【2025年の破綻例あり】M&Aが破綻する原因とは?破綻を防ぐポイントや破綻した際の対応も解説!
M&Aは企業の成長戦略として有効な手段ですが、 残念ながら、そのすべてが成功するとは限りません。 2025年には、日産とホンダの統合交渉が破談となる事例もありました。
この記事では、M&Aが破綻に至る原因を、 具体的な事例を交えながら詳しく解説します。
M&Aを成功させるためには、 交渉段階の価格や条件の不一致、 デューデリジェンスにおけるリスクの見落とし、 PMI(経営統合)の計画不備など、いくつもの落とし穴を事前に理解し対策を講じることが不可欠です。
さらに、M&Aの破綻を防ぐための具体的なポイントや実際に破綻してしまった際の対応についても解説します。M&Aを検討している経営者の方々にとって、 この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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下記の動画では、M&Aの破綻について実例を交えて解説しています。ぜひこちらも参考にしてみてください。
【2025年の破綻事例】日産とホンダの統合について解説

2024年末に大きな話題となった日産自動車と本田技研工業の経営統合構想ですが、2025年2月には破談という形で幕を閉じました。もし実現していれば、世界でも有数の自動車メーカーが誕生するはずだっただけに、その結末は業界内外に大きな衝撃を与えました。
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日産とホンダの経営統合の破談について詳しく知りたい方は、ぜひ下記のニュースや動画を参考にしてみてください。
https://news.yahoo.co.jp/articles/14db7217a32905eba9f2ecec1ef798e606b23315
取引の概要
報道によれば、両社は2024年12月から水面下で統合協議を重ねていました。これは、トヨタ自動車に対抗し、EV(電気自動車)の開発競争を勝ち抜くための戦略的な動きと見られていました。
しかし、実際には、日産の経営状況や両社の企業文化の違いなどが障壁となり、わずか数ヶ月で協議は決裂しました。
破綻した理由
統合破談の背景には、以下のような複数の要因が絡み合っています。
・日産の経営状況
巨額の債務を抱える日産に対し、ホンダ側から「子会社化」の提案がなされました。しかし、日産側はこれに強い反発を示し、対等な合併を主張しました。
・両社の思惑の違い
ホンダは、EV開発における協業やコスト削減といったシナジー効果を期待していました。一方、日産は、経営再建の足がかりとして、ホンダの資金力や技術力を必要としていました。
・企業文化の違い
独立性を重んじるホンダと、ルノーとの提携関係にある日産では、企業文化や意思決定プロセスが大きく異なり、統合後の経営体制について合意に至ることができませんでした。
日産の経営状況、特に役員報酬の高さや役員数の多さも、ホンダ側の懸念材料となったようです。加えて、具体的なリストラ策を打ち出せない日産の姿勢に対し、ホンダ側は「踏み込み不足」と判断したとも報じられています。
この事例から考えられる破綻しないためのポイント
日産とホンダの統合破談の事例から、M&Aを成功させるためには、以下の点が重要であることがわかります。
今回の事例は、M&Aが単なる数字合わせではなく、企業文化や経営戦略、そして何より「人」の融合であることを改めて認識させてくれます。
M&Aが破綻する理由とは?

