児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|企業価値評価と売却価格の決まり方

児童発達支援・放デイの企業価値評価

「うちの事業所は、いくらで売れるのか」。児童発達支援・放課後等デイサービスの譲渡を考え始めた経営者の方から、最初にいただくご質問です。

ところが、「時価純資産+営業利益の2〜5年分」「EBITDAの3〜5倍」といった算式が並ぶばかりで、なぜその式なのか、自分の事業所は3倍なのか5倍なのか、そこまでは書かれていません。

本記事では、児童発達支援・放課後等デイサービスのM&Aにおける企業価値評価(バリュエーション)の考え方を、①企業価値評価とは何か、②実際に使われる算定方法、③年商8,000万円のケースでの試算、④倍率を分ける業界特有の評価ポイント、の順に整理します。M&Aが初めての方でも、読み終えたときに自社のおおよその水準と、価格を上げるために何をすべきかが見える構成にしています。

目次

1. 企業価値評価(バリュエーション)とは

企業価値評価(バリュエーション)とは

企業価値評価(バリュエーション)とは、M&Aの対象となる会社や事業がいくらの価値を持つのかを、一定の理論に基づいて算定する作業をいいます。上場企業には株価という「市場が出した答え」がありますが、児童発達支援・放課後等デイサービスを運営する事業者のほとんどは非上場で、株式に市場価格が存在しません。そこで、純資産・収益力・類似取引といった手がかりから価値を計算します。

ここで押さえておきたいのは、算定された評価額は「交渉のスタートライン」であって、確定した価格ではないという点です。最終的な売却価格は、買い手が見込むシナジー、競合する買い手の数、デューデリジェンス(買収監査)で見つかった論点によって上下します。評価は答えではなく、売り手と買い手が同じ土俵で価格を話すための共通言語だと捉えてください。

「事業価値」「企業価値」「株式価値」の違い

初めての方がつまずきやすいのが、価値の3つの層です。用語が似ているため混同されがちですが、指しているものは異なります。

事業価値:事業そのものが生み出す価値。EBITDAに倍率を掛けるなどして算定する
企業価値:事業価値に、余剰現金や遊休不動産などの非事業用資産を加えたもの
株式価値:企業価値から有利子負債を差し引いたもの。株式譲渡で株主が受け取る金額、つまり売却価格にあたる

式にまとめると、次の関係になります。

株式価値 = 事業価値 + 現預金などの非事業用資産 - 有利子負債

たとえば事業価値が5,000万円でも、借入金が2,000万円あり現預金が500万円しかなければ、株式価値は3,500万円です。逆に無借金で現預金が厚い法人は、その分だけ売却価格が上振れします。「営業利益の何年分」という話だけを見て価格を想像すると、この調整で見込みが崩れます。

ポイント
自社の水準を試算するときは、まず①直近の営業利益、②減価償却費、③借入残高、④現預金残高、⑤時価に引き直した純資産、の5つを手元に並べてください。この5つがそろえば、後述する2つの算式でおおよそのレンジは自分で出せます。

2. 企業価値評価の3つのアプローチ|児発・放デイで実際に使うのはどれか

コスト・マーケット・インカムの3分類

企業価値評価の手法は、何を手がかりにするかによって3つに分類されます。まずは全体像を押さえてください。

アプローチ考え方と代表的な手法児発・放デイでの使われ方
コストアプローチ純資産を手がかりにする。簿価純資産法、時価純資産法土地建物を自己所有する法人の下限値として。単独では収益力が反映されない
マーケットアプローチ類似する会社や取引と比較する。類似会社比準法(マルチプル法)、類似取引比準法EBITDA倍率として実務の中心。上場グループの買い手が最も使う
インカムアプローチ将来の収益・キャッシュフローを現在価値に割り引く。DCF法、収益還元法複数拠点・新規開設を伴う案件で補助的に使用

