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M&A全般

M&Aで注意するべきトラブルについて解説!事例も踏まえて回避するポイントも説明!

企業の成長戦略として注目されるM&A(Mergers and Acquisitions)ですが、慎重に進めなければ思わぬトラブルに直面することがあります。

実際のところ、誰もが名前を知る大手企業間でのM&Aにおいても、買収・譲渡後に大赤字に陥ったり従業員の大量リストラが起こったりする例が後を絶ちません。

中でも、M&Aで30社もの中小企業をトラブルに巻き込んだ「ルシアンホールディングス」の例はとくに有名です。

売り手・買い手どちらの立場においても、適切な準備とリスク管理を怠ると、従業員の人生をも左右するトラブルを招いてしまうのです。

M&Aの際に注意するべきトラブル(売り手と買い手をまとめて説明)

そこで本記事では、M&Aで起こりやすいトラブルを具体的な事例とともに解説し、リスクを回避するためのポイントを詳しく解説していきます。

十分なシナジー効果を発揮できるように、そして大切な従業員の雇用を守るために、ぜひチェックすべきポイントを把握しておきましょう。

M&Aの際に注意するべきトラブル:売り手側

M&Aの際に注意するべきトラブル:売り手側

まずは売り手側によくあるM&Aのトラブルについて、代表的なものを3つご紹介します。

1.売却価格に関するトラブル

M&Aにおいて、売却価格の交渉は最も塩梅が難しいポイントの一つです。

価格が高すぎると買い手に、低すぎると売り手にとってのメリットが少なくなり、どちらか一方だけが利益を得るだけの取引になってしまいます。

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・自社の価値を過大評価しすぎると…⇒買い手との価格交渉が難航し、最終的に契約が破談になるケースも
・市場価値よりも低い価格で譲渡すると…⇒売り手側が損失を被り後悔することに

また、最終的に合意した金額でも、後から価格調整条項(アーンアウトなど)により実際の支払い額が変動することも念頭に置いておかなければなりません。

 

こうした契約内容の不備が原因でトラブルになるケースも多いため、事前にM&A仲介会社や専門家と相談し、適正価格を算出してもらうと良いでしょう。

価格交渉を焦らず、複数の買い手候補とじっくり比較するのがコツです!


2.デューデリジェンス(買い手の調査)で問題が発覚

M&Aでは、買い手が売却企業の財務状況や経営リスクを詳しく調査するデューデリジェンスを必ず行います。

このとき、売り手が意図的に隠していた「未払い債務」や「税務リスク」が発覚すると、最悪の場合買収が白紙撤回されることになります

 

デューデリジェンスで発覚するトラブル事例

・知的財産や特許に関する問題が見つかる
・未払いの税金がある
・従業員と未解決の労務問題がある
・契約上の違約リスクなどが発覚する など


なお、デューデリジェンスを乗り切ればいいという考えで上記のようなトラブルを隠すのは絶対にやめておきましょう。

Attention

もし売却後にこれらの問題が発覚すると、売り手は契約違反として損害賠償を請求されるリスクもあるので、売却前に財務・法務状況を徹底的に整理しておきましょう。

M&Aを進める前に自社の財務・法務状況を整理し、リスクを明確にした上で交渉を進めることがマストです。

3.買収後のトラブル(従業員や取引先の混乱)

M&Aが成立した後、買収企業の経営方針が変わることで、従業員や取引先に大きな影響を及ぼす可能性もあります。

特に多いのが、M&A成立後にキーパーソンである社員が退職し、事業運営が困難になるケースです。

買収企業による人員整理や賃金体系の変更が発生すると、従業員のモチベーション低下や離職を招きやすいので注意しましょう。

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また、取引先が「経営方針が変わったなら今後の契約を見直したい…」と申し出るケースもあります。
特に中小企業ではオーナー経営者の影響力が大きいため、経営者が退任することで取引先の信頼を失うリスクも考慮しましょう。

 

