業のM&Aで買い手が押さえるべき留意点|指定の承継・報酬返還リスク・DDの実務を解説

5. 譲渡後、自分・職員・子どもたちはどうなるのか

ここからが、多くの経営者が最も知りたいにもかかわらず、情報がほとんど出回っていない領域です。グループインを検討する方にとっては、価格以上に重要な判断材料になります。

オーナー自身の処遇──引継期間・顧問契約・ロックアップ

「売却したら即座に引退できる」と考えている方は、認識を改める必要があります。放課後等デイサービスのM&Aでは、売り手オーナーに一定期間の残留を求めるのが一般的です。

理由は、この事業が属人的だからです。相談支援専門員や学校、医療機関との関係、保護者からの信頼、職員との関係性。これらはオーナー個人に紐づいていることが多く、引継ぎには時間がかかります。買い手としては、オーナーが即日いなくなると事業価値が毀損するため、残留を条件にします。

具体的な形態としては、代表取締役を退任したうえで顧問や相談役として6か月から2年程度関与する、あるいは管理者として現場に残る、といったパターンがあります。報酬額と勤務日数、業務内容、期間、そして期間満了後の扱いを、譲渡契約または別途の委任契約で明確に定めておいてください。「しばらく手伝ってほしい」という口約束のまま進めると、想定より長く拘束される、あるいは逆に早期に関係を打ち切られる、というトラブルになります。

あわせて、株式譲渡代金の一部を一定期間留保する、業績条件の達成に応じて追加で支払う(アーンアウト)といった建付けが提案されることもあります。これらは実質的に、オーナーの残留と協力を担保する仕組みです。受け取れる金額が変動する条件を含むため、内容を精査してください。

個人保証(経営者保証)は自動では外れない

これは、売り手にとって金銭的インパクトが極めて大きい論点です。

法人が金融機関から借入をしている場合、オーナーが連帯保証人になっていることが多いです。株式譲渡によって株主が交代しても、金融機関との保証契約は自動的には終了しません。保証を外すには、金融機関の同意を得て保証契約を解除し、買い手側の保証や別の担保に切り替える手続が必要です。

ここで問題が起きます。中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)でも、譲り渡し側の経営者保証を譲り受け側に移行させる想定であったにもかかわらず移行しない譲受側の存在が指摘されています。つまり、「保証は買い手が引き継ぐ」という前提で譲渡したのに、実際には金融機関が応じず、株式を手放した後も元オーナーが連帯保証人として残ってしまう、という事態が現実に発生しているということです。(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

なお、中小M&Aガイドラインは金融機関に対しても、中小M&Aに伴う経営者保証の解除等に関して「経営者保証に関するガイドライン」および「経営者保証に関するガイドラインの特則」に留意することを求めています。交渉の相手は買い手だけでなく金融機関でもあり、これらの指針を踏まえた解除の申入れが可能であると理解しておいてください。

経営から離れた会社の借入について保証責任だけを負い続けるのは、極めて不合理な状態です。対策は次の3点です。

  • 第一に、保証解除の交渉を成立前から始めること。金融機関への相談をクロージング後に回してはいけません。
  • 第二に、保証の解除または移行が完了していることを、クロージングの前提条件として譲渡契約に明記すること。
  • 第三に、それが実現しない場合の取扱い(譲渡代金の調整、買い手による求償権放棄や補償)をあらかじめ定めておくことです。

注意点
個人保証と併せて確認すべきなのが、法人の借入に対して自宅などの個人資産を担保提供している場合の抵当権です。保証契約の解除とは別の手続が必要になります。また、リース契約や賃貸借契約の連帯保証人になっているケースも見落とされがちです。個人として何にどう責任を負っているかを、譲渡の検討開始時点で棚卸ししておいてください。

職員の雇用と労働条件はどこまで守られるか

職員のことが気がかりで売却に踏み切れない、という声は非常に多く聞きます。結論から言えば、スキームによって法的な扱いが異なります。

株式譲渡の場合、雇用主である法人自体は変わらないため、労働契約はそのまま継続します。給与、役職、勤務地、就業規則、有給休暇の残日数まで、譲渡日をまたいで維持されます。職員から見れば、経営陣が交代しただけで、雇用関係に変化はありません。

