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会社売却 税金

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会社を売却する際、多くの経営者様が見落としがちなのが「税金」の問題です。

売却益にかかる所得税や法人税、資産の内容によって発生する消費税、さらには自己株式取得や役員退職金に関する課税まで、売却方法やスキームによって税負担は大きく変動します。

 

実際、想定外の税金で手取り額が大幅に減ってしまうケースも少なくありませんので注意が必要です!

そこで今回の記事では、M&Aにおける税金の種類や税率、節税のポイントをさまざまなパターン別に整理しました。

これまで多数のM&A仲介を手がけてきたM&A Frontierのスタッフが、安心して売却を進めるための基礎知識をご紹介します!

目次

【金額別】会社売却する際の税金の目安をまとめました!

はじめに、売却金額にかかる税金の目安をの規模別に整理し、それぞれのパターンで想定される税負担を把握しておきましょう。

利益を確保するための会社売却で損をしないための前準備として、ぜひご活用ください。

株式譲渡の税金早見表(長期保有 & 短期保有)

株式譲渡による売却益には、保有期間によって異なる税率が適用されることがあります。

下記の早見表では、長期・短期それぞれの場合にかかる税率を一目で比較できるようまとめました。

売却金額税額(長期保有)手取り金額
(長期保有)
税額(短期保有)手取り金額
(短期保有)
1億円2,031万円7,969万円5,500万円4,500万円
2億円4,063万円15,937万円11,000万円9,000万円
3億円6,095万円23,905万円16,500万円13,500万円
5億円10,158万円39,842万円27,500万円22,500万円
10億円20,315万円79,685万円55,000万円45,000万円

事業譲渡の税金早見表

事業譲渡では、売却する側が「個人」か「法人」かによって課される税金の種類や税率が大きく異なります。

さらに、譲渡する資産の内容によっては消費税も発生するため、税負担の全体像を把握しておくことが重要です。

売却金額税額(約30%想定)手取り金額
1億円3,000万円7,000万円
2億円6,000万円14,000万円
3億円9,000万円21,000万円
5億円15,000万円35,000万円
10億円30,000万円70,000万円

資産売却の税金早見表(長期保有 & 短期保有)

会社の資産を売却した場合にも、譲渡益に対して税金が課されます。

ここで重要になるのが「保有期間」で、5年を超えて保有していた資産は長期譲渡所得として軽減税率が適用されます。

売却金額税額(長期保有)手取り金額
(長期保有)
税額(短期保有)手取り金額
(短期保有)
1億円2,031.5万円7,968.5万円3,963万円6,037万円
2億円4,063万円15,937万円7,926万円12,074万円
3億円6,094.5万円23,905.5万円11,889万円18,111万円
5億円10,157.5万円39,842.5万円19,815万円30,185万円
10億円20,315万円79,685万円39,630万円60,370万円

会社売却でかかる税金:株式譲渡の場合

会社を売却する際、株式譲渡による売却益には所得税、住民税、そして復興特別所得税が課されます

いずれも譲渡所得に対して課税されるため、売却益が大きいほど納税額も増加します

 

特に非上場企業の株式を譲渡する場合は、取得費や譲渡費用の計算が複雑になることもあるので要注意です。

▼株式譲渡にかかる主な税率

税目税率(合計)
所得税15%
住民税5%
復興特別所得税0.315%
合計20.315%
※復興特別所得税は、所得税額の2.1%が加算される形で計算されます。

 

これらの税率は上場株式・非上場株式を問わず、原則として同じです。

ただし、特定の条件下では異なる税率や控除が適用される場合もありますので、詳細は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

所得税・住民税(売却益に対する課税)

金額の目安:1,000万円〜1億円

株式を売却した際に得た利益に対して課税される。
税率:20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)

株式を売却して利益が出た場合、その利益には所得税と住民税がかかります。

所得税は15%、住民税は5%であわせて20%です。

さらに、これに復興特別所得税が加わるため実際の負担率は少し上がります

 