対策としては、買い手との間で引継ぎ期間を設定し、売却前に従業員や取引先にしっかりと説明しながら移行していくなどの方法が有効です。

従業員・取引先には買収後の方針を早めに説明し、信頼を確保するよう心がけましょう。

M&Aの際に注意するべきトラブル:買い手側

M&Aの際に注意するべきトラブル:買い手側

次に、買い手として気を付けるべきトラブルを3つご紹介します。

1.想定していた収益が得られない

企業の成長やシナジー効果をねらってM&Aをする方も多いですが、買収後に期待していた収益を得られなかったと悩む経営者も少なくありません。

事業計画では黒字だったのに、実際の利益は想定よりも低かった…

売上の大部分を占める主要取引先に、M&A後に契約解消されてしまった…

というように、事前の事業計画や財務分析が不十分であったことが原因で生じるトラブルがほとんどです。

また買収企業に限らず、時期によって業界全体で売上が落ち込んでしまうケースも考えられます。

 

対策としては、買収前に売上の安定性主要取引先の意向を徹底的に調査するしかありません。

時間がかかっても良いので、買収後の経営統合(PMI)もしっかり計画しましょう。


2.知らなかった負債や法的リスクが発覚

M&Aの取引が完了した後に、売り手側が隠していたトラブルや負債が発覚するケースもあります。
 

後から発覚しやすいトラブル事例

・簿外負債(未払金、退職給付債務、訴訟リスクなど)があった
・従業員に未払い残業代があった
・独占禁止法に関する問題があった

隠していた売り手側に非があるとはいえ、もし買収後に発覚した場合は、買い手が想定外のコストを負担することになりかねません。

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どれだけ入念にデューデリジェンス(詳細調査)を行っても把握しきれない場合もあるため、対策を講じるのであれば、契約時に「表明保証条項(売り手が情報の正確性を保証する条項)」を盛り込むと安心です。

財務・法務の専門家(会計士・弁護士)を交えて契約をチェックすると、買収後のトラブルをより確実に防げるでしょう。

3.企業文化の違いによる対立(PMIの失敗)

M&Aの成功は、買収後の統合プロセス(PMI:Post-Merger Integration)に大きく依存しています。

企業文化の違いを十分に考慮せずに買収を進めると、組織内で対立が生じ、M&Aの効果を十分に発揮できなくなることがあるので要注意です。

 

例えば、フラットな組織文化の企業が階層的な組織文化の企業を買収すると、買収先の経営陣と従業員の間で軋轢が生じやすくなり、経営統合がスムーズに進みません。

また、意思決定のスピードや評価制度の違いが原因で、企業文化の違いを感じた従業員が馴染めず離職を選ぶこともあります。

 

PMIを成功させるには、M&A成立後すぐに従業員とのコミュニケーションを強化し、統合計画を明確にすることが必要です。

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当事者間で進めるのが難しい場合には、PMI(PostMergerIntegration)の専門家に頼ることも選択肢に入れましょう。

実際に起きたM&Aトラブル事例をピックアップ

実際に起きたM&Aトラブル事例をピックアップ

ここからは実際にあった事例を参考にしながら、M&Aにおいて気をつけたいトラブルについて深堀りしていきます。

 

実際にあったM&Aトラブル事例

①東芝とウェスチングハウス
②パナソニックと三洋電機
③ルシアンホールディングス

事例から学べることはたくさんあります。

「ウチは大丈夫」という思い込みはせず、要因と対策について一つひとつ学んでいきましょう。

また、上記以外にもさまざまなパターンのトラブル事例がありますので、気になる方はGoogleで「M&Aトラブル」と検索してみてください。

「こんなパターンも!?」と驚くほど沢山出てきますよ。

1.東芝とウェスチングハウスの事例

概要時期:2006年
買い手:東芝
売り手:ウェスチングハウス(アメリカ)
買収額約6,600億円
主な要因・東日本大震災による市場環境の変化
・デューデリジェンスの不足
参考記事焦点:原発で誤算、東芝の「失われた10年」 優良事業相次ぐ身売り

2006年、東芝はアメリカの原子力企業ウェスチングハウス(WH)を約6,600億円で買収しました。

しかし2011年の東日本大震災後、世界的に原子力発電への懸念が高まり、事業環境が大きく変化した結果巨額の損失を計上する事態となりました。

この事例においては、買収前に自然災害による市場の変動リスクを評価に織り込めていなかったことが要因として挙げられています。

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市場環境の変化を十分に考慮し、デューデリジェンスによるリスク評価を徹底することの重要性が示されたトラブル事例と言えるでしょう。