実務の主役は「年買法」と「EBITDAマルチプル」

中小規模の児童発達支援・放課後等デイサービスのM&Aでは、次の2つの算式が併用されます。

①年買法(時価純資産+営業権法):時価純資産 + 正常営業利益 × 2〜5年分 = 株式価値

②EBITDAマルチプル法:EBITDA(営業利益+減価償却費)× 3〜5倍 = 事業価値。そこから有利子負債を引き、現預金を足して株式価値

①はコストアプローチとインカムアプローチの折衷で、純資産という動かしにくい数字を出発点にするため、売り手にとって納得感が得られやすいのが特徴です。純資産のなかに現預金や借入金がすでに反映されているため、追加の調整をせずに株式価値が出るのも扱いやすい点です。

②は内装工事や送迎車両の減価償却費を足し戻し、事業が生み出す現金創出力そのもので比較する方法です。買い手の「何年で投資を回収できるか」という感覚に直結するため、上場グループの買い手はほぼこの方法で初期提示を組み立てます。実務では両方を計算し、重なるゾーンを目安レンジとして提示するのが一般的です。

なお、営業利益に掛ける年数(倍率)は固定値ではありません。同じ年商でも、後述する稼働率や人員体制によって2年分にとどまることもあれば、5年分を超えることもあります。

DCF法が中小の児発・放デイで使われにくい理由

将来キャッシュフローを割引率で現在価値に直すDCF法は、理論的には最も精緻な手法です。しかし、この分野では、前提となる事業計画の信頼性を確保しにくいという事情があります。報酬は原則3年ごとに改定され、令和6年度改定では基本報酬が個別支援計画に定めた支援時間に応じた3区分に再編されました(放課後等デイサービスは3時間超5時間以下の区分が学校休業日のみ算定可)。さらに令和8年度には臨時応急的な期中改定が行われ、次は令和9年度改定が控えています。

5年先の単価を前提に精密な計算をしても、改定ひとつで前提が崩れます。実務では、直近実績を基礎とする年買法・マルチプル法が選ばれ、DCF法は成長投資を織り込む必要がある大型案件で補助的に使われるにとどまります。

注意点
事業計画を提出する際は、報酬改定の影響を織り込んでいない強気の数値を出さないでください。買い手は必ず改定リスクを検証します。前提の甘い計画は、その計画自体が信用されなくなるだけでなく、経営管理能力への評価も下げます。改定の影響を保守的に見た計画のほうが、結果的に高い評価につながります。

DCF法が使いにくい事業で用いられる再構築コスト法の考え方は、以下の記事で計算例を交えて解説しています。
再構築コスト法(再調達原価法)とは|M&Aでの計算方法と使われる場面を実例で解説

企業価値評価の3つのアプローチと各手法の計算方法については、以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
M&Aバリュエーション(企業価値評価)とは?3つのアプローチと主要手法を徹底解説

3. 【試算例】年商8,000万円・2拠点のケースで売却価格を計算する

STEP1 正常収益力(正常営業利益・EBITDA)を出す

前提は次のとおりです。2拠点(児童発達支援・放課後等デイサービスの多機能型)、年商8,000万円、営業利益700万円、減価償却費150万円、オーナーの役員報酬のうち相場を超える部分が300万円、現預金1,500万円、借入金1,000万円、時価純資産1,200万円。

評価の第一歩は、決算書の営業利益をそのまま使わず、M&A後も継続する収益力に引き直すことです。これを正常収益力といいます。オーナー個人の車両費や保険料、実態のない親族給与、相場を超える役員報酬は足し戻します。反対に、オーナーが無給で担っていた管理者業務を承継後に人を雇って賄うのであれば、その人件費はマイナス調整します。

本例では、役員報酬の過大部分300万円を足し戻し、正常営業利益は1,000万円。これに減価償却費150万円を加えたEBITDAは1,150万円となります。

STEP2 倍率を掛けて事業価値を出す

EBITDA1,150万円に3〜5倍を掛けると、事業価値は3,450万円〜5,750万円です。この段階ではまだ借入金と現預金の調整が済んでいないため、売却価格そのものではありません(調整はSTEP3で行います)。

評価倍率事業価値株式価値(=売却価格の目安)
EBITDA × 3倍3,450万円3,950万円
EBITDA × 4倍4,600万円5,100万円
EBITDA × 5倍5,750万円6,250万円

検算として年買法でも計算してみます。時価純資産1,200万円+正常営業利益1,000万円×2〜5年分=3,200万円〜6,200万円。2つの手法がほぼ同じレンジに収れんしました。実務では、このように複数の手法で計算して重なるゾーンを探します。