売却益とは、簡単に言えば「売れた金額」から「買ったときの金額」や「売却時にかかった費用」を差し引いた残りのことです。

info

たとえば株式を1,000万円で購入し、1,800万円で売却、仲介手数料などで100万円かかった場合、差し引き700万円が売却益になります。

この700万円に対して、20.315%の税金がかかることになります

 

こうした税金は、確定申告のときに申告・納付することになっています。

ただし、非上場株式は証券口座を通じた取引ではないため、税務処理がやや複雑になることもあります。

譲渡所得税(長期・短期の違い)

金額の目安:500万円〜5,000万円

売却した株式の保有期間に応じて税率が異なる。
長期譲渡所得:20.315%(5年以上保有)
短期譲渡所得:39.63%(5年未満の保有)

譲渡所得税は、株式の保有期間によって適用される税率が変わる税金です。

一般的には5年を超えて保有していた株式を売却する場合を「長期譲渡」、5年以下で売却した場合を「短期譲渡」と呼びます。

長期譲渡の場合、先に述べたように所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%で合わせて約20.315%の税率が適用されます。

一方で短期譲渡となると税率が大きく上がり、多い時で所得税が30%・住民税が9%・復興特別所得税が0.63%となることもあります

つまり、保有期間が短いほど納税額も大きくなる可能性があるということです。

非上場企業の株式売却においては長期譲渡が適用される場合がほとんどですが、過去の持株状況によって扱いが変わることもあるため、判断に迷った場合は税務の専門家に相談するのが確実です。

復興特別所得税

金額の目安:100万円〜1,000万円

所得税額の2.1%が追加で課税される。

復興特別所得税は、2011年の東日本大震災の復興財源を確保する目的で導入された税金です。

所得税に上乗せして課される仕組みで、課税対象となる所得税額の2.1%が追加されます。

info

たとえば、株式譲渡により所得税として100万円の支払いがある場合、復興特別所得税はその2.1%にあたる2万1,000円が追加で課され、合計で102万1,000円を納めることになります。

 

この税金は2037年までの時限的な措置ではありますが、2025年現在も確定申告時には忘れずに計算・納付する必要があります。

 

名称に「特別」とあるものの計算方法はそれほど複雑ではなく、申告ソフトや税務署の案内にも反映されていますので、過度に構える必要はありません。

ただし、株式譲渡益が大きい場合は、それに比例して復興特別所得税の金額も大きくなります。

売却を検討する段階では、こうした追加負担分まで含めた税額をあらかじめ把握しておくことが重要です。

【シミュレーション】株式譲渡する際の税金を計算

株式譲渡をする場合に発生する税額を、売却価格別にシミュレーションすると以下のようになります。

売却金額税額(長期保有)手取り金額
(長期保有)
税額(短期保有)手取り金額
(短期保有)
1億円20.32百万円79.69百万円39.63百万円60.37百万円
2億円40.63百万円159.37百万円79.26百万円120.74百万円
3億円60.95百万円239.06百万円118.89百万円181.11百万円
5億円101.58百万円398.43百万円198.15百万円301.85百万円
10億円203.15百万円796.85百万円396.30百万円603.70百万円

会社売却でかかる税金:事業譲渡の場合

会社の一部または全部の事業を第三者に売却する「事業譲渡」では、売却により得た利益に応じて、いくつかの税金がかかります。

事業譲渡の税務処理は、「売却側が個人か法人か」で変わってくるのがポイントです。

▼事業譲渡にかかる主な税率

税目税率(合計)
所得税(個人事業主の場合)最大45%
法人税(法人の場合)23.2%
消費税(課税対象資産の譲渡時)10%

所得税(個人事業主の場合)

金額の目安:500万円〜5億円以上

売却した事業の利益は 「事業所得」 として計上され、累進課税の対象となる。
税率:最大45%(所得金額に応じて税率が異なる)

個人事業主が自らの事業を第三者に譲渡した場合、得られた利益には「所得税」と「住民税」が課されます。

これは「譲渡所得」としてではなく「事業所得」として扱われ、給与などのほかの所得と合算して課税されます

税率は5%〜45%の累進制で、利益が大きい場合は税額も重くなります。

 

