【2025年最新】スタートアップ買収における減税メリットとは?仕組み・制度・活用方法を解説
スタートアップの買収においては、買収スキームの選び方や制度の活かし方によって、手取りのキャッシュフローは大きく変わります。
2025年時点では、オープンイノベーション促進税制や研究開発(R&D)減税など、上手に使えば実効税率を押し下げられる制度が整っています。

一方で、「株式譲渡と事業譲渡で消費税の取り扱いが違う」「のれんの償却で損金算入のタイミングが変わる」「繰越欠損金の引継ぎには制限がある」…といった要注意ポイントもたくさんあります。
そこで本稿では、代表的な減税制度の概要から簡易的なシミュレーションまで、実務で外せない税務ポイントをまとめてご紹介します。スタートアップ買収の検討の入口としてお役立てください!
スタートアップ買収に活用できる主な減税制度
スタートアップ買収おいて、実効税率を下げるポイントはは大きく3つです。

どれも要件や期限、申請手続きが異なるため、ディールの初期段階から設計に織り込むことが肝心です。
▼主な減税制度
- オープンイノベーション促進税制
- 産業競争力強化法に基づく税制優遇
- 研究開発費に関する税制(R&D減税)
減税制度は「いつ・どのスキームで・どの順序で」使うかが、キャッシュフローと回収期間を左右します。
デューデリジェンスの前の段階から、要件確認・証憑準備・スケジュール設計をセットで走らせましょう。
オープンイノベーション促進税制
オープンイノベーション制度は、国内事業会社や国内CVCがスタートアップの新規発行株式を一定額以上取得した場合、取得価額の25%を所得控除できる仕組みです。
▶公式ページ:経済産業省 | オープンイノベーション促進税制
令和5年度の改正で、スタートアップの成長に資するM&A(議決権の過半取得)による発行済株式の取得も対象となり、1件あたりの所得控除上限は50億円(取得価額200億円の25%)と示されています。
適用されるには、対象となる「スタートアップ要件」を満たしていることや、案件概要スライドの作成、gBiz FORMによる申請、継続証明などの手続が必要です。

買収スケジュールと証明手続のタイミングがズレると適用が難しくなるため、初期段階から要件をチェックし、社内稟議と並行管理することをおすすめします。
▼オープンイノベーション促進税制の概要
- 対象法人:①青色申告書提出法人であること、②スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指していること ほか
- 取得形態:新規出資 or M&A(過半取得)
- 手続:①税制の適用を受けるための手続き(本申請)、② 税制の適用後5年間の手続(継続申請)、③ 成長要件の達成に関する証明を受けるための手続(成長発展申請)
- 所得控除の上限額:1件あたり50億円
産業競争力強化法に基づく税制優遇
買収後の統合(PMI)で設備更新や生産性向上投資を予定する場合、「事業再編計画」等の認定を受けると、税制・金融支援の優遇が使える可能性があります。

経済産業省による産業競争力強化法では、産業競争力の強化を促す施策として、事業再編の円滑化を図る仕組みを設けています。
●本税制措置は、M&A実施後の簿外債務リスクや経営統合リスクといった減損リスクに備えるために、準備金を積み立てた場合、株式取得価額の一定割合の準備金積立額を損金算入できる制度です。
●過去にM&Aを行ったことがある成長志向の中堅企業や中小企業が、特別事業再編計画に基づき実施する株式若しくは持分の取得によるM&Aについては、株式取得価額の最大100%まで損金算入可能です。益金算入開始までの据置期間は10年間です。
引用:経済産業省 | 特別事業再編計画に係る税制利用者向けガイドライン
申請手続きでは様式が定められていたり、事業再編に伴う労働者の保護が義務付けられていたりと、タスクがかなり細分化されています。
申請に先立ち、対象投資の性能基準や要件、申請窓口の手順を洗い出してください。
研究開発費に関する税制(R&D減税)
研究開発型のスタートアップを取り込むときは、試験研究費の額に税額控除割合(1%~14%)を乗じた金額を法人税から控除できる制度を適用できます。
一般型の控除上限は原則25%です。共同研究・委託研究の扱い、対象費目の切り分け、増減要件による控除率の上下など、項目は枝分かれしています。
▼研究開発税制を構成する3つの制度
- 一般試験研究費の額に係る税額控除制度
- 中小企業技術基盤強化税制
- 特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)
最新の制度概要・Q&Aは経済産業省の資料にまとまっているため、年度改正の反映状況を適宜確認してください。
▶参照:サービス開発にかかる Q&A | 経済産業省 技術振興・⼤学連携推進課
スタートアップの買収スキーム別に異なる減税効果
同じ企業を取り込む場合でも、買収スキームによって税務メリットとキャッシュの動きは大きく変わります。