STEP3 純有利子負債を調整して株式価値にする

本例は、現預金1,500万円に対し借入金1,000万円ですから、差引500万円のネットキャッシュ(余剰現金)を持っています。事業価値にこの500万円を加えたものが株式価値です。EBITDA4倍なら5,100万円が売却価格の目安となります。

ただし、ここからデューデリジェンスでの指摘事項が控除されるのが通常です。未払残業代、社会保険の未加入期間、加算要件を満たしていない期間の報酬返還リスクなどは、金額が見積もれれば価格から差し引かれ、見積もれなければ表明保証や補償条項で手当てされます。

注意点
役員退職金を支給してから株式を譲渡する場合、支給額の分だけ純資産と現預金が減り、株式価値は下がります。手取り総額では有利になるケースもありますが、税務上の適正額を超えると損金算入が否認されるおそれがあるため、必ず税理士と設計してください。また、代表者の連帯保証の解除時期は、クロージングまでに金融機関と調整しておく必要があります。

試算の前提となる正常収益力の補正や事業所別損益の整理については、以下の記事で詳しく解説しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|財務・会計上の留意点

4. 児発・放デイ特有の5つの評価ポイント

買い手が価格に反映させる5つの要素

同じ年商・同じ利益でも、評価倍率には差がつきます。買い手が値付けの際に見ているのは、突き詰めれば「買った後もこの収益が続くか」の一点です。継続性への不安を消す要素は価格を押し上げ、不安を増やす要素は価格を下げます。

評価ポイント買い手が見るところ価格への効き方
①稼働率(定員に対する利用率)契約児童数、実利用日数、キャンセル率、平日と学校休業日の差最重要。収益の源泉。定員に対する利用が安定していれば倍率は上振れ
②児発管・有資格者の定着児童発達支援管理責任者・管理者・児童指導員の在籍年数と残留意思最重要。児発管が欠ければ減算となり、指定の維持にも影響する
③加算の構成と継続性専門的支援体制加算などの取得状況、算定根拠となる人員が承継後も残るか属人性の高い加算は割り引かれる。体制で取れている加算は評価される
④運営指導・返還リスク過去の指摘事項、個別支援計画の作成状況、支援プログラムの公表マイナス要因。デューデリジェンスで発覚すれば減額または補償条項の対象
⑤代表依存・物件・送迎代表の管理者兼務、代表個人所有物件の賃貸、家族による送迎引き継ぎコストとして減額要因。解消できていれば評価は上がる

④の「運営指導」は、令和6年4月から従来の実地指導を改称したものです。名称が変わっただけで、確認される内容や、指摘を受けた場合の報酬返還リスクに変わりはありません。

特に効くのは「稼働率」と「児発管」の2つ

5つのなかでも、価格を最も大きく動かすのは稼働率と児童発達支援管理責任者の定着です。

定員10名の事業所で、1日あたりの平均利用児童数が7名から9.5名に増えたとします。差は1日2.5名。1人1日あたりの報酬を6,000円、年間稼働を250日と置けば、年間375万円の増収です。人員体制が変わらなければ増収分の多くはそのまま利益に残るため、EBITDA4倍で評価される案件なら、価格にして1,500万円前後の差になります。稼働率が「最重要」といわれるのは、この効き方の大きさによるものです。

児発管については、承継後の残留可否が交渉のヤマ場になります。買い手は「代表が抜けても運営が回るか」を確認し、回らないと判断すれば、価格を下げるか、売り手に一定期間の引き継ぎ(顧問就任やロックアップ)を求めます。逆に、代表が現場を離れても回る体制ができている事業所は、それだけで同規模の競合案件より高く評価されます。

ポイント
譲渡を検討し始めた段階で、児発管・管理者に「体制が変わっても働き続ける意思があるか」を直接確認するのは現実的ではありません。だからこそ、①児発管の要件を満たせる職員を計画的に育成しておく(基礎研修・実践研修の受講計画を含む)、②業務手順を文書化して属人性を下げる、③代表の担当業務を段階的に他の職員へ移す、といった打ち手を先に進めておくことが、そのまま価格対策になります。