さらに、譲渡した資産の中に減価償却を行ってきた設備などが含まれている場合は、帳簿上の残存価格と実際の売却額との差額に対しても課税されることになります。

また、復興特別所得税も加算されるため、実質的な所得税率はそれぞれに2.1%上乗せされる点にも注意が必要です。

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個人の事業譲渡では、手元に残る金額が想定よりも大きく減ることになるため、譲渡のタイミングや収益の見通しに応じて早めの税務対策を考えましょう。

法人税(法人の場合)

金額の目安:500万円〜5億円以上

売却した事業に関する利益は 「譲渡所得」 として法人税の対象になる。
税率:約23.2%(法人税の標準税率)

法人が事業を譲渡する場合は、得られた譲渡益に対して法人税が発生します。

譲渡益とは、売却金額から該当資産の帳簿価額(取得費)および譲渡にかかった費用を差し引いた金額です。

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たとえば、帳簿価額500万円の設備を1,200万円で売却し、仲介手数料に100万円かかった場合譲渡益は600万円。

これが法人所得に加算され、通常23.2%(中小法人であれば15%〜19%)の法人税が課されます。

 

また、譲渡益が出た年は一時的に利益が大きくなり、翌期以降の納税額に影響することもあります。

 

法人税の中間納付が発生するケースもあるため、資金繰りには要注意です。

事業譲渡によって一度に多額の利益が計上される場合、「事業へ再投資する」「損失と相殺する」といった節税対策も視野に入れるようにしましょう。

消費税(課税対象資産の譲渡時)

金額の目安:100万円〜1億円以上

【課税対象の資産】商品、原材料、機械、車両、オフィス什器など
税率:10%(日本の場合)

譲渡する資産が消費税の課税対象であれば、その資産の取引価格に消費税が課されます。

土地や株式の譲渡は非課税ですが、事業の備品や車などは課税対象です。

 

また、2023年10月以降から適用され始めたインボイス制度により、適格請求書発行事業者に限り仕入税額控除の対象となっています。

取引相手のインボイス登録の有無も必ず確認しましょう。

消費税は資産ごとに課税・非課税の区別があるため、売却前にどの資産が対象となるかを整理し、売買契約書にも明記しておく必要があります。

【シミュレーション】事業譲渡する際の税金を計算

事業譲渡をする場合に発生する税額を、売却価格別にシミュレーションすると以下のようになります。

売却金額税額(事業譲渡)手取り金額(事業譲渡)
1億円45.00百万円55.00百万円
2億円90.00百万円110.00百万円
3億円135.00百万円165.00百万円
5億円225.00百万円275.00百万円
10億円450.00百万円550.00百万円

会社売却でかかる税金:資産売却の場合

資産売却とは、会社そのものではなく保有している個別の資産(不動産、設備、機械、車両など)を売却する取引を指します。

事業譲渡や株式譲渡と異なり、対象があくまで「資産単体」である点が特徴です。

 

▼資産売却にかかる主な税率

税目税率(合計)
譲渡所得税長期譲渡所得: 20.315%
短期譲渡所得: 39.63%
消費税10%

譲渡所得税(長期保有・短期保有で異なる)

金額の目安:500万円〜10億円以上

売却した株式の保有期間に応じて税率が異なる。
長期譲渡所得:20.315%(5年以上保有)
短期譲渡所得:39.63%(5年未満の保有)

資産を売却した場合、売却によって得た金額から取得費や譲渡にかかった費用を差し引いた「譲渡益」に対して譲渡所得税が発生します。

ただし、どのくらいの税率が適用されるかは、その資産をどのくらいの期間保有していたかによって変わります。

 

一般的に、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えて保有していた資産は「長期譲渡所得」として扱われ、所得税15%・住民税5%・復興特別所得税を含めて合計約20.315%が課されます。

一方で、譲渡した土地や建物などの所有期間が5年以下であれば「短期譲渡所得」として、所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%の合計39.63%が適用されます。