事業譲渡の場合は異なります。労働契約は当然には承継されないため、職員一人ひとりの同意を得て、買い手の法人へ転籍してもらう必要があります。同意しない職員は元の法人に残ることになり、事実上、雇用の受け皿を売り手が用意しなければなりません。

会社分割の場合は、承継される事業に主として従事する労働者の労働契約は、労働契約承継法に基づいて承継されます。

ただし、法的に維持されることと、実際に働きやすさが維持されることは別問題です。買い手が自社グループの就業規則や給与テーブルへ統合しようとする段階で、実質的な変更が生じます。労働条件の不利益変更には制約がありますが、評価制度や勤務シフトの運用、記録様式の変更など、法的な不利益変更に当たらない範囲でも現場の負担は変わります。

だからこそ、トップ面談で確認すべきです。譲渡後1年間は労働条件を変更しない、既存職員の雇用を維持する、といった内容を譲渡契約の誓約事項として盛り込むことも可能です。法的な強制力には限界がありますが、明文化しておくことで買い手の行動を一定程度規律できますし、何より職員に説明する際の材料になります。

支援方針と子どもたちへの影響をどう担保するか

長年培ってきた療育の方針や、事業所ごとの支援の色があるはずです。これが譲渡後にどうなるかは、契約だけでは完全に守り切れない領域です。だからこそ、相手選びの段階が決定的に重要になります。

確認すべきは、買い手が放課後等デイサービスをどう位置づけているかです。既存事業とのシナジーを重視する同業なのか、収益性を重視する投資的な買い手なのか。同業であれば支援の質への理解は期待できますが、自社の標準プログラムへ統合される可能性があります。異業種からの参入であれば、現場の裁量が残りやすい反面、制度対応のノウハウが不足していることがあります。

契約面では、支援プログラムの継続、事業所名の継続使用、職員配置の維持などを誓約事項として定めることができます。ただし、これらは多くの場合、努力義務にとどまる形での合意になります。契約書の条項として書けることには限界があると理解したうえで、最終的には「この経営者に託せるか」というトップ面談での判断に重心を置くべきです。

ポイント
最も高い価格を提示した候補者が、最も良い相手とは限りません。複数の候補から選べる状況を作ったうえで、価格・オーナーの処遇・職員の処遇・支援方針の4軸で比較することをおすすめします。

論点株式譲渡での原則確認・交渉しておくべきこと
オーナーの立場代表退任、顧問等として一定期間残留期間・報酬・業務内容・満了後の扱いを書面化
個人保証自動では解除されない解除または移行の完了をクロージング前提条件に
職員の雇用労働契約はそのまま継続雇用維持と労働条件据置きの期間を誓約事項に
就業規則・給与当面は維持、いずれ統合の議論に統合の時期と方法、事前協議の要否
利用児童との契約継続する支援内容の継続、担当職員の維持
支援プログラム買い手の方針次第継続を誓約事項に。ただし努力義務にとどまる点を理解する
事業所名買い手の方針次第継続使用の可否を確認

譲渡後に経営者自身がどのような立場になるのかについては、以下の記事で選択肢ごとに整理していますので参考になさってください。
会社売却後、社長はどうなる?残留・引退の選択肢と収入・退職金・保証まで完全解説

6. 譲渡後も売り手が負い続けるリスク

ここは、売却を検討する経営者が最も見落としやすい領域です。「代金を受け取ったら終わり」ではありません。譲渡契約の設計次第で、譲渡後何年にもわたって責任を負い続けることになります。

表明保証と補償責任──代金を受け取った後の請求

譲渡契約には、通常「表明保証」という条項が入ります。売り手が買い手に対し、一定の事実が真実かつ正確であることを保証するもので、たとえば「指定が有効に存続していること」「請求が法令に適合して行われていること」「未払残業代が存在しないこと」といった項目が並びます。

この表明保証に違反があった場合、売り手は買い手が被った損害を補償する義務を負います。つまり、譲渡代金を受け取った後に、その一部(場合によっては全額を超える額)を返さなければならない可能性があるということです。

買い手側が示してくる契約書の初案では、補償の範囲が広く、上限も期間も売り手に不利に設定されていることが少なくありません。売り手として交渉すべきは次の3点です。

  • 補償の上限額を譲渡価額の一定割合に限定すること。
  • 表明保証の有効期間をクロージング後1年から2年程度に区切ること。
  • 自分が実際に把握していない事項については「売り手の知る限り」という限定(ナレッジ・クォリファイアー)を付すこと。