児発管の後任確保や稼働率といった評価ポイントを売却前にどう整えるかは、以下の記事でも詳しく解説しています。
児童発達支援事業の売却において、オーナーが売却前に確認すべきことと株式価値の決まり方

5. 【要注意】令和8年6月の「新規指定事業所の報酬引き下げ」と評価への影響

新規指定は放デイ▲1.8%・児発▲1.2%

令和8年度の臨時応急的な見直しにより、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所には、令和9年度報酬改定までの間、引き下げられた基本報酬が適用されることになりました。放課後等デイサービスは所定単位数の1000分の982(約1.8%減)、児童発達支援は1000分の988(約1.2%減)です。既存の事業所は従前どおりの単価が適用されます。

なお、主として重症心身障害児を通わせる事業所の基本報酬や医療的ケア区分に係る基本報酬、離島・中山間地域の事業所などには配慮措置が設けられ、従前の単価が適用されます。

1〜2%と聞くと小さく思えるかもしれませんが、価格への影響は無視できません。年商6,000万円の放課後等デイサービスで基本報酬が売上の8割を占めるとすると、年間の減収はおよそ86万円。EBITDA4倍で評価される案件なら、約350万円の価格差に相当します。

M&Aによる承継は「実質的に継続」なら既存事業所と同じ扱い

ここが実務上の分かれ目です。障害児通所支援の指定は、事業所ごとに、その事業を運営する法人に対して行われます。したがって、事業譲渡や会社分割で運営法人が変わる場合、譲受法人はあらためて指定を受けなければなりません。形式だけを見れば「新規指定」です。

もっとも、国の資料では、合併・分割・事業譲渡に伴う指定について、その前後で事業所が実質的に継続して運営されると認められる場合には既存事業所と同様に扱う旨が示されています。職員も運営体制もそのまま引き継ぐ通常のM&Aであれば、引き下げ後の単価が当然に適用されるわけではありません。

指定手続そのものについても、令和6年6月21日付の国の事務連絡「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」により、実質的に継続して運営される場合の提出書類の簡素化などが示されています。

注意点
最終的な判断は指定権者である都道府県・政令市・中核市が行い、運用は自治体ごとに異なります。譲渡の検討段階で所管自治体に事前相談し、①既存事業所としての取扱いが受けられるか、②簡素化の対象となるか、③指定日と廃止日をどう接続させるかを確認してください。ここを詰めずに価格交渉を進めると、後から買い手に減額の材料を与えることになります。

価格交渉での実務対応と、スキーム選択への影響

買い手が慎重な場合、この論点を根拠に価格を下げてくることがあります。売り手側の対応は3つです。第一に、譲渡前に指定権者へ事前相談し、実質的な継続と認められる見込みを確認しておくこと。第二に、基本合意の段階で想定される取扱いを前提条件として文書化しておくこと。第三に、スキームの選択肢として株式譲渡を検討することです。

法人ごと譲渡する株式譲渡であれば、事業所の指定はそもそも動きません。指定の取り直しも、加算の届出のやり直しも、利用契約や雇用契約の再締結も不要です(役員変更などに伴う変更届は必要です)。したがって、当該事業以外の資産や簿外債務を抱えていない法人であれば、株式譲渡を選べる状態を整えておくこと自体が、価格を守る打ち手になります。

新規指定に伴う報酬上の取扱いや承継時の実績通算について、買い手側の実務は以下の記事で解説しています。
放課後等デイサービス事業のM&Aで買い手が押さえるべき留意点|指定の承継・報酬返還リスク・DDの実務を解説

6. 「売却価格」と「手取り」は別物|評価を上げるために今からできること

株式譲渡と事業譲渡で手取りは変わる

提示された価格がそのまま手元に残るわけではありません。株式譲渡の場合、個人株主が得る譲渡所得には20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の申告分離課税が適用されます。売却価格5,000万円、取得費300万円であれば、譲渡益4,700万円に対する税額は約955万円、手取りは約4,045万円です(別途、仲介手数料等が発生します)。

一方、事業譲渡では譲渡益が法人に帰属し、法人税等の課税対象となります。その資金を経営者個人に移すには、配当や役員退職金といった二段階目の検討が必要です。表面上の価格は事業譲渡のほうが高く見えても、手取りベースで逆転することは珍しくありません。価格の比較は、必ず税引後で行ってください。