たとえば株式譲渡は消費税が非課税となり、契約や対外手続きの負担を抑えやすい一方、税務上ののれんは原則発生せず、早期の損金算入は限定的です。
以下では、買収スキーム別の具体的な減税効果と実務上の勘所を詳しく紐解いていきましょう。
株式譲渡の場合の減税効果
株式譲渡は、対象会社の株式(有価証券)の売買であるため、取引自体は消費税の非課税に該当します。
このため、クロージング時の消費税資金は原則不要です。
また減税効果の観点でいうと、要件を満たす場合にはオープンイノベーション促進税制(M&A型)の25%所得控除が狙えます。
事業譲渡の場合の減税効果
事業譲渡は、譲渡対象に課税資産と非課税資産が混在します。
棚卸資産や機械、無形資産など課税資産に相当する部分には消費税が課されるため、資産区分ごとの対価配分と納税資金の手当が必要です。
もっとも、事業譲渡(や非適格組織再編)で生じる税務上ののれん(=資産調整勘定)は、60か月(5年)均等で減額し、その金額を損金算入できます。

のれんが大きい案件ほど、初期5年間の税負担を実額で圧縮できる点が実務上の利点です。
会計上ののれん償却年数(最長20年)とは別建てで動くため、税効果のタイミングは会計費用と一致しません。
のれん額・資産配分・消費税の三点を同時に設計する必要があるため、管理が複雑になる点には注意が必要でしょう。
持株会社を活用した場合の節税効果
持株会社(ホールディングス)を介した保有では、受取配当の益金不算入(国内は持株比率に応じた不算入、外国子会社からの配当は95%不算入)や、グループ通算制度による損益調整の枠組みを活かせます。
これにより、配当還流の効率化やグループ内の税負担の最適化が図りやすくなります。
組織構成や資金調達の設計段階から、配当区分・持株比率・保有期間、通算の適用要件・Q&Aを確認し、適用可否を早期に判定しましょう。
スタートアップ買収における減税効果を数値でシミュレーション
実務では、所得控除・税額控除・損金算入に注意が必要です。
ここでは買収額10億円を前提に、のれん償却・R&D減税・オープンイノベーション促進税制(M&A型)をそれぞれ単独で適用した場合のインパクトを、簡易モデルでご紹介します。
▼モデル前提(例)
- 買収額:10億円
- 税率:30%で概算(実効税率の目安に基づく)
- 他の制度との重複・上限は個別精査
税率は概算として日本の法人**実効税率29.74%**に近い30%前後を念頭に置きます(防衛特別法人税の対象となる法人は2026年度以降の数値が異なる可能性があります)。

なお、数値はあくまでイメージです。最終判断は専門家の試算に基づき、最新の条文・通達・自治体税率を踏まえてください。
のれん償却による節税効果
事業譲渡で時価純資産との差額6億円が税務上ののれん(資産調整勘定)として計上します。資産調整勘定は60か月(5年)均等で減額し、その額を損金算入します。
年間の償却額は6億円÷5年=1.2億円。税率30%での年間税効果は1.2億円×0.30=3,600万円、5年累計で約1.8億円の税負担軽減イメージです。
▼シミュレーション結果
| 項目 | 金額・条件 | 参考 |
|---|---|---|
| 税務上ののれん(資産調整勘定) | 6億円 | 事業譲渡で発生 |
| 償却年数 | 5年(60か月) | 法人税法62条の8 |
| 年間償却・損金算入額 | 1.2億円 | 6億÷5年 |
| 年間税効果(30%) | 3,600万円 | 1.2億×30% |
| 5年累計税効果 | 約1.8億円 | 単純合計 |
会計上ののれん償却年数とは別管理である点、株式譲渡では税務上ののれんが原則発生しない点にご留意ください。
研究開発型スタートアップにおけるR&D減税効果
ここでは試験研究費2億円、控除率10%、当期の法人税額1億2,000万円と仮定してシミュレーションします。

