会社を売却したらどうなる?立場・売却方法ごとの違いを解説

会社売却を検討しているけれど、

売却後、自分の立場はどうなるんだろう?

従業員や取引先への影響は?
と、様々な不安や疑問をお持ちではありませんか? 会社売却は人生における大きな決断ですから、 売却後に何が変わり、何が変わらないのか、 しっかりと理解しておくことが重要です。
この記事では、会社売却後の変化について、 経営者、従業員、取引先など、立場別に詳しく解説します。 さらに、株式譲渡、事業譲渡、合併など、 売却方法による違いや、実際の売却事例もご紹介します。
売却後に後悔しないためのポイントや、 よくある質問にもお答えしますので、 ぜひ最後までお読みいただき、 納得のいく会社売却を実現してください。

下記の動画では、大企業に買収されたあとの会社の未来について解説されています。
会社売却後、どうなる?変わること・変わらないことを一覧表にまとめました

会社売却を考えているけど、売却したら一体何が変わるんだろう…?
そんな不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
会社売却は、経営者だけでなく従業員、取引先など、様々な関係者に影響を与える大きな決断です。売却後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、何が変わり、何が変わらないのかを事前に把握しておくことが重要です。
まずは、会社売却後に変わること・変わらないことを一覧表で確認してみましょう。
項目 | 変わること | 変わらないこと |
---|---|---|
経営者の立場 | ・完全退任する場合 ・役員として継続する場合 これらの場合、経営者の立場が変わる | ・経営者として継続する場合は変わらない |
従業員の雇用・待遇 | ・配置転換や移動することがある | ・原則、雇用は維持される ・労働条件は維持される場合が多い |
社名・ブランド | ・合併・吸収合併の場合、一般的には失われる | ・株式譲渡の場合、基本的には変わらない ・事業譲渡の場合、会社名やブランドは維持されることがある ※ただし、買い手の意向によっては変わる場合もある |
取引先との関係性 | ー | ・基本的には維持される ※良好な関係を保つには、誠意を持って対応する必要がある |
組織体制・ルール | ・株式譲渡や合併・吸収合併の場合、買い手の以降に沿って変更される ・事業譲渡の場合、譲渡事業に関わる従業員の体制は変更される可能性がある | ・事業譲渡の場合、譲渡事業に関わっていない従業員は基本的に変更はない |
上記の表はあくまで一般的な傾向です。会社売却後の変化は、売却方法、買収企業の意向、契約内容などによって大きく異なります。ここからは、立場別・売却方法別に、より詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
【立場別】会社売却後、どうなる?
会社を売却した場合、経営者、従業員、取引先など、関係者の立場によって影響は大きく異なります。ここでは、それぞれの立場に焦点を当て、売却後にどのような変化が起こるのかを具体的に解説していきます。

下記の動画では、M&A経験者が会社売却後のリアルな生活について解説しています。
1. 経営者(社長・オーナー)の場合
会社売却後の経営者(社長・オーナー)がどうなるかは、売却方法や契約内容によって大きく異なります。

下記に、会社売却後の経営者がどうなるのかについてまとめました。
【会社売却後の経営者がどうなるのか】
・完全退任
売却後、一切の経営に関与せず、完全に退任するケースです。創業者やオーナー経営者が、引退を考えている場合によく見られます。
・役員として継続
売却後も役員として会社に残り、一定期間、経営に関与するケースです。買い手企業から、経営手腕や知識・経験を活かしてほしいと要請される場合に多く見られます。
・経営者として継続
売却後も経営者として会社に留まり、引き続き経営を行うケースです。買い手企業が、経営者のリーダーシップやノウハウを高く評価している場合に多く見られます。

これらのケース別にメリット・デメリットをまとめました。
ケース | 詳細 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
完全退任 | 売却後、一切の経営に関与しない | ・自由な時間ができる ・新しいことに挑戦できる | ・会社への影響力を失う ・喪失感を感じる場合がある |
役員として継続 | 売却後も役員として経営に関与する | ・会社への影響力を維持できる ・収入を維持できる場合がある | ・引き続き責任を負う必要がある ・買い手企業の意向に従う必要がある |
経営者として継続 | 売却後も経営者として経営を行う | ・会社への影響力を維持できる ・従業員への安心感を与えられる | ・引き続き経営責任を負う必要がある ・買い手企業の意向に従う必要がある |
経営者として会社に残る場合でも、買い手企業の意向を尊重し、協力していく姿勢が重要になります。
2. 従業員の雇用・待遇はどうなる?
従業員の雇用や待遇は、会社売却において最も気になる点の一つでしょう。

