会社売却の従業員への影響は?雇用の継続や賃金の変化について解説!従業員からよくある質問も記載しています。


「会社を売却することになったけど、 従業員の雇用や待遇はどうなるんだろう…」
会社売却は、経営者にとって大きな決断ですが、 従業員にとっては将来への不安を感じる出来事でもあります。
この記事では、会社売却が従業員の雇用、賃金、 勤務地などに与える影響について詳しく解説します。 さらに、売却方法別に従業員の処遇がどう変わるのか、 雇用を守りながら売却するためのポイント、 従業員への伝え方、よくある質問への回答まで、 網羅的にご紹介します。
会社売却を検討している経営者の方、 売却によって不安を感じている従業員の方にとって、 この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

下記の動画では、「会社売却で社員がどうなるのか」について詳しく解説されています。

従業員の“雇用・待遇”はどうなる?会社売却後の変化を解説
会社売却によって、従業員の雇用や待遇がどうなるのかは、従業員にとって最も気になる点の一つでしょう。ここでは、会社売却後の従業員に起こりうる変化について、詳しく解説していきます。

下記の表に、会社売却後の従業員に起こりうる変化やそれぞれの注意点についてまとめました。
項目 | 会社売却後の変化 | 注意点 |
---|---|---|
雇用 | 原則として継続 | 事業譲渡の場合は再契約が必要な場合がある |
賃金 | すぐに下がる可能性は低い | 長期的に見ると、制度変更や業績悪化により変動の可能性あり |
勤務地・就業形態 | 変更の可能性あり | 事前に十分な説明と合意形成が必要 |
昇進・評価制度 | 買い手企業の制度に移行 | 新しい評価基準に馴染めない場合、上司や人事担当者と話し合う |
社会保険・福利厚生 | 買い手企業の制度に準拠 | 変更内容を事前に確認する |
雇用は継続される?
会社売却後も、原則として従業員の雇用は継続されるケースが多いです。買い手企業は、既存の従業員の知識や経験、技術力を評価して買収に至ることも少なくありません。そのため、従業員の雇用を維持することは、買い手企業にとってもメリットがあるのです。
ただし、売却方法や買い手企業の経営戦略によっては、人員削減が行われる可能性もゼロではありません。特に、事業譲渡の場合には、買い手企業が従業員を新たに雇用し直す必要があるため、雇用条件が変わることもあります。
賃金は下がる?
賃金については、会社売却後すぐに大幅に下がるということは一般的には考えにくいでしょう。 買い手企業は、従業員のモチベーションを維持するためにも、賃金を急激に変更することは避ける傾向にあります。
しかし、長期的に見ると、賃金制度や評価制度の見直しが行われ、結果的に賃金が変動する可能性はあります。また、業績が悪化した場合などには、賃下げが行われることもあり得るでしょう。
勤務地や就業形態は変更されるの?
勤務地や就業形態も、会社売却後すぐに変更されるとは限りません。

ただし、買い手企業の事業戦略によっては、以下のような変更が起こる可能性があります。
起こりうる勤務地や就業形態の変化
・勤務地の変更: 支店や営業所の統廃合により、勤務地が変更になる
・就業形態の変更: 契約社員から正社員への転換、またはその逆
・転勤: グループ会社への転勤
これらの変更は、従業員のキャリアプランに大きな影響を与える可能性があるため、事前に十分な説明と合意形成が必要です。
昇進・評価制度への影響はある?
会社売却後、昇進や評価制度は、買い手企業の制度に移行することが一般的です。そのため、これまでとは異なる評価基準が用いられる可能性があります。
新しい評価制度に馴染めない、または自分の能力が正当に評価されないと感じる従業員もいるかもしれません。そのような場合は、上司や人事担当者とよく話し合い、理解を深めることが大切です。
社会保険・福利厚生は廃止される?
社会保険や福利厚生についても、買い手企業の制度に準拠することになります。そのため、これまで利用できていた制度が廃止されたり、内容が変更になったりする可能性があります。

例えば、以下のようなケースが考えられます。
起こりうる社会保険や福利厚生の変化
・社会保険: 加入する健康保険組合や厚生年金基金が変わる
・福利厚生: 社宅、社員食堂、レクリエーション施設の利用条件が変わる、または利用できなくなる
社会保険や福利厚生は、従業員の生活に直接影響を与えるため、変更内容については事前にしっかりと確認しておく必要があります。

下記の動画では、会社売却後の社員の待遇について詳しく解説されています。
会社売却のあと、従業員はどうなる?売却方法別に分けて解説!