M&Aは企業成長の有効な手段ですが、交渉が途中で決裂し破綻してしまうケースも少なくありません。
M&Aが破綻する理由はさまざまですが、大きく分けると 「交渉段階での問題」「デューデリジェンスでの問題」「買収後の問題」 の3つに分類できます。
ここでは、それぞれの主な理由を詳しく解説します。
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下記のニュースでは、「日本の大企業の大型統合・買収がなぜ上手くいかないのか」について解説されています。気になる方は、ぜひこちらもご覧ください。
1. 交渉段階での問題(価格・条件の不一致)
M&A交渉において、価格や条件の不一致は、破談の最も一般的な原因の一つです。破断してしまう具体的な原因は以下の通りです。
・売り手はより高い価格に、買い手はできるだけ安い価格にしようとして交渉の折り合いがつかなくなる
・売り手が複数の買い手候補と交渉を進めており、他の買い手とのM&Aを決めてしまう
スムーズに交渉を進めるためには、M&A仲介会社や弁護士など、M&Aの専門家を早い段階から交えることが重要です。
2. デューデリジェンスでの問題(財務・法務リスク)
デューデリジェンス(DD)とは、買い手側が売り手企業の財務・法務・ビジネス状況を詳細に調査するプロセスです。この過程で重大な問題が発覚すると、買収のリスクが高まり、交渉が破綻することがあります。
デューデリジェンスの段階で、破綻してしまう主な原因は以下の通りです。
・財務リスク → 過去の粉飾決算、不良債権、隠れ負債の発覚
・法務リスク → 許認可の未取得、契約上の問題、訴訟リスクの存在
・税務リスク → 未払い税金、過去の税務申告の不備
・ビジネスリスク → 主要取引先の解約リスク、業績悪化の兆候
事前に企業の財務・法務を整理し、買い手が安心できる情報を提供することが重要です。
3. PMI(経営統合)の問題(買収後の計画不備)
M&Aが成立しても、経営統合(PMI:Post Merger Integration)に失敗すると、最終的に事業が破綻するリスクが高まります。
買収後の統合計画が不十分だった場合、従業員の離職や文化の衝突、シナジー効果の低迷などが発生し、M&Aの成功が難しくなります。
経営統合に失敗し破綻してしまう原因は、以下の通りです。
・企業文化の違いが大きく、従業員の反発を招く
・経営陣の交代により、社内の混乱が生じる
・買収した企業の統合プロセスが不明確で、運営がスムーズに進まない
・シナジー効果が出ず、当初期待していた成長が見込めない
事前にM&A後の経営統合計画をしっかり立て、スムーズな運営を確保することが成功のカギです。
M&Aの破綻を防ぐポイント

M&Aは、交渉段階・デューデリジェンス・経営統合(PMI)のいずれかのフェーズで破綻するケースが多く、その原因の多くは「理論上は正しいが、現場で機能しない対策」を取っていることにあります。
ここでは、M&Aの現場を熟知しているプロだからこそ知る、生々しい破綻回避のポイントを解説します。
1. 「本気度の低い買い手・売り手」との交渉を避ける
M&Aの交渉が進んでも、「なんとなく興味がある」「売却してもいいかなくらいの気持ち」という本気度の低い相手と交渉しているケースでは、ほぼ確実に破綻 します。
本気度の低い相手との交渉におけるリアルな破綻パターンを紹介します。
・売り手が「高く売れればいい」と思っているだけで、真剣に譲渡を考えていない
・買い手が「とりあえず話を聞いてみる」という姿勢で、決断力がない
・交渉段階でトップ同士の意思が統一されておらず、決裁権者が後で意見を変える
交渉の初期段階で、相手の本気度を見極めることが重要です。本気度を見極めるには、以下のようなポイントを意識してみてください。
少しでも不安を感じたら、早めに交渉を打ち切ることも、M&Aを成功させるためには重要な判断でしょう。
2. 「とりあえず買収」にならないようにする(買い手向け)
M&Aの失敗事例の中で特に多いのが、「とりあえず買っておけば何とかなる」という安易な買収 です。企業買収は、単なる投資ではなく「経営そのもの」なので、慎重な判断が必要です。
「とりあえず買収」で破綻してしまうリアルなパターンは、以下の通りです。
・買収後のシナジーを具体的に計算せず、「伸びそうだから買う」で決めてしまう
・現場の従業員にヒアリングせず、経営層だけで決めてしまう
・買収後の経営計画が「とりあえず軌道に乗せる」の一言で終わる