下記に、従業員の雇用や待遇がどのように変化するのかについてまとめました。
会社売却後の従業員の雇用や待遇がどうなるのか
・雇用継続が原則
M&Aにおいては、従業員の雇用を維持することが一般的です。 買い手企業は、従業員の知識や経験、技術を必要としているため、雇用契約を引き継ぐことがほとんどです。
・労働条件の維持
給与、労働時間、福利厚生などの労働条件も、原則として引き継がれます。 ただし、買い手企業の制度との統合により、変更となる可能性もゼロではありません。
・配置転換・異動
事業再編や組織統合に伴い、配置転換や異動が発生する可能性があります。 新しい環境に馴染む必要があるため、従業員にとっては負担となる場合もあります。
会社売却後も安心して働くためには、売却条件について事前に確認し、不安な点は会社や買い手企業に相談することが大切です。
3. 会社の名前やブランドはどうなる?
会社の名前やブランドは、長年培ってきた信頼や実績の証です。売却後も引き継がれるのか、それとも変更されるのかは、売却方法によって異なります。

下記に、売却方法ごとに会社の名前やブランドがどのように変化するのかまとめました。
【売却方法ごとで会社の名前やブランドがどのように変化するのか】
・株式譲渡
株式譲渡の場合、会社自体は存続するため、会社名やブランドは基本的に変更されません。 取引先や顧客への影響も少なく、スムーズな事業承継が可能です。
・事業譲渡
事業譲渡の場合、事業の一部または全部を譲渡するため、会社名やブランドも譲渡されることがあります。 ただし、買い手企業の意向により、新しいブランド名に変更されることもあります。
・合併・吸収合併
合併・吸収合併の場合、会社は消滅し、買い手企業に吸収されるため、会社名やブランドは失われることが一般的です。
会社名やブランドの維持を希望する場合は、売却交渉の際に買い手企業に伝えることが重要です。
4. 取引先との関係性はどうなる?
取引先との関係性は、会社売却後の事業運営に大きな影響を与えます。取引先との関係が良好であれば、売却後の事業もスムーズに展開できるため、取引先との関係性の維持は非常に重要です。

下記に、会社売却後に取引先との関係性を維持するポイントついてまとめました。
会社売却は、取引先にとっても不安な出来事です。誠意をもって対応し、良好な関係を維持できるように努めましょう。
【売却方法別】会社売却後、どうなる?
会社売却の方法はいくつかありますが、どの方法を選ぶかによって、売却後の会社の状況は大きく変わります。ここでは、代表的な3つの売却方法(株式譲渡、事業譲渡、合併・吸収合併)について、それぞれ売却後に何がどう変わるのかを解説していきます。
1. 株式譲渡の場合:経営体制・社名など“変わらない”ことが多い
株式譲渡は、会社の株式を買い手に譲渡することで、会社を売却する方法です。中小企業のM&Aでよく活用されるケースが多く、事業の存続を実現している企業も少なくありません。
株式譲渡の場合、会社自体はそのまま存続するため、売却後も経営体制や社名、従業員の雇用条件などが大きく変わることは少ない傾向にあります。ただし、経営者は交代することが一般的です。

下記の表に、株式譲渡後の変化についてまとめました。
項目 | 株式譲渡後の変化 |
---|---|
経営体制 | 買い手側の意向が反映される(経営者は交代することが多い) |
社名 | 基本的に変わらないことが多い |
従業員の雇用・待遇 | 基本的に変わらないことが多い |
取引先との関係 | 基本的に継続されることが多い |
株式譲渡は、比較的シンプルな手続きで会社を売却できるため、中小企業のM&Aでよく利用される方法です。
2. 事業譲渡の場合:組織や人の移動が発生しやすい
事業譲渡は、会社が行っている事業の一部または全部を別の会社へ売却するM&Aスキームです。
事業譲渡の場合、譲渡する事業のみを買い手企業に移転するため、組織や人の移動が発生しやすいのが特徴です。従業員は、原則として改めて買い手企業と雇用契約を結び直す必要があります。