会社売却の方法によって、従業員の処遇は大きく変わります。
ここでは、代表的な売却方法である「株式譲渡」「事業譲渡」「清算・廃業」の3つのケースについて、従業員がどうなるのかを解説します。
株式譲渡の場合:基本的に雇用はそのまま引き継がれる
株式譲渡は、会社の株式を買い手企業に譲渡するM&Aの手法です。この場合、会社自体は存続し経営者が変わるだけなので、従業員との雇用契約は原則としてそのまま引き継がれます。

下記の表に、株式譲渡のおける「給与」「待遇」「勤務地」「業務内容」の変化についてまとめました。
項目 | 株式譲渡における変化 |
---|---|
給与 | 基本的に変更はない |
待遇 | 福利厚生なども含め、現状維持されることが多い |
勤務地 | 変更はない |
業務内容 | 基本的に変更はない |
ただし、買い手企業の方針によっては、将来的に組織再編や人事制度の変更が行われる可能性もゼロではありません。
事業譲渡の場合:一度雇用契約を終了し、再契約が必要
事業譲渡は、会社が持つ事業の一部または全部を買い手企業に譲渡するM&Aの手法です。この場合、従業員は原則として売却側の会社を退職し、買い手企業と改めて雇用契約を結び直す必要があります。
そのため、給与や待遇、勤務地、業務内容などは再契約時に変更される可能性があります。

事業譲渡の場合、従業員は以下の選択肢を取ることができます。
選択肢 | 詳細 |
---|---|
買い手企業と再契約する | 給与や待遇などの条件を確認し、合意すれば再契約となる。ただし、条件が合わない場合は、再契約を拒否することも可能。 |
売却側の会社に残る | 譲渡されなかった事業部門などに異動となる可能性がある。ただし、売却側の会社自体が清算・廃業となる場合は、退職となる。 |
退職する | 再契約を希望しない場合や、売却側の会社に残る道がない場合は、退職することになる。 |
事業譲渡では、従業員は再契約の条件をしっかりと確認し、納得できる条件で働くか、それとも別の道を選ぶかを慎重に判断する必要があります。もし、転籍先の給与や待遇に納得がいかない場合は、雇用が維持されないこともあります。
清算・廃業の場合:従業員は解雇・退職となるケースが多い
会社を清算・廃業する場合、会社自体が消滅するため、従業員は解雇または退職となります。 この場合、会社は従業員に対して解雇予告手当や退職金を支払う義務が生じます。

解雇予告手当や退職金の支払い義務は、法律や雇用契約の内容によって変わります。
従業員にとっては最も厳しい結果となる可能性が高いですが、会社都合による解雇となるため、失業保険の給付など、一定の保護を受けることができます。
従業員の雇用を守りながら会社を売却するポイント
会社売却は、従業員の将来を左右する大きな出来事です。できる限り、従業員の雇用と安定を守りながら売却を進めたいと考える経営者の方も多いのではないでしょうか。
ここでは、従業員の雇用を守りながら会社を売却するための重要なポイントを解説します。
雇用維持を優先する買い手企業を見極める
会社売却において、買い手企業がどのような方針を持っているかは非常に重要です。買い手企業の中には、事業拡大やシナジー効果を目的としており、従業員の雇用維持を積極的に考えている企業も存在します。
M&A仲介会社などを活用し、過去の事例や実績などを参考にしながら、従業員の雇用維持に理解のある企業を選びましょう。

具体的には、以下のポイントに注目して買い手企業を見極めることが重要です。
雇用条件を合意書や譲渡契約書に記載する
買い手企業との間で、従業員の雇用条件(雇用形態、給与、勤務地など)について合意した内容は、必ず合意書や譲渡契約書に明記しましょう。
口約束だけでは、後々トラブルになる可能性があります。書面に残すことで、買い手企業も雇用条件を遵守する意識が高まり、従業員の不安を軽減することにも繋がります。