注意点
複数拠点をまとめて譲渡し、譲渡益が数億円規模になる場合は、いわゆるミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)の検討も必要です。令和9年分以後は基準となる金額が引き下げられ、他に所得がなく分離課税のみのケースでも、譲渡益がおよそ3億3,000万円を超えると追加の負担が生じ得ます。該当しそうな規模であれば、譲渡年度の設計を含めて早めに税理士へご相談ください。

評価を上げるために、今から着手できること

企業価値評価は「今の実力」を映す鏡です。裏を返せば、譲渡の半年から1年前に手を打てば、評価は変えられます。

  • 稼働率を底上げする。契約児童数と実利用日数の改善は、そのまま正常収益力の改善につながる
  • 節税目的の過度な利益圧縮をやめる。役員報酬の調整分は説明で戻せるが、実態のない経費は買い手の不信を招く
  • 児発管の要件を満たせる職員を育て、代表個人に集中している業務を分散させる
  • 個別支援計画、支援プログラムの公表、BCP、虐待防止・身体拘束に関する記録を整える。令和6年度改定以降、体制の不備はそのまま減算に直結する
  • 賃貸借契約、車両、リース、雇用契約の名義と条件を棚卸しし、代表個人名義のものを洗い出す
  • 直近3期分の決算書と月次試算表、利用実績・稼働率の推移をいつでも出せる状態にする

評価を高めるための磨き上げや譲渡後の処遇の設計については、以下の記事でも具体的に整理しています。
放課後等デイサービスの売却における株式価値の決まり方、進め方等の実務上の留意点

スキームごとの課税の違いと税引後の手取りを比べる考え方は、以下の記事で詳しく解説しています。
児童発達支援・放課後等デイサービスのM&A|税務上の留意点

7. まとめ

児童発達支援・放課後等デイサービスのM&Aにおける企業価値評価のポイントを整理します。

  • 売却価格は「正常収益力 × 倍率 ± 純資産の調整」で決まる。決算書の営業利益をそのまま使わない。
  • 実務では年買法(時価純資産+営業利益2〜5年分)とEBITDAマルチプル(3〜5倍)を併用し、重なるレンジを目安にする。
  • 事業価値と株式価値は別物。借入金を引き、現預金を足してはじめて売却価格の目安になる。
  • 倍率を分けるのは稼働率と児発管・有資格者の定着。売上規模そのものより継続性が評価される。
  • 令和8年6月以降の新規指定には基本報酬の引き下げが適用されるが、M&Aによる承継は実質的な継続が認められれば既存事業所と同じ扱いとなる。所管自治体への事前相談が価格を守る。
  • 価格の比較は税引後の手取りで行う。株式譲渡と事業譲渡では課税の構造が異なる。

まずは、直近の営業利益・減価償却費・借入残高・現預金・時価純資産の5つを並べ、本記事の2つの算式で自社のレンジを出してみてください。障害福祉分野のM&Aに精通したアドバイザーが、弁護士・税理士とともに、評価の根拠と手取りまで含めた形でご支援いたします。

執筆者

横山圭介

東京都立大学(旧首都大学東京)数理科学専攻卒業後、国家公務員として札幌国税局に入庁。札幌国税局資産課税課、札幌東税務署資産課税部門等を経て、国税庁企画課へ出向。 国税庁・国税局・税務署において、主に資産税事務に従事し、相続・譲渡・贈与など資産課税の実務を第一線で担う。官公庁・金融機関等との折衝・情報連携の実務経験も有する。

弁護士 佐藤聖喜

京都大学経済学部在学中、旧司法試験合格。最高裁判所司法研修所を経て弁護士登録(日本弁護士連合会・東京弁護士会)。その後、京都大学経営管理大学院修了(MBA)。 長島大野常松法律事務所を経て独立し、千代田中央法律事務所を設立。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)では国際化支援アドバイザーとしても活動。上場企業の組織再編、IPO法務DD、スタートアップの資本政策支援、再生型M&Aなど、法務・戦略両面からの総合支援に実績を持つ。