下記の表に、事業譲渡後の変化についてまとめました。
項目 | 事業譲渡後の変化 |
---|---|
経営体制 | 譲渡した事業に関する経営権は買い手に移る |
社名 | 譲渡した事業のブランド名などは買い手に引き継がれる場合がある |
従業員の雇用・待遇 | 譲渡した事業に従事していた従業員は、原則として買い手企業と改めて雇用契約を結ぶ |
取引先との関係 | 譲渡した事業に関する取引先との関係は、買い手に引き継がれる |
事業譲渡は、特定の事業のみを売却したい場合に有効な方法です。
3. 合併・吸収合併の場合:会社名や独立性が失われることも
合併には、複数の会社が合わさって新しい会社を設立する「新設合併」と、既存の会社が他の会社を吸収する「吸収合併」の2種類があります。会社を譲渡する際は、吸収合併の形を取ることが一般的です。
吸収合併の場合、消滅する会社の事業や資産・負債は、すべて存続会社に引き継がれます。そのため、会社名や独立性が失われることがあります。

下記の表に、合併・吸収合併後の変化についてまとめました。
項目 | 合併・吸収合併後の変化 |
---|---|
経営体制 | 存続会社の経営体制に統合される |
社名 | 消滅会社の社名はなくなる |
従業員の雇用・待遇 | 原則として、従業員の雇用は存続会社に引き継がれる |
取引先との関係 | 原則として、取引先との関係は存続会社に引き継がれる |
合併・吸収合併は、グループ企業内での組織再編や事業規模の拡大などを目的として行われることが多いです。
【実例】会社を売却した後どうなる?
会社売却後の変化は、経営者の立場や選択、売却方法によって大きく異なります。ここでは、実際に会社を売却した経営者の事例を通して、売却後の変化を見ていきましょう。
1.DHC株式会社 吉田嘉明氏→完全退任
化粧品や健康食品で有名なDHC株式会社は、2022年にオリックス株式会社によって買収されました。創業者の吉田嘉明氏は、この売却に伴い代表取締役会長を退任し、DHCの経営から完全に退きました。
この事例は、創業者が長年経営してきた会社を売却し、経営から完全にリタイアするケースです。売却益を得て、悠々自適な生活を送る、あるいは新たな事業に挑戦するなど、様々な選択肢が考えられます。

下記のニュース記事やオリックス株式会社からの発表も参考にしてください。
・ニュース記事
https://netkeizai.com/articles/detail/8005
・オリックス株式会社からの発表
https://www.orix.co.jp/grp/company/newsroom/newsrelease/pdf/230131_ORIXJ.pdf
2.アイレップ株式会社 紺野俊介氏→役員として継続
デジタルマーケティングを手掛けるアイレップ株式会社は、2016年に博報堂DYホールディングスによって買収されました。創業者の紺野俊介氏は、売却後もアイレップの役員として残り、引き続き経営に携わっています。
この事例は、売却後も経営者が会社に残り、買収側の企業と共に事業を成長させていくケースです。自身の経験や知識を活かし、より大きな組織の中で新たな挑戦をすることができます。

3. 株式会社LAUGHTECH 伊藤新之介氏→継続して経営
エンターテイメントメディア「笑うメディア クレイジー」を運営していた株式会社LAUGHTECHの伊藤新之介氏は、2013年にベクトルグループに同社を売却しました。経営者であった伊藤氏は、引き続き代表取締役CEOとして経営を続けています。
この事例は、売却後も経営者が引き続き会社の経営を担い、事業の成長を目指すケースです。買収側の企業から経営資源やノウハウの提供を受け、更なる事業拡大を目指すことができます。
これらの事例からわかるように、会社売却後の経営者の立場は、
・完全に退任する
・役員として残る
・代表として経営を続ける
など、様々なパターンがあります。売却の条件や自身の希望によって、最適な道を選択することが重要です。

この事例に関しては、下記の動画も参考にしてみてください。
会社売却後に“後悔”しないために知っておくべきこと
会社売却は、成功すれば大きな果実をもたらしますが、準備不足や認識の甘さから後悔するケースも少なくありません。ここでは、会社売却後に後悔しないために、事前に知っておくべき重要なポイントを解説します。