下記の表に、記載する必要がある内容をまとめました。
記載する項目 | 詳細 |
---|---|
雇用契約の承継 | 従業員の雇用契約を、買い手企業がそのまま承継すること。 |
雇用条件の維持 | 給与、勤務地、役職などの雇用条件を、一定期間維持すること。 |
退職金の取り扱い | 従業員の退職金を、どのように取り扱うか。 |
解雇に関する条件 | 従業員を解雇する場合の条件(正当な理由、解雇予告期間など)。 |
M&A仲介会社に“従業員配慮”を伝えておく
M&A仲介会社は、買い手企業を探すだけでなく、条件交渉のサポートも行います。そのため、M&A仲介会社に、従業員の雇用維持や待遇改善を希望する旨を明確に伝えておくことが重要です。
M&A仲介会社は、あなたの意向を理解した上で、最適な買い手企業を探し、条件交渉を進めてくれるでしょう。

M&A仲介会社を選ぶ際には、以下のポイントを確認しておくと良いでしょう。
これらのポイントを踏まえ、従業員の雇用を守りながら、円滑な会社売却を目指しましょう。
会社売却を従業員に「いつ」「どうやって」伝えるべきか?
会社売却は、従業員にとって大きな転換期です。だからこそ、経営者は従業員への伝え方を慎重に検討する必要があります。

伝えるタイミングや伝え方を間違えると、従業員の不安を煽り、会社の雰囲気を悪くしてしまう可能性も…。
ここでは、会社売却を従業員に伝える際の重要なポイントを解説します。

下記の動画では、想定外に従業員にM&Aの進行がバレてしまった場合の対処法について解説されています。
伝えるタイミングの目安(交渉段階 vs 成約後)
会社売却の情報を従業員に伝えるタイミングは、大きく分けて「交渉段階」と「成約後」の2つがあります。
一般的には、「成約後」に伝えるのがおすすめです。なぜなら、交渉段階で情報が漏れてしまうと、従業員の間に憶測や不安が広がり、業務に支障をきたす可能性があるからです。
ただし、キーマンとなる従業員(経営幹部など)には、買い手企業側からの要請に基づき、契約締結前のデューデリジェンスの段階などで説明する場合もあります。

下記の表に、それぞれのタイミングで伝えるメリット・デメリットをまとめました。
タイミング | メリット | デメリット |
---|---|---|
交渉段階 | キーマンとなる従業員の協力を得やすい 従業員の意見を売却条件に反映できる可能性 | 情報漏洩のリスク 従業員の不安や混乱を招く可能性 売却交渉が破談になった場合の影響が大きい |
成約後 | 情報統制がしやすい 従業員の混乱を最小限に抑えられる | 従業員への説明が後手に回る可能性 従業員の不信感を招く可能性 |
いずれのタイミングを選ぶにしても、従業員への丁寧な説明と、不安を解消するためのフォローが不可欠です。
伝え方のポイント(信頼関係・不安の払拭)

会社売却の情報を伝える際は、従業員との信頼関係を損なわないように、以下のポイントを意識しましょう。
これらのポイントを意識することで、従業員の不安を軽減し、会社売却に対する理解と協力を得やすくなります。
伝える順番|幹部・現場・パート社員などの対応の違い
会社売却の情報を伝える順番も重要です。

一般的には、以下の順番で伝えるのが望ましいでしょう。
会社売却の情報を伝える順番
1.経営幹部
事前に個別に説明し、理解と協力を求めましょう。
2.部門長・管理職
経営幹部から説明を受け、現場への伝達方法やフォロー体制について話し合いましょう。
3.正社員
部門長・管理職から、全体会議や個別面談で説明しましょう。
4.パート・アルバイト
正社員と同様に、全体会議や個別面談で説明しましょう。
重要なのは、「上から下へ」情報を伝達することです。経営幹部から現場の従業員へ、段階的に情報を伝えることで、情報の歪みや誤解を防ぎ、スムーズな情報伝達を実現できます。
また、従業員の雇用形態や役割によって、伝え方やフォローの仕方を調整することも大切です。例えば、パート・アルバイトの方には、雇用に関する不安を解消するために、より丁寧に説明する必要があるでしょう。
会社売却は、従業員にとって大きな変化です。経営者は、従業員の気持ちに寄り添い、丁寧な情報伝達とフォローを行うことで、円滑な会社売却を実現しましょう。
会社売却を伝えたあと、従業員に聞かれる質問&ベストな返し方集
会社売却を従業員に伝えた後、彼らは様々な疑問や不安を抱えることでしょう。ここでは、従業員からよく聞かれる質問とその回答例をまとめました。
これらの質問に真摯に答えることで、従業員の不安を軽減し、スムーズな引き継ぎにつなげることができます。