2.パナソニックと三洋電機の事例

概要時期:2008~2011年
買い手:パナソニック
売り手:三洋電機
買収額約9,000億円
主な要因・市場予測の誤り
・経営統合の難航
参考記事三洋・パナ電工完全子会社化(日本経済新聞)

2008年から、パナソニックは三洋電機株式を買収・連結し、2011年には完全子会社化しました。

しかし、買収後にリチウムイオン電池事業の競争が中国・韓国を含めて激化したことで市場が変動し、収益が激減。

期待したシナジー効果を得られず、巨額の損失を計上することになりました。

また、買収後の三洋電機では従業員の大量リストラが進み、経営方針の不一致により統合がスムーズに進みませんでした。

info

子会社化前にはおよそ10万人いた三洋の社員は激減し、吸収合併が完了する頃には約7千人にまで減少したとのことです。

3.ルシアンホールディングスの事例

概要時期:2021年
買い手:ルシアンホールディングス
売り手:約30社の中小企業
買収額
主な要因・買い手の買収目的の信頼性
・契約条項の不備
参考記事【ルシアンホールディングス】事件屋に乗っ取られた「鹿島ガーデンヴィラ」(政経東北)

2021年秋頃、ルシアンホールディングスは「事業再生」「経営者保証の解除」を掲げ、約30社の中小企業を買収しました。

しかし、買収後に傘下企業の資金を流用し、経営支援を行わないまま代表者が行方をくらます事態が発生。
結果として多くの企業が資金繰りに行き詰まり、経営破綻へと追い込まれました。

info

この問題の大きな要因は買い手の信用調査不足、契約の不備、買収後の経営計画の未履行です。

売り手となった企業は買収後の資金管理や保証解除について契約で明確に定めておらず、不正を防ぐ手段を持っていませんでした。

買い手企業の信頼性を慎重に確認すること、そして契約条件を厳格に設定することがいかに重要かを教えてくれる事例と言えますね。

このルシアンホールディングスのトラブル事例(通称:ルシアン事件)については、深掘りするとかなり深刻な状況です。

気になる方はこちらの動画もチェックしてみてください。

M&Aのトラブルを回避するポイント

M&Aのトラブルを回避するポイント

M&Aは企業の成長戦略として有効ですが、計画が不十分だと想定外のトラブルに発展する可能性があります。

ここまで解説してきたことからも分かるように、M&Aを成功させるためには、売り手・買い手の双方が事前準備を徹底して慎重に進めることが重要です。

M&Aのトラブルを回避するポイント(売り手と買い手をまとめて説明)

以下では、M&Aのトラブルを回避するための具体的なポイントを売り手側・買い手側それぞれ解説します。

売り手側が気をつけるポイント

売り手が気を付けるべきポイントは、買い手に透明性をもって情報を伝えること、そして同時に買い手の経営手腕を見極めることです。

具体的には、以下の3つが挙げられます。

  • 事業価値を適切に評価する
  • 財務・法務リスクを事前に整理する
  • 買い手の経営能力を慎重に見極める

一つずつ見ていきましょう。

1.事業価値を適切に評価する

事業価値を適切に評価せず、感覚的に価格を設定すると、適正価格での売却ができずにトラブルを招く可能性があります。

過大評価をすると買い手が見つからず、逆に過小評価をすると本来得られる利益を逃してしまう恐れがあるので慎重に行いましょう。

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企業価値を正しく評価するためには、純資産価値(B/Sベース)、収益価値(キャッシュフロー)、市場価値(類似企業の売却事例)の3つの観点から適正価格を算出することが重要です。

できれば第三者であるM&A仲介会社や会計士などに依頼し、適正価格を知ったうえで企業価値評価(バリュエーション)を行うことをおすすめします。

業界相場や市場動向と照らし合わせたり、財務・事業計画を整理したりして、バリューアップを図るとより効果的です。

2.財務・法務リスクを事前に整理する

買い手がデューデリジェンス(企業調査)を行う際、未払いの負債や法的問題が発覚すると買い手が撤退する可能性があるため、事前に整理しておく必要があります。

たとえば、簿外負債(未払いの税金、退職給付債務など)、労務問題(未払い残業代、雇用契約の不備)、整理されていない特許や商標などが発覚すると、M&Aの進行に支障をきたします。