過去の請求に不備があれば売り手に跳ね返る

放課後等デイサービスにおいて、表明保証で最も争点になるのが障害児通所給付費の請求適正性です。

事業所が基準を満たしているか、給付費の請求が適切に行われているかは、運営指導や監査で確認されます。ここで不備が発覚すれば、行政は過誤調整や返還請求により、過去にさかのぼって支払済みの報酬を回収します。人員配置基準を満たしていない期間があれば、その期間の全算定分が是正対象になり得ますし、加算の算定要件を満たしていなければ同様です。

問題は、この返還請求がクロージング後に届くケースが少なくないことです。株式譲渡では返還債務は法人に残るため、まず買い手が負担します。しかし、表明保証で「請求は適法に行われている」と保証していれば、買い手は売り手に対して補償を求めます。結果として、経済的な負担は売り手に戻ってきます。

売り手として取るべき対応は明快です。デューデリジェンスで指摘される前に、自ら点検して是正しておくことです。個別支援計画の作成・同意取得・交付・モニタリングの記録、勤務形態一覧表と実際のシフトの整合、加算の算定要件の充足状況。これらを事前に確認し、問題があれば正直に開示したうえで、価格に織り込んでもらう。この進め方であれば、表明保証の対象から除外するという交渉も可能になります。隠したまま譲渡して後で発覚するのが、最も損失の大きい選択です。

注意点
「知らなかったから責任はない」という主張は、表明保証違反の場面では通用しないことがあります。表明保証は過失の有無を問わない無過失責任として設計されるのが通例だからです。だからこそ、事前の自己点検と、限定付き表明保証(知る限り)の交渉が重要になります。契約書の文言を、内容を理解しないまま受け入れてはいけません。

競業避止義務の範囲と期間

譲渡後、同じ地域で再び放課後等デイサービスを始めることは、多くの場合できなくなります。

事業譲渡の場合、会社法第21条第1項により、譲渡会社は特約がない限り、同一の市町村および隣接する市町村の区域内において、20年間は同一の事業を行ってはならないとされています(東京都の特別区および指定都市においては、市町村ではなく区を単位として判断されます)。これは特約がなくても法律上当然に生じる効果です。

株式譲渡の場合、法定の競業避止義務はありませんが、譲渡契約のなかで売り手個人に対する競業避止条項が定められるのが通常です。期間は2年から5年程度、範囲は同一都道府県内や事業所から一定距離内といった形で設定されます。あわせて、職員を引き抜かないという勧誘禁止条項が入ることもあります。

確認すべきは、この条項が自分の今後の計画と両立するかです。放課後等デイサービスは手放すが児童発達支援や就労支援は続けたい、数年後に別の地域で再開したい、といった希望があるなら、対象となる事業の範囲、地域、期間を具体的に交渉してください。「障害福祉サービス全般」「全国」「無期限」といった広範な条項を安易に受け入れると、将来の選択肢を失います。

表明保証や競業避止義務など、譲渡後も残る法務上の論点については以下の記事で詳しく取り上げています。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|法務上の留意点

7. 高く・安全に売るための「磨き上げ」

価格を上げ、かつ譲渡後のリスクを減らす。この二つは、実は同じ作業によって同時に達成できます。買い手が減額の根拠にする項目と、表明保証で問題になる項目が、ほぼ一致しているからです。

最優先は個別支援計画と勤務形態一覧表の整備

着手すべき順序は明確です。まず個別支援計画です。契約中の全児童について計画が存在するか、保護者の同意署名と交付日が記録されているか、所定の頻度でモニタリングが実施され記録が残っているか、5領域を含む総合的な支援の内容が反映されているか。令和6年度改定で必要とされた支援の提供時間(計画時間)と延長支援時間の記載、および保護者への説明と同意も確認対象です。あわせて、支援プログラムを作成し公表しているかも点検してください。

次に人員です。行政に届け出た勤務形態一覧表と、実際のシフト表・タイムカード・賃金台帳が整合しているかを突き合わせます。届出上は常勤とされている職員の実労働時間が要件に届いていない、資格証の確認ができていない、といったずれが見つかることがあります。過去に児発管の欠如期間があったにもかかわらず減算処理をしていなければ、その期間の請求全体が是正対象になり得ます。