下記の表に、各質問とその回答例、ポイントについて一覧としてまとめました。
質問 | 回答例 | ポイント |
---|---|---|
私たちの雇用はどうなりますか? | 「皆さんの雇用は、基本的に継続される予定です。」 | ・雇用継続を明言することで不安を和らげる ・「引き継がれる予定」など確定しすぎない表現で慎重に ・「譲渡先とも話している」と伝えると信頼感が増す |
給料や待遇は変わるんですか? | 「給料や待遇については、現在買い手企業と協議中です。」 | ・「大きく変わらないこと」「社員にとって不利益にならないこと」を先に強調 ・変更の可能性には正直に触れることで誠実さを伝える |
新しい会社の方針や文化に馴染めるか心配です | 「新しい会社は、従業員を大切にする文化を持っています。」 | ・「尊重する」「ゆっくり慣れる」など安心ワードを活用 ・売却=即変化ではないと伝えることで心理的負担を減らす |
私たちにメリットはあるんですか? | 「今回の売却によって、キャリアアップや給料アップにつながる可能性もあります。」 | ・売却=ネガティブだけでなく、ポジティブな変化があることを伝える ・個人の未来像にフォーカスした言い方が有効 |
会社がなくなるってことですか? | 「会社がなくなるわけではありません。新しい体制で事業を継続していきます。」 | ・「会社=終わり」ではないことを強調 ・“場所”と“仕事内容”を具体的に言うと安心感が高まる |

下記の動画では、社員から「会社を売るんですか?」と聞かれた場合の対処法について解説されています。
Q.私たちの雇用はどうなりますか?
これが従業員が最も気になる点でしょう。雇用が継続されるかどうか、具体的な条件はどうなるのか、明確に伝える必要があります。
回答例と回答のポイント
回答例
「会社の売却にともなっても、皆さんの雇用契約や待遇は基本的にそのまま引き継がれる予定です。実際に譲渡先とも、雇用を守る方針で話を進めています。」
回答のポイント
・雇用継続を明言することで不安を和らげる
・「引き継がれる予定」など確定しすぎない表現で慎重に伝える
・「譲渡先とも話している」と伝えると信頼感が増す
Q.給料や待遇は変わるんですか?
雇用と並んで、給料や待遇の変化も従業員の大きな関心事です。
回答例と回答のポイント
回答例
「基本的な給与体系や福利厚生については現状維持の方向で進んでいます。もし変更があっても、皆さんにとってマイナスにならないよう配慮しています。」
回答のポイント
・「大きく変わらないこと」「社員にとって不利益にならないこと」を先に強調する
・変更の可能性には正直に触れることで誠実さを伝える
Q.新しい会社の方針や文化に馴染めるか心配です
会社売却は、従業員にとって働く環境が大きく変わることを意味します。新しい会社の方針や文化に馴染めるかどうか、不安に感じるのは当然です。
回答例と回答のポイント
回答例
「買い手企業は、現在の社風や働き方を尊重する方針です。また、引き継ぎ期間も設ける予定なので、ゆっくり慣れてもらえる環境づくりをしています。」
回答のポイント
・「尊重する」「ゆっくり慣れる」など安心ワードを活用する
・売却=即変化ではないと伝えることで心理的負担を減らす
Q.私たちにメリットはあるんですか?
会社売却は、従業員にとって必ずしもネガティブな出来事ではありません。売却によって、従業員にどのようなメリットがあるのかを伝えることが重要です。
回答例と回答のポイント
回答例
「新しい会社のネットワークや資本力を活かして、今よりも大きな仕事に関われるチャンスが増えます。成長やキャリアアップの可能性が広がると思っています。」
回答のポイント
・売却=ネガティブだけでなく、ポジティブな変化があることを伝える
・個人の未来像にフォーカスした言い方が有効
Q.会社がなくなるってことですか?
会社売却=会社がなくなる、と誤解している従業員もいるかもしれません。会社がどうなるのか、正確に伝える必要があります。
回答例と回答のポイント
回答例
「会社の“名前”や“株主”が変わるだけで、皆さんが働く場所・仕事内容は継続します。突然の閉鎖や大量解雇といったことではありません。」
回答のポイント
・「会社=終わり」ではないことを強調する
・“場所”と“仕事内容”を具体的に言うと安心感が高まる

最後に…仲介を挟むことなくM&Aを実施することで、下記のようなリスクが発生する可能性があります。


このようなリスクや不安を少しでも解消したいとお考えの方は、お気軽に弊社の無料相談をご利用ください。