また、取引先との契約書が口約束だったりすると、買い手がリスクを懸念して買収を見送る可能性もあるため要注意です。

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回避策としては、売却前に財務や法務の精査を専門家に依頼し、負債や契約関係の透明性を確保しておくことに尽きます。

決算書・契約書・資産状況などを簡単に説明できる資料を準備し、買い手にアピールしていきましょう。

3.買い手の経営能力を慎重に見極める

M&Aは売却すれば終わりではなく、売却後の事業の継続も重要なポイントです。

買い手の経営能力が不十分だと、従業員や取引先に悪影響を及ぼす可能性があります。

先ほどの事例からも分かるように、買い手との相性や資金調達力に問題がある取引をしてしまうと、最悪の場合買収後に倒産するケースもあり得るのです。

買い手の経営ビジョンはもちろん、コミュニケーション能力や従業員との相性などもしっかりと見極め、信頼できる相手にのみ売却するようにしましょう。

買い手側が気をつけるポイント

買い手が気を付けるべきポイントは、やはり何よりもデューデリジェンスに時間と手間をかけることです。

以下にあるように、事前準備がすべての鍵を握っていると言っても過言ではありません。

  • デューデリジェンスを徹底する
  • 買収後の統合(PMI)計画を策定する
  • 事業シナジー(相乗効果)が本当に得られるかを検討する

それぞれ、具体的な要注意ポイントを見ていきましょう。

1.デューデリジェンスを徹底する

売り手の財務・法務・事業リスクを把握するデューデリジェンスは絶対に怠ってはいけません。

買収後に予期せぬ負債や経営課題が発覚し、計画通りに事業を運営できなくなる可能性もあるので、会計士・弁護士・コンサルタントを活用してリスクを徹底的に洗い出しましょう。

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デューデリジェンスでは、財務(収益性・負債状況)、法務(契約リスク・訴訟リスク)、ビジネス(市場競争力・成長性)の3つの視点から慎重に調査を行うことが必要です。

企業の収益が一部の取引先に依存している場合、M&A後に主要顧客が離脱すると事業が成り立たなくなる可能性も念頭に置きましょう。


また、簿外債務や未払いの税金など、売り手が意図的に不利な情報を隠している可能性もあるため必ず専門家と一緒に確認してください。

売り手側と交渉し、主要顧客との関係維持について事前に話し合うのも有効です。

2.買収後の統合(PMI)計画を策定する

M&Aは買収が完了すれば終わりではなく、買収後の統合(PMI)が成功の鍵を握ります。

PMIがうまく進まないと、以下のように企業文化の違いによる対立や業務の混乱が発生し、事業シナジーが実現しない可能性があります。
 

買収後の統合でよくあるトラブル

・企業文化の違いが原因で従業員が大量離職した
・既存の従業員が新しいオーナーに不安を感じ、次々に退職
・組織体制の組み換えで混乱が生じ、業務が滞る
・組織の統制が取れず、売上が低下する

従業員なくしてM&Aの成功はありません。

統合後のロードマップを明確にし、従業員向けの説明会・面談を実施するなどして、買収前から売り手企業の従業員と十分にコミュニケーションを取ることが不可欠です。

会社のビジョンや経営方針を明確にし、不安を取り除いておきましょう。

3.事業シナジー(相乗効果)が本当に得られるかを検討する

M&Aの最大の目的は、買収による事業シナジー(相乗効果)を得ることですが、事前に相性をよくよく分析しておかないと期待通りの成果は上げられません。

企業方針が目標と合わず、コストばかり増えてしまう

買収後の体制に適応できず、事業成長が停滞した

なんてことにならないよう、コスト以上のシナジーが見込めるかを慎重に検討する必要があります。

info

買収した企業が単独で成長し続けることを前提にせず、「なぜこの企業を買収するのか?」を明確にし、メリットを具体的に検証しましょう。

M&Aを活用した市場拡大や業務効率化の計画を具体化し、買収企業の強みと自社のシナジーを分析できるのが理想です。

M&Aのトラブルを回避!M&A仲介は「MA Frontier」にお任せください!

弊社MA Frontierでは、スタートアップ型・成長戦略型・事業承継型など、さまざまな目的に応じて最適なM&Aの戦略をご提案しています。

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