買い手のデューデリジェンスでは、これらの書類を請求データと突き合わせる検証が行われます。先に自分で行っておけば、指摘される前に是正でき、価格の減額要因を消せます。

加算は「取り漏れ」と「過大算定」の両面を点検する

加算については、二方向の点検が必要です。

ひとつは取り漏れです。要件を満たしているのに届け出ていない、あるいは算定していない加算があれば、それは今すぐ収益を改善できる余地です。利益が増えれば企業価値の算定にも直接反映されます。令和6年度改定で児童指導員等加配加算が見直され、専門職による支援の評価は専門的支援加算・専門的支援実施加算によって行う体系に再編されています。改定後の体系に合わせて届出内容が更新されているかを確認してください。

もうひとつは過大算定です。要件を満たしていないのに算定している加算があれば、それは返還リスクであり、表明保証違反の火種です。送迎加算、個別サポート加算、延長支援加算について、算定根拠となる記録が実際に残っているかを確認します。

一見すると相反する作業に見えますが、どちらも「届出内容と実態を一致させる」という同じ点検の裏表です。

オーナー依存を解消し、決算書を正常化する

価格に最も効くのがオーナー依存の解消です。オーナーが児発管や管理者を兼務している事業所は、オーナーの退任と同時に指定基準を満たせなくなるため、買い手にとって重いリスクになります。譲渡を1年以上先に見据えられるなら、後任となる児発管の採用または育成に着手することも考えられます。児発管の要件を満たし得る職員が複数いる状態を作れれば、それだけで評価は変わります。

あわせて、決算書の正常化を進めます。役員報酬を実態に近い水準に整理する、私的な支出を経費から外す、オーナー所有物件の賃料を相場水準に見直す、家族従業員の給与を労務の実態に合わせる。これらは正常収益力の算定を透明にし、買い手との認識のずれを減らします。

ポイント
磨き上げのチェックリストとして、次の項目を順に確認してください。売却を決断していない段階でも、これらは通常の運営改善としてそのまま価値があります。

  • 契約中の全児童について個別支援計画が作成され、同意取得と交付が記録されているか
  • モニタリングが所定の頻度で実施され、記録として残っているか
  • 支援プログラムを作成し、公表しているか
  • 勤務形態一覧表と実際のシフト・賃金台帳が整合しているか
  • 職員の資格証を全員分保管しているか
  • 算定している全加算について、要件を満たす記録が残っているか
  • 要件を満たしているのに届け出ていない加算がないか
  • 過去の運営指導での指摘事項が是正され、定着しているか
  • 児発管の後任候補が育っているか、オーナーが兼務していないか
  • 役員報酬・私的経費・関連当事者取引が整理されているか
  • 賃貸借契約、リース契約、補助金の交付決定通知が揃っているか

磨き上げの土台となる財務資料の整え方や正常収益力の見方は、以下の記事で具体的に解説しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|財務・会計上の留意点

8. 売却にかかる税金と手取り

最後に、実際に手元に残る金額の話です。譲渡価額そのものより、手取りで比較することが重要です。

株式譲渡益への課税と役員退職金の組み合わせ

個人が保有する非上場株式を譲渡した場合、譲渡益は申告分離課税の対象となり、税率は合計20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。譲渡益は、譲渡価額から取得費と譲渡費用(仲介手数料など)を差し引いて計算します。給与所得など他の所得と合算されない分離課税であるため、税負担は比較的読みやすい構造です。

実務でよく用いられるのが、株式譲渡代金と役員退職金を組み合わせる設計です。譲渡に際してオーナーが代表を退任する場合、法人から役員退職金を支給し、その分だけ株式の譲渡価額を調整するという方法です。退職所得は、退職所得控除を差し引いた残額の2分の1に対して課税されるため(役員等としての勤続年数が5年以下の場合はこの2分の1の適用がないなどの例外があります)、勤続年数が長いオーナーであれば、株式譲渡益として受け取るより手取りが増えるケースがあります。

ただし、不相当に高額な役員退職金は法人の損金として認められず、買い手側の税務リスクになるため、支給額には合理的な水準があります。どの配分が最適かは、勤続年数、譲渡価額、法人の財務状況によって変わります。必ず税理士を交えて試算してください。