下記の表に、会社売却後に後悔しないための確認ポイントについてまとめました。
確認ポイント | 内容 | 後悔を防ぐ理由 |
---|---|---|
売却後の自分の役割 | 完全退任か、一定期間の経営関与かを明確にする | 売却後のトラブルや期待のズレを防げる |
社名・ブランドの継続有無 | 社名を残すのか、変更されるのか契約に明記 | 思い入れのある名称や価値を守れる |
従業員の雇用条件 | 雇用継続の有無や待遇条件を買い手と協議 | スタッフ離脱や社内混乱を防ぐ |
買い手企業の経営方針 | 成長戦略や人事方針が自社と合うか確認 | 文化のミスマッチでの後悔を防げる |
アーンアウトや対価の受け取り条件 | 分割・成果報酬の有無や内容を確認 | 売却後の収益に関する不満を回避できる |
会社売却は、経営者にとって大きな転換期となります。後悔しないためには、事前の準備や買い手との協議が重要です。上記のポイントを参考に、慎重に検討を進めていきましょう。
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会社売却後、どうなる?よくある質問をまとめました!
Q. 会社を売却したら従業員に辞められる?
A.会社売却後に従業員が辞めるかどうかは、情報開示と買い手企業の対応次第です。
譲受け企業の経営方針変更によるストレスや将来への不安から、モチベーション低下や離職が起こる可能性があります。

下記に、従業員の離職を防ぐためのポイントをまとめました。
買収側の企業文化や社風を事前にチェックし、社員との相性を考慮することが重要です。重要な人材の流出は会社の存続にも大きな影響を与えます。

下記の動画では、会社売却で社員はどうなってしまうのかについて解説されています。
Q. 会社を売却しても会社名を残すことはできる?
A.会社名を残せるかどうかは買い手企業との交渉次第です。
社名やブランド名を変更する決定権は新しい株主(買い手企業)にあるものの、交渉で維持することは可能です。

下記に、会社名が維持される主なケースをまとめました。
会社名が維持される主なケース
・長期的な利益につながると判断された場合:買い手企業が現社名維持を得策と判断するケース
・契約条件として明記する場合:最終契約書に「社名は○年間変更しない」と明記する方法
・ブランド価値が高い場合:知名度の高いブランド名や歴史ある社名
社名維持を希望する場合は、早い段階から条件として明確に伝えることが重要です。ただし、条件が厳しいほど売却価格や買い手候補が限定される可能性があります。
Q. 会社を売却したら社長の給料は下がる?
A.会社売却後の社長(元オーナー)の給料は、売却方法や契約内容によって異なります。
経営者が残る場合でも、オーナー経営者ではなくなるため、給料は買収側企業が決定し、以前より下がる傾向があります。

下記に、社長の給料の変動パターンについてまとめました。
【社長の給料の変動パターン】
・完全引退の場合
役員退職金が支払われ、定期的な給料はなくなる
・顧問として残る場合
顧問料として一定額が支払われる
・子会社社長として残る場合
親会社の方針により給料が決定される
・親会社の役員に就任する場合
親会社の役員報酬規定に従う
引継ぎ期間や役員退職金の金額は、会社売却の交渉時に決定することが多いため、事前交渉で明確にしておくことが重要です。
Q. 会社を売却したら取引先にバレる?
A.会社売却は最終的には取引先に知られますが、タイミングと伝え方が重要です。
M&A交渉中は秘密裏に進めるのが一般的で、情報漏洩は買い手企業の信頼を損ない、取引中止につながるリスクがあります。
売却確定後は、取引先への十分な説明が大切です。中小企業では前オーナーとの関係性が取引に影響するため、真摯に対応しましょう。

下記に、取引先への説明時のポイントをまとめました。
適切なコミュニケーションで取引関係を維持・強化できます。
Q. 会社を売却したら周囲からネガティブに見られる?
A.現在では、会社売却は事業承継の有効な選択肢として認知が広がっており、ネガティブな印象は払拭されつつあります。
売り手の最も多い目的は後継者問題の解決であり、これは日本の中小企業で深刻化している問題です。

下記に、会社売却が前向きに評価されるケースをまとめました
【会社売却が前向きに評価されるケース】
・後継者不在による事業承継
・会社の成長や発展のための戦略的な選択
・従業員の雇用や事業の継続性を守るための判断
・経営資源の有効活用による社会的価値の維持
売却の理由や背景を適切に説明することで理解を得られることが多く、株式譲渡で経営権を引き渡せば後継者問題の悩みから解放されるメリットもあります。状況によっては、会社と関係者全てにとって最善の決断となりえます。