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たとえば、不動産を3,000万円で売却し、取得費や諸費用を差し引いた譲渡益が1,000万円だった場合、短期譲渡であれば約396万円、長期譲渡なら約203万円の税負担が発生する計算です。

 

税額に大きな差が出るため、売却タイミングの調整はとても重要です。

長期保有に切り替わる時期を見極めて売却するだけで、最終的な手取りが大きく変わる可能性もあります。

消費税(課税対象資産の売却時)

金額の目安:100万円〜1億円以上

【課税対象の資産】機械設備、棚卸資産、事務用備品、車両など
税率:10%(日本の場合)

土地や有価証券、株式などは例外ですが、機械設備、棚卸資産、事務用備品、車両などを売却する場合は売却価格に対して消費税が上乗せされます。

ご存じの通り、消費税は国に納付する義務がありますので、課税・非課税の区別は契約時にしっかり確認しておきましょう。

 

なお、2023年10月に始まったインボイス制度の影響により、売り手が適格請求書発行事業者でない場合、買い手は仕入税額控除が使えません

 

売り手にとって商談の不利につながる可能性があるため、インボイスの登録状況も重要なチェックポイントになります。

また、設備売却などの際には「売却資産に消費税がかかるかどうか」を事前に明確にしておく必要があります。

【シミュレーション】資産売却する際の税金を計算

実際に資産売却をすることになった場合、どれくらいの税額が発生するのかをシミュレーションしたものがこちらです。

売却金額税額(長期保有)手取り金額
(長期保有)
税額(短期保有)手取り金額
(短期保有)
1億円20.32百万円79.69百万円39.63百万円60.37百万円
2億円40.63百万円159.37百万円79.26百万円120.74百万円
3億円60.95百万円239.06百万円118.89百万円181.11百万円
5億円101.58百万円398.43百万円198.15百万円301.85百万円
10億円203.15百万円796.85百万円396.30百万円603.70百万円

【注意】自己株式を買い取る場合に発生する税金について

会社が自社の株式を買い戻す場合、株主にとっては株式を手放す行為にあたります。

一見すると単純な取引のように思えますが、この売却に対してどのような税金が課されるかは、買い戻し後の会社の対応や株主の属性によって変わります

特に配当所得として処理された場合、累進課税によって高額な税率が適用されることもあるため注意が必要です。

ここからは、個人株主・法人株主それぞれの立場における課税の扱いを整理しておきましょう。

個人株主の場合

個人株主が会社に対して自己株式を売却する場合、以下の2つのケースに分類されます。

1. 譲渡所得として扱われるケース

会社法に基づいて個人株主が会社の自己株式取得に応じた場合、基本的には「譲渡所得」として利益に課税されます。

この場合の税率は以下のとおりです。

  • 長期保有(5年以上):20.315%(所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%)
  • 短期保有(5年未満):39.63%(所得税30% + 住民税9% + 復興特別所得税0.63%)
  • 例: 1億円分の株式を長期保有で売却した場合 → 税額は1億円 × 20.315% = 2,031.5万円

譲渡所得扱いとなるかどうかの判断には、会社側の自己株式の取得目的や処理方法も影響します。

たとえば買い戻した株式を直ちに消却する意図がある場合、譲渡所得としての処理が認められやすくなります。

2. 配当所得として扱われるケース

一方、特定の株主(オーナー経営者など)が会社に株式を売却する場合は税務上「配当所得」として扱われる可能性があります。

配当所得になると総合課税の対象となり、所得金額に応じて最大で45%の税率が適用されるため、譲渡所得と比べて税負担が大きくなるので要注意です。

ただし、配当控除を適用すれば負担を軽減できる場合もあります。

控除を適用できるかどうかの判断については、税理士や会計士などの専門家に相談するのが確実です。

法人株主の場合

法人が自己株式を売却する場合、個人株主とは異なる税務処理が適用されます。

1. 譲渡所得として扱われるケース

法人が保有している株式を売却し、会社がそれを自己株式として取得する場合、原則として譲渡益は法人の課税所得として扱われます。

つまり、譲渡価格と帳簿上の取得価額との差額(売却益)に対して法人税が課されることになります。

法人税率は資本金の額や所得金額によって異なりますが、中小企業であれば15%、大企業であれば23.2%程度が目安となります。

 