事業譲渡は法人課税と消費税に注意

事業譲渡では、代金を受け取るのは法人です。法人は譲渡益に対して法人税等(実効税率でおおむね30%前後)を負担します。その後、オーナー個人が資金を手にするには、役員退職金、配当、あるいは法人清算による残余財産の分配といった方法を経る必要があり、そこでさらに課税が生じます。この構造上、株式譲渡と比べて手取りが少なくなるのが一般的です。

あわせて、消費税にも注意が必要です。事業譲渡は資産の譲渡に該当するため、のれん(営業権)や什器備品、車両といった課税資産の譲渡対価には消費税が課されます。売り手は買い手から消費税を預かり、納付する立場になります。譲渡価額の交渉において、税込みか税抜きかを明確にしておかないと、後から想定外の負担が生じます。

注意点
税務の設計は、譲渡価額の交渉と切り離せません。「価格は下げるが役員退職金で調整する」「事業譲渡ではなく株式譲渡にする」といった判断で、手取りは数百万円から数千万円単位で変わり得ます。買い手から提示された条件を検討する際は、必ず税引後の手取りベースで比較してください。M&Aの支援機関を選ぶ際に、税務の専門家が体制に含まれているかを確認すべき理由もここにあります。

スキーム別の課税関係や役員退職金の活用については、以下の記事でさらに詳しく整理しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|税務上の留意点

10. まとめ

放課後等デイサービスの売却を検討するにあたって、押さえておくべき要点を整理します。

  • 価格は「時価純資産+正常収益力の2年から5年分」が目安。ただし、処遇改善加算は利益に足し戻せない。児発管の複数体制、記録の整備、運営指導での指摘の有無が評価を大きく左右する。
  • 総量規制エリアの事業所は、買い手が新規出店できないため希少性が高い。自社の所在地が対象かを確認し、交渉材料にする。
  • スキームによって手取りと残る責任が変わる。株式譲渡は手続が簡便で税負担も読みやすい。事業譲渡・会社分割は新規指定が必要だが、令和6年6月21日付事務連絡により手続の簡素化と報酬上の実績通算が認められ得る。
  • 職員への開示は原則として最終契約後。破談時のリスクと離職・離脱の連鎖を避けるため、情報管理は徹底する。
  • 譲渡後もオーナーには一定期間の残留を求められるのが通常。期間・報酬・業務内容を書面で明確にしておく。
  • 個人保証は自動では外れない。解除または移行の完了をクロージングの前提条件として契約に明記する。
  • 表明保証違反による補償責任は、代金受領後に発生し得る。事前に自己点検して開示し、補償の上限・期間・「知る限り」の限定を交渉する。
  • 競業避止義務の範囲・地域・期間が、今後の計画と両立するかを確認する。
  • 支援機関は、手数料体系、仲介かFAか、専任条項とテール条項、そして業界制度への理解度で選ぶ。

放課後等デイサービスの売却は、単なる会社や事業の売買ではありません。行政の指定を引き継ぎ、職員の生活を預け、通っている子どもたちと保護者の日常を託す手続です。だからこそ、価格だけで判断せず、譲渡後に何が起こるかまで見通したうえで相手と条件を選ぶ必要があります。

弁護士と国税出身の税理士が、企業価値の試算から相手先の選定、契約交渉、譲渡後の手続まで一貫して関与します。契約条項の設計と税務の設計を同じチームで行えることが、売り手の手取りと、譲渡後に負うリスクの両方に直結します。「まだ売ると決めたわけではないが、選択肢として知っておきたい」という段階からのご相談も歓迎しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。

執筆者

弁護士 佐藤聖喜

京都大学経済学部在学中、旧司法試験合格。最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。その後、京都大学経営管理大学院修了(MBA)。 長島大野常松法律事務所を経て独立し、千代田中央法律事務所を設立。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動。上場企業の組織再編、IPO法務DD、スタートアップの資本政策支援、再生型M&Aなど、法務・戦略両面からの総合支援に実績を持つ。

税理士登録申請中 横山圭介

東京都立大学(旧首都大学東京)数理科学専攻卒業後、国家公務員として札幌国税局に入庁。札幌国税局資産課税課、札幌東税務署資産課税部門等を経て、国税庁企画課へ出向。 国税庁・国税局・税務署において、主に資産税事務に従事し、相続・譲渡・贈与など資産課税の実務を第一線で担う。官公庁・金融機関等との折衝・情報連携の実務経験も有する。