R&D減税は、当期の研究開発費に応じて法人税額から直接差し引く仕組みです。
税額控除の上限(一般型は当期法人税額の原則25%)があるため、研究費が多くても当期税額を超えて控除はできません。
まず研究費に控除率を掛けて控除見込額2,000万円を求めます。
上限3,000万円の範囲に収まるため、2,000万円を満額控除でき、期末納税額は1億2,000万円から1億円へ減ります。
▼シミュレーション結果(モデルケース)
| 指標 | 適用前 | 適用後 | 参考 |
|---|---|---|---|
| 法人税額(概算) | 12,000万円 | 10,000万円 | 控除額2,000万円を直接差引 |
| 税額控除額 | – | 2,000万円 | 2億円×10% |
| 上限判定 | – | 充足 | 上限=税額の25%=3,000万円以内 |
オープンイノベーション税制を適用した場合の控除額
オープンイノベーション促進税制は「所得控除」です。国内の事業会社または国内CVCが、要件を満たすスタートアップへ新規出資を行った場合、取得価額の25%を課税所得から控除できます。
▼シミュレーションの条件の内訳
- 取得価額:10億円(M&A型の要件を充足)
- 所得控除率:25% → 控除額2.5億円
- 適用前の課税所得:8億円(例)
- 法人税率:30%で概算(目安)
まず取得価額に25%を掛けて所得控除額2.5億円を算定します。
次に課税所得から控除すると8.0億円→5.5億円に縮小し、税額は2.4億円→1.65億円へ。差し引き7,500万円の税負担減というイメージです。

R&D減税(税額控除)と異なり、所得そのものを減らすため、黒字がしっかり出ている期ほど効果が大きくなります。
▼シミュレーション結果
| 項目 | 制度適用前 | 制度適用後 |
|---|---|---|
| 課税所得 | 8.0億円 | 5.5億円 |
| 法人税(30%概算) | 2.40億円 | 1.65億円 |
| 税負担減 | – | 0.75億円 |
スタートアップ買収で考慮すべき基本的な税務
税務は「何を買うか(株式か事業か)」「どう買うか(スキーム)」「買った後にどう運用するか(通算・配当・欠損金)」で対応フローが変わります。

法人税の取扱いや消費税の有無など、注意ポイントとしてよく挙げられる項目を個別に整理しておきましょう。
法人税の取扱い|買収コストと損金算入
株式譲渡では、取得対価は資産計上され税務上ののれんは原則生じないため、即時の損金算入は期待しにくい設計です。
事業譲渡や非適格組織再編では、差額が資産調整勘定として計上され、60か月で均等減額し損金算入します。

研究投資を厚くするならR&D減税、スタートアップの買収自体で減税を狙うならオープンイノベーション税制(M&A型)の所得控除、というように損金算入・税額控除・所得控除を案件に合わせて組み合わせるのが基本です。
なお、これによる税率のラフ目安は実効税率29.74%近辺(2025年1月時点の比較資料)です。
消費税の有無|株式譲渡と事業譲渡の違い
株式譲渡=非課税(有価証券の譲渡)で、取引自体に消費税はかかりません。
対して事業譲渡は、譲渡資産のうち課税資産部分に消費税が課されます。
営業一括譲渡であっても「課税資産・非課税資産の混在」を前提に対価配分を設計し、納税資金をクロージング資金繰りに織り込む必要があります。
| 項目 | 株式譲渡(Share deal) | 事業譲渡(Asset deal) |
|---|---|---|
| 消費税の扱い | 非課税 | 課税・非課税が混在。 棚卸資産・機械・無形資産など課税資産分に消費税がかかる |
| 税務上ののれん | 原則、税務上ののれん(資産調整勘定)は発生しない | 資産調整勘定が発生する場合は60か月均等で損金算入可能 |
| 実務の負担感 | 外向きの契約・許認可の切替が相対的に少なく、手続がシンプルになりやすい | 移転対象の特定・契約切替・対価配分など個別対応が増える |
| 選びやすい場面 | PMIの負荷や消費税キャッシュを抑えたい場面で有効 | 初期の税負担を抑えつつ回収速度を高めたい のれん償却の効果を取りに行きたい場面で有効 |
のれん償却の扱いと減税効果
税務上ののれん(資産調整勘定)は法人税法62条の8に基づき、60か月で均等に減額し、その金額を損金算入します。
会計上ののれん償却(任意・上限20年)とは独立して動くため、税効果のタイミングが会計費用とズレます。