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譲渡益は事業年度の利益にも影響するため、タイミング次第で法人税の負担がかなり変わってきます。

譲渡時期を調整したり、繰延資産を活用したりして、会計・税務上の戦略を事前に検討しておきましょう。

計上方法によっては課税の繰り延べが可能な場合もあるため、慎重な判断が求められます。

2. 配当所得として扱われるケース

ごく一部のケースではありますが、取引の性質によっては配当所得とみなされる場合もあります。

グループ企業間での取引や特定の要件を満たした場合には、受取配当等の益金不算入制度の対象となるため、全額または一部を課税所得から除外することも可能です。

ただし、この不算入の割合は株式の保有比率や持ち株期間などによって異なるため、一律には判断できません。

 

たとえば、完全子会社からの配当であれば100%不算入となることもありますが、保有比率が25%未満の場合は50%のみが除外されるにとどまります。

また、自己株式取得の背景に特別な関係性があると判断された場合には、税務当局から目をつけられるリスクもあります。

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会社法上は正当な取引であっても、税務上の視点では異なる評価がなされることもあるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に手続きを進めるようにしましょう。

【節税対策】会社売却の際にかかる税金を抑える方法はある?

アーンアウト契約を活用する

アーンアウト契約は、会社売却時に一部の対価を売却後の業績に連動させる方式です。

たとえば、売却時に全額を受け取るのではなく、初年度は半額を受け取り、残りは今後2〜3年の売上や利益に応じて受け取るという流れになります。

この方法を使うことで受け取る金額を分割し、課税対象となる所得を複数年度に分散させられます

ただし、追加対価の受け取りが将来の業績に左右されるため、確実性には乏しいという懸念点もあります。

また、アーンアウト契約を採ると契約書の内容や税務上の取り扱いが通常よりも複雑になるため、必ず専門家の確認のもとで進めるようにしましょう。

繰延べ制度を利用する

会社の売却にあたって、組織再編などを通じて課税を一時的に繰り延べる制度もあります。

たとえば、会社分割や合併といった形をとり、一定の条件を満たすことで売却によって生じた譲渡益に対する税金の納付を将来に先送りできるケースです。

繰延べの期間中は資金繰りに余裕ができるので、新たな投資や事業展開のチャンスも広がります。

 

ただし、この制度は本来税金対策のためのものではなく、企業再編を通じて事業承継や市場の活性化を後押しすることを目的としています

そのため、細かな条件をクリアしないと適用されません。

誤って適用すると思わぬ追徴課税を受ける可能性もゼロではないので、国税庁の指針や判例に沿って正確に手続きを行うのが必須です。

▶国税庁のホームページでは、グループ法人税制で繰り延べた譲渡利益の戻入の要否も公開されています。

特定事業用資産の買い替え特例を活用する

中小企業の経営者が保有する土地や建物などを売却し、新たに事業用資産を取得した場合、一定の条件下で譲渡益にかかる税金の支払いを猶予できる制度が「特定事業用資産の買い替え特例」です。

たとえば、自社ビルを売却し、その資金で別の事業用地を取得した場合、元の資産の譲渡益については課税を将来に繰り延べることができます。

▼買い替え特例によって繰り延べできる税率

引用:国税庁ホームページ No.3405事業用の資産を買い換えたときの特例
引用:国税庁ホームページ No.3405事業用の資産を買い換えたときの特例
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ただし、対象となる資産の範囲や買い替えの期間、用途などに厳密な要件が設けられており、条件を満たさなければ制度を利用できません。