これらのようなパターンを避け、買収の成功確率を高めるためには、ポイントを参考にしてみてください。
明確な戦略がない場合は、無理にM&Aを行うのではなく、まずは自社の強みを活かした有機的な成長を目指しましょう。
3. デューデリジェンスの「意図」を理解し、表面上のチェックだけで終わらせない
財務・法務・税務のデューデリジェンス(DD)は、形式的にやっている企業が多く、「本当に重要なリスクを見逃してしまう」ケースが頻発 しています。
例えば、以下のような破綻パターンが考えられます。
・「監査法人に頼んだから大丈夫」と安心し、リスクの本質を理解しない
・財務データの数値ばかりに注目し、実態(未払い給与・不正取引・隠れ負債)を見落とす
・買収後の「主要顧客が離れるリスク」など、財務数値には表れないリスクを考慮しない
デューデリジェンスの精度を高め、失敗を未然に防ぐには以下のようなポイントが重要です。
表面的なチェックだけで終わらせず、専門家と連携しながら、潜在的なリスクを洗い出しましょう。
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下記の動画では、デューデリジェンスについて目的別に詳しく解説されています。デューデリジェンスでの失敗を防ぐためにも、ぜひ参考にしてみてください。
4. PMI(経営統合)を「人」のレベルで考え抜く
M&Aが成立した後に破綻するケースの大半は、買収後の経営統合(PMI)がうまくいかないことが原因 です。特に、買収企業の現場社員が「この買収はうまくいかない」と思った瞬間に、M&Aは失敗すると言っても過言ではありません。
経営統合(PMI)が上手くいかず、破綻してしまうケースは主に以下の通りです。
・買収直後にトップダウンで「明日から経営方針を変更する」と発表し、従業員が反発する
・買収先の役員や幹部が「これは自分たちの会社じゃない」とモチベーションを失う
・労働環境や待遇の変更を後回しにし、不安になった優秀な社員が流出する
経営統合(PMI)の成功率を高め、トラブルを避けるには以下のポイントを意識しましょう。
5. 「逃げ道」を作らず、最終契約締結までスピード感を持って進める
M&A交渉が長引くと、必ず破綻のリスクが高まります。
「もっと良い買収先があるかもしれない」「もう少し高く売れるかもしれない」と考えている間に、時間が経ちすぎて話がまとまらなくなるケースは非常に多いです。
交渉が長引いて破綻してしまうケースとしては、主に以下のパターンが挙げられます。
・売り手が「もう少し待てばもっと高く売れる」と思い、交渉を引き延ばす
・買い手が「もう少し市場を見て判断したい」と言って決断を先延ばしにする
・最終契約締結までのプロセスを明確に決めず、ズルズル交渉が長引く
M&A交渉をスムーズに進め、成功確率を高めるには以下のポイントを重視してみてください。
「逃げ道」を作らず、最終契約締結まで一気に進めることで、M&Aの成功率を高めることができます。
実際にM&Aが破綻した際の正しい対応

M&Aが破綻すると、多くの企業が混乱し、次の一手を誤ることがよくあります。
「破談になったら終わり」ではなく、適切な対応を取ることで、次の機会を活かし、企業の成長戦略を維持することが可能です。
ここでは、M&Aが破綻した際の正しい対応を、実際の現場でよく起こるケースを交えながら解説します。
1. M&A破綻の影響を最小限に抑える
M&Aが破綻した場合、内部・外部への影響を最小限に抑えることが最優先 です。特に、従業員・取引先・投資家などのステークホルダーに対する適切な対応が求められます。
M&Aが破綻した場合の対応で、重要なポイントは以下の通りです。
M&A破綻=経営不安ではないことを関係者に伝え、社内外の混乱を防ぐことが重要です。
2. 破綻の原因を明確にし、次に活かす
M&Aが破綻した場合、「なぜ破綻したのか?」を冷静に分析し、次に生かすことが重要です。
同じ失敗を繰り返さないために、破綻の原因を整理し、今後の戦略を立て直す必要があります。
破綻の主な原因とそれに対する対応策は、以下の表の通りです。
破綻の原因 | 正しい対応 |
価格交渉の決裂 | 適正な企業価値評価を見直し、買い手・売り手の合意点を再検討する |
デューデリジェンスで問題発覚 | 財務・法務の整理を徹底し、買い手に安心感を与える準備をする |
経営方針の不一致 | 事前に経営者同士のビジョンを共有し、合意形成のプロセスを強化する |
PMI(統合計画)の不備 | 買収後の経営統合計画を事前に策定し、リスクを可視化する |