逆に差額負債調整勘定が生じた場合には、5年で益金算入される点も把握しておきましょう。
どのスキームならのれんが発生するか、発生額はいくらか——この2点を対価配分の段階から設計することで投資回収のシミュレーション精度を高められます。
繰越欠損金や税務属性の引継ぎ制限
欠損法人の買収で繰越欠損金を使う戦略には、支配関係の継続や事業継続性、みなし共同事業要件などの条件が伴います。
欠損金の活用を前提とする場合は、要件の当てはめと計画の整合を初期から検証しましょう。
スタートアップ買収の際の減税効果を確認したい方は「Camphor Tree」にご相談ください
Camphor Treeは、スタートアップに特化したM&Aアドバイザリーサービスをはじめ、資本政策や資金調達支援など幅広いサービスを提供します。弁護士主導による高度なリーガル対応と、公認会計士・税理士・戦略コンサルタントが連携するワンストップ支援体制により、成長戦略からEXIT、セカンダリー取引まで一貫したサポートを実現します。
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買主企業様には着手金・月額報酬無料の成功報酬制を採用しており、検討初期のコスト負担を抑えながら、実効性の高い節税シナリオを比較検討していただけます。

さらに、弁護士や公認会計士などが財務面でのリスクをしっかりと検証するため、M&A取引に必要な各種書式や契約書の準備も円滑に進めていただけます。

この他にも、以下のようにさまざまなご依頼を承っております。
減税効果の“取り逃し”をなくすためにも、まずは無料相談にてお気軽にご相談ください。
提供サービス内容
スタートアップ向けサービス
・M&Aによる成長戦略・エグジット支援
・セカンダリー取引支援
・資本政策支援
・資金調達支援
事業会社・CVC向けサービス
・M&Aアドバイザリー
・セカンダリー取引支援
VC向けサービス
・セカンダリー取引支援
・M&Aアドバイザリー
スタートアップ買収の際の減税効果を確認したい方は、この機会にぜひご相談ください。
スタートアップ買収の減税に関してよくある質問
Q. スタートアップ買収では必ず減税メリットを受けられますか?

いいえ、必ずではありません。
各制度には適用期限・対象定義・証明手続・上限などがあり、スキームや時期が合致しないと適用できません。
たとえばオープンイノベーション促進税制は「新規出資型」と「M&A型」で要件が異なり、M&A型は過半取得や証明申請が前提です。
R&D減税も控除率(1〜14%)や控除上限(一般型で法人税額の原則25%)が定められています。
Q. 株式譲渡と事業譲渡では、減税効果にどんな違いがありますか?

株式譲渡は有価証券の譲渡で消費税が非課税となり、事業譲渡は資産ごとに課税・非課税が分かれます。
「どちらの方が良い」という基準はありません。のれん発生見込み、消費税の資金手当、承継したい資産・契約の範囲、PMIのやりやすさなどを踏まえて総合的に判断します。
Q. のれん償却は現在も減税効果として使えますか?

事業譲渡や非適格組織再編で生じる税務上ののれんは、60か月均等で減額し、その金額を損金算入できます(法人税法62条の8)。
会計上ののれんの取り扱いとは別建てで動くため、税効果のタイミング設計が可能です。
一方、株式譲渡では税務上ののれんは原則発生しません。計画段階でスキームと対価配分を連動させ、税効果の道筋を早期に見える化しておきましょう。
Q. 繰越欠損金を引き継ぐときの制限はありますか?

組織再編やグループ通算制度の開始・加入では、5年ルックバックや共同事業性、事業継続などの要件を満たさない場合、欠損金の持込み・使用が制限されます。
判定は形式だけでなく、関連性・継続性などに基づいて行われます。
国税庁の解説・質疑事例やQ&Aに具体的な枠組みが示されていますので、欠損金の活用を前提にするなら早期に目を通しておきましょう。
Q. オープンイノベーション税制はどんなケースで適用されますか?

新規出資型では、一定額以上の新株引受に対して取得価額の25%を所得控除できます。
M&A型では、スタートアップの成長に資する過半取得の買収が対象で、発行済株式の取得も範囲に含まれます。
いずれも申請・証明・継続確認などの手続きが必要です。適用期限や上限も定められているので、必ず確認してください。
Q. 減税制度を活用したい場合、どこに相談するのがよいですか?

まず、経済産業省・国税庁・財務省の一次資料で、制度を活用するために必要な申請手続、控除率、上限、通算のQ&Aなどを確認してください。
次に、買収スキームと時系列を踏まえ、税理士・会計士・弁護士と適用可否のスクリーニングを行いスケジュールを確定させます。

弊社Camphor Treeでもご相談を承っておりますので、まずは無料相談にてお気軽にお問い合わせください。