特定事業用資産の買い替え特例を検討している方は、少しでも早い段階から専門家に相談し、計画的に準備を進めるようにしてください。

役員退職金(役員退職慰労金)を活用する

会社売却を機に役員が経営から退く場合は、役員退職金(役員退職慰労金)を活用することで、譲渡益とは別枠で資金を得ることができます。

役員退職金は「退職所得」として扱われるので他の所得と比べて税率が低く、さらに退職所得控除も適用されるため、実質的な納税額を大きく抑えられるのがメリットです。

たとえば勤続年数が20年を超える役員であれば、退職金の半分が課税対象となる「1/2課税」が認められ、退職金は会社の損金としても計上できるようになります。

ただし、相場から大きく逸脱すると税務署から金額の妥当性を問われたり、否認されたりするリスクもあるため支給額の設定には注意が必要です。

第三者割当増資により支配権のみを移転する

会社の売却=株式の譲渡と考えがちですが、株式を売らずに「第三者割当増資」によって経営権を移転する方法もあります。

第三者割当増資では、新たな株式を買い手側に発行し、資本を注入してもらうことで過半数以上の議決権を取得させます。

こうすることで売却側は既存株式を保有したまま、実質的な経営のコントロール権を買い手に引き継げます

 

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この方法の最大のメリットは、株式譲渡によるキャピタルゲイン課税が発生しないこと、つまり税金を抑えながら資本提携を実現できる点です。

また、買い手にとっても会社に直接出資する形になるため成長投資につながります。

 

一方で、もちろんデメリットもあります。第三者割当増資では売り手に資金が残らないため、「売却益がほしい」という目的で売却をする場合には使えません

また、契約内容を慎重に設計しないと将来的に経営権の扱いや配当方針を巡ってトラブルになることもあるため、法的・税務的な観点からしっかりと体制を整える必要があります。

買い手側から需要のある資産だけを売却する

会社全体を売却するのではなく、買い手が強く関心を持っている特定の資産だけを切り出して売却する方法も、節税策としては有効です。

たとえば、知的財産やブランド、特定の事業部門、不動産といった「価値のある一部」に限定して売却することで、譲渡益を必要最小限に留められます。

需要のある部分だけにフォーカスすることで、税額も含めたトータルの負担をコントロールしやすくなるうえに、経営の運営権を一定レベル残せるという点でもメリットがあります。

 

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ただし、資産売却では消費税の課税対象になるケースがあるほか、簿価との差額による譲渡益がそのまま課税対象になるため注意が必要です。

売却する資産の種類や金額、相手先の事情などを総合的に見て判断しなければなりません。

事前のシミュレーションと、買い手との入念な調整が成否を分けるポイントになるでしょう。

専門家のサポートを受ける

ここまで見てきた通り、会社を売却するにはさまざまな税目が発生します。

譲渡益にかかる所得税・法人税・住民税だけでなく、消費税や登録免許税など、各種の税負担を漏れなく把握しておく必要があります。

▼会社売却で苦労するポイント

  • 譲渡契約の設計次第で、税額が何百万円も変わる
  • 税額を抑えるために契約のタイミングや分割受領の調整をする
  • アーンアウトや繰延制度などに向けて準備を進める
  • 万が一、税務調査になった場合でも対応できる書類作成や帳簿管理をしておく

正直なところ、専門知識に疎い人だけで判断したり、一つひとつ調べながら手続きを進めるのはおすすめしません。

売却に際して少しでも分からないことがある場合は、多少のコストを払ってでも税理士・公認会計士・M&Aアドバイザーなどの専門家の力を頼りましょう。

経営者を長く続けていても、M&Aはそう何度も経験することではありません。

事業承継や資産形成、将来の相続まで見据えたアドバイスをもらったほうが、より確実に節税を狙えます。

会社売却の際にかかる税金を抑えたい方は「MA Frontier」にご相談ください!

売却益に対する所得税や法人税、さらには消費税まで、想定外の出費に悩まされるケースは少なくありません。

弊社MA Frontierでは、税金に関するお悩みに寄り添い、最適な節税スキームをご提案するための専門家が多数在籍しております!

MA Frontier

税理士・弁護士・会計士などが在籍しており、役員退職金の活用や株式譲渡のタイミング調整といった具体的な節税対策もサポート。

スタートアップや中小などの規模を問わず、法務・財務・税務の各側面からバックアップいたします。

さらに、報酬は売却後のキャッシュから支払える仕組みのため、手元資金に余裕がない方でも安心してご依頼いただけます!