買い手・売り手の本気度不足 | 初期の交渉段階で、M&Aへの本気度を見極める質問を行う |
3. 破談後の選択肢を考え、次の一手を決める
M&Aが破綻した後は、「すぐに別の買い手・売り手を探すべきか」「自社で経営を継続すべきか」 の判断が必要です。
特に売り手企業の場合は、M&Aを断念するのか、新たな買い手を探すのかを明確に決める必要があります。
M&Aは団子に取れる選択肢とその対応策について、売り手と買い手それぞれの場合に分けて解説していきます。ぜひ下記を参考にしてみてください。
破談後の選択肢と対応策
売り手の場合
・別の買い手を探す
交渉の進め方や企業価値の見直しを行い、再度M&A市場に出る。
・M&A以外の選択肢を検討する
事業提携・資本提携など、別の方法で成長を目指す。
・自社で経営を継続する
破談の理由を踏まえ、社内の課題を改善して自力で成長を図る。
買い手の場合
・別の買収候補を探す
同じ業界・類似企業をリストアップし、M&A戦略を継続する。
・内部成長(オーガニックグロース)にシフトする
自社リソースを活用し、新規事業や既存事業の強化に注力する。
・他の投資手法を検討する
出資・ジョイントベンチャーなど、M&A以外の手法で目的を達成する。
M&A破綻後に「次にどう動くか?」を明確にし、スピーディーに戦略を立て直しましょう。
4. M&A仲介・専門家の活用を検討する
M&Aが破綻した場合、仲介会社やM&A専門家と連携し、より成功確率の高い交渉を進めることが有効です。特に、独自に交渉を進めていた企業は、第三者の視点を入れることで課題を解決できる可能性 があります。
仲介会社や専門家を活用するメリットは、主に以下の通りです。
破綻を繰り返さないために、プロの力を借りるのも有効な選択肢の1つです。
M&Aの破綻に関するよくある質問

Q.M&Aの破綻率はどれくらいですか?
M&Aの成功率はケースによって異なりますが、一般的に「交渉の破綻率は50%以上」 と言われています。特に デューデリジェンスの段階で問題が発覚し、破談するケースが多い です。
主な破綻ケースとそれぞれの破綻率は、以下の通りです。M&Aを検討する際には、ぜひ参考にしてみてください。
・交渉段階での破綻(価格・条件不一致) → 約30〜40%
・デューデリジェンスでの破綻(財務・法務リスク) → 約20〜30%
・PMI(経営統合)での破綻(統合後の問題) → 約10〜20%
M&Aの破綻率を下げるには、初期交渉の時点でお互いの条件やリスクを明確にしておくことが重要です。
Q.M&Aが破綻する最も多い原因は何ですか?
M&Aが破綻する原因はさまざまですが、特に多いのは「価格の不一致」「デューデリジェンスでの問題発覚」「企業文化の違い」 です。
M&Aが破断する主な原因は、主に以下の通りです。
M&Aは価格交渉だけでなく、デューデリジェンスやPMIの計画をしっかり立てることが成功のカギです。
Q.M&Aが破綻すると、売り手企業はどうなる?
M&Aが破綻した場合、売り手企業は 「別の買い手を探す」「自社で経営を続ける」「M&A以外の選択肢を検討する」 などの対応を取ることになります。
破綻後に売り手側が取れる選択肢は、主に以下の3つです。
・別の買い手を探す(再交渉)
価格や条件を見直し、新たな候補を探す。
・自社で経営を続ける
経営改善を行い、M&Aをせずに成長を目指す。
・M&A以外の手段を検討する
事業提携・資本提携・ファクタリングなど、別の資金調達手段を活用する。
M&A破綻は企業の終わりではありません。次の一手を素早く検討し、経営戦略を立て直すことが重要です。
Q.M&Aが破綻すると、買い手企業はどうなる?
買い手企業の場合、M&Aが破綻したら 「次の買収候補を探す」「内部成長にシフトする」「他の投資手法を検討する」 などの対応を取ります。
M&A破綻後に買い手側が取れる選択肢は、主に以下の3つです。
・別の買収候補を探す
業界内の類似企業や他のターゲット企業をリストアップする。
・内部成長(オーガニックグロース)にシフトする
自社の経営資源を強化し、M&Aをせずに事業を拡大する。
・他の投資手法を検討する
資本提携・ジョイントベンチャーなど、M&A以外の方法で成長戦略を模索する。
M&Aが破綻しても、新たな買収先や成長戦略を見つけることが重要です。
こちらの動画もチェック!
下記の動画では、買い手企業におけるM&Aを成功させるポイントや必須知識について解説されています。失敗事例も交えて解説されているので、ぜひご覧ください。