M&Aの流れ

さらに、弁護士や公認会計士などが財務面でのリスクをしっかりと検証するため、M&A取引に必要な各種書式や契約書の準備も円滑に進めていただけます

この他にも、以下のようにさまざまなご依頼を承っておりますので、まずは無料相談にてお気軽にご相談ください。

M&A Frontierで対応しているサービス

候補先企業の探索・選定
株式譲渡・事業譲渡などのスキームに関するご提案
各種書式・契約書の準備
・株式価値の無料算定
・デューデリジェンスのサポート
・伴走型コンサルティング
(企業の状況や成長戦略に関する知見の提供)

会社売却の税金に関するよくある質問

最後に、会社売却に関わる税金についての要チェックポイントをQ&A式でまとめました!

Q.会社売却時の税金は確定申告でどう申告する?

会社を売却した場合、売却で得た利益は「譲渡所得」として確定申告の対象になります。個人事業主やオーナー経営者の場合、株式譲渡益は「申告分離課税」として扱われ、給与など他の所得と分けて税率約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)で課税されます。

確定申告の際には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」などを利用して、以下の書類を用意・提出する必要があります。

  • 確定申告書B(第二表も含む)
  • 株式等に関する譲渡所得等の明細書
  • 売買契約書の写し
  • 株式の取得費や仲介手数料の領収書(控除のため)

売却した年の翌年、通常は3月15日までに提出と納税が必要です。取得費が不明な場合は、売却額の5%を概算取得費とすることもできますが、その分譲渡益が多くなり、税負担が増える点には注意しましょう。

Q.会社売却で発生する税金を0にする方法はある?

結論から言えば、合法的に税金を「完全に0円にする」のは困難ですが、一定の条件を満たせば「課税の繰り延べ」や「軽減」は可能です。以下に代表的な方法を紹介します。

節税につながる代表的な手法

節税方法概要
特定事業用資産の買換え特例事業用資産を売却し、新たな資産を購入する場合、譲渡益の課税を繰り延べ可能
退職所得控除+1/2課税売却益の一部を役員退職金として受け取ることで、退職所得扱いとなり課税が軽減
繰延べ措置付きの組織再編スキーム会社分割や合併などを活用し、課税時期を遅らせる

これらはすべて税法上の要件を満たす必要があります。条件を満たしていないと節税どころか追徴課税のリスクもあるため、税理士の助言を得てから実施するのが賢明です。

Q.会社売却でかかる税金を後から支払うことはできる?

原則として、売却益にかかる税金は、確定申告期限(翌年3月15日)までに一括納付する必要があります。ただし、どうしても資金繰りの都合で納付が難しい場合には、税務署に「納税の猶予」や「延納」を申請することが可能です。

制度内容
延納一定額の納付が困難な場合、税務署に申請して納税期限を延ばすことができる
分納納税を複数回に分けて支払う制度。利子税(年1.6%程度)が発生する場合あり
納税猶予制度自然災害や病気など特別な事情がある場合に、納税を一時的に猶予される

申請には「納税の猶予申請書」などの書類が必要です。また、猶予期間中でも延滞税や利子税が発生する可能性があるため、早めの対応が肝心です。資金繰りに不安がある場合は、税務署や専門家に相談しながら早期に対策を講じましょう。

Q.M&A仲介会社に支払った費用は経費として認められる?

以下のような株式売却に直接関係する費用であれば、M&A仲介会社に支払った手数料も「譲渡費用」として控除できます。

  • 仲介会社への成功報酬
  • デューデリジェンス(DD)費用
  • 弁護士・税理士報酬(売却支援に関するもの)
  • 登録免許税や登記費用
  • 売却に伴う事務手数料

ただし、売却と直接関係ないコンサル料交渉と無関係な支出は譲渡費用と認められない可能性があります。

領収書や契約書など、支出の内容が明確にわかる資料をきちんと保存しておくようにしましょう。

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