M&Aデューデリジェンスのチェックリスト|分野別に確認すべき項目を徹底解説
M&Aを進めるうえで欠かせないのが「デューデリジェンス(DD)」です。
とはいえ、法務・財務・ビジネスなど確認すべき項目が幅広く、「どこまでチェックすればいいの?」「抜け漏れがないか不安…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、M&Aのデューデリジェンスで活用できる分野別チェックリストをわかりやすく整理しました。実務で見落としがちなポイントや、買い手・売り手それぞれが押さえておきたい注意点についても詳しく解説しています。
「まず何から確認すればいいか知りたい」「そのまま使えるチェックリストが欲しい」という方に向けて、必要な情報をコンパクトにまとめた内容になっています。
M&Aをスムーズに進めたい方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
【財務面】デューデリジェンスのチェックリスト
財務デューデリジェンスでは、対象企業の過去・現在・将来にわたる収益力や財務リスクを数字で把握することが目的です。
特に注意したいのが、粉飾や簿外債務の有無、収益の持続可能性、キャッシュフローの安定性といった点。これらは買収価格や最終的な契約条件に直結するため、慎重に確認する必要があります。
ここでは、財務DDで必ずチェックしておきたい主要ポイントを分野別に整理していきます。
財務諸表(過去3〜5年)の整合性と会計方針の確認
まず取り組むべきなのは、過去3〜5年分の財務諸表(BS/PL/CF)を並べて比較し、数字の整合性をチェックすることです。
特に注目すべきポイントは以下の通りです。
- 会計方針が年度の途中で変更されていないか
- 売上認識基準は適切か(検収基準・出荷基準など)
- 過年度修正や特別損益の扱いに不自然な点がないか
- 税務申告書との整合性がとれているか
会計処理に問題があると、売上や利益が実態より過大に見えていたり、資産評価が不相応に高くなっているケースもあります。こうしたリスクは買収後に顕在化することが多いため、この段階でしっかり見極めておきましょう。
売上構成・収益性・主要取引先の分析
次に重要なのが、売上の「中身」にまで踏み込んだ分析です。
単純に売上規模が大きく見えても、以下のような状況があればリスクは高まります。
- 特定の取引先に依存している(例:上位1社で売上の30%以上を占める)
- 粗利率が年々低下している
- 新規顧客の獲得が進まず、既存顧客頼みになっている
- セグメント別・商品別で収益性に大きなばらつきがある
これらを把握することで、ビジネスモデルがどれくらい持続可能か、また買収後にシナジーを生み出せる余地があるかどうかが見えてきます。
簿外債務・偶発債務・引当金の有無を検証する
財務DDで最も注意すべきポイントの一つが、決算書の表面には現れないリスクの把握です。
特に確認しておきたい項目は以下の通りです。
- 未払残業代や未計上の退職給付債務
- 将来の訴訟リスクやクレーム対応費用
- リース債務・保証債務の未開示部分
- 引当金が十分に積まれているか(貸倒引当金、賞与引当金など)
これらを見落としてしまうと、買収後に突然多額の支出が発生し、想定外のキャッシュアウトにつながる可能性があります。目に見えない負債ほど慎重にチェックしておきたいところです。
キャッシュフローと運転資本の実態を把握する
利益が出ているかどうかだけでなく、「本当にお金が回っているか」を確認することも欠かせません。
特に重要なチェック項目は以下の通りです。
- 営業キャッシュフローが継続的にプラスか
- 売掛金・在庫・買掛金の回転期間に異常がないか
- 運転資本が季節要因や特定の取引形態に依存していないか
- 過度な前受金や前払いによる収益調整が行われていないか
キャッシュフローが不安定な会社は、黒字であっても資金ショートを起こすリスクがあります。買収後に追加の資金投入が必要になるケースもあるため、特に慎重な確認が求められます。
【税務面】デューデリジェンスのチェックリスト
税務デューデリジェンスでは、過去の税務リスクの有無や、将来の税負担に影響しそうな要素を正確に把握することが目的です。
特に中小企業の場合、税務処理のやり方や判断が属人的になっているケースも少なくありません。そのため、税務申告の正確性や潜在的なリスクの洗い出しが重要になります。
M&A後に想定外の追徴課税や税務調整が発生すると、買い手にとっては大きな負担です。早い段階からしっかり確認しておきましょう。
納税状況・税務申告書の整合性を確認する
まず確認すべきは、税務申告が適切に行われているかどうか、各申告書と財務諸表の整合性がとれているかという点です。
具体的には以下の項目をチェックします。
- 法人税、消費税、地方税の申告が期限内に提出されているか
- 納税漏れ・延滞・分納の履歴はないか
- 財務諸表と法人税申告書の損益金額・勘定科目が一致しているか
- 交際費・役員報酬・寄附金など、税務上の調整項目が適正に処理されているか
これらに問題があると、今後の税務調査で指摘を受ける可能性が高くなります。買収後に追徴課税や修正申告が必要になるリスクもあるため、見逃さないようにしましょう。
繰延税金資産・繰越欠損金の評価
買収対象の企業が繰延税金資産や繰越欠損金を計上している場合は、その「実現可能性」を慎重に見極める必要があります。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 繰延税金資産が過大に計上されていないか
- 今後の利益計画(中長期)で本当に回収できる見込みがあるか
- 繰越欠損金の使用期限(通常10年)や利用制限に問題はないか
- 過年度の欠損金が税務署に否認されるリスクはないか
これらの評価が甘いと、買収後に繰延税金資産が取り崩され、利益が一気に減少するといった事態も起こり得ます。財務DDとあわせて、慎重に検証しておくことが大切です。
税務調査履歴・修正申告リスクの把握
税務面で特に見逃してはいけないのが、過去の税務調査の履歴と、潜在的な修正申告リスクです。
確認しておきたいポイントは次の通りです。
- 過去何年以内に税務調査を受けたか
- 指摘事項の内容(重加算税・過少申告加算税などの有無)
- 調査後に改善されていない運用やグレーゾーンが残っていないか
- 役員貸付金・在庫評価・役員報酬・移転価格など、調査で問題になりやすい論点の状況
これらを事前に把握しておけば、買収後に追徴課税や修正申告が発生するリスクをある程度見積もることができます。後から「知らなかった」とならないよう、しっかり確認しておきましょう。
【法務面】デューデリジェンスのチェックリスト
法務デューデリジェンスでは、企業の権利関係や契約リスク、コンプライアンスの状況など、M&A後に法的トラブルへ発展しそうな領域を幅広く確認していきます。
特にスタートアップや中小企業では、「契約書が何年も更新されていない」「知財の帰属があいまい」「代表者個人との契約に依存している」といった問題が見つかるケースが珍しくありません。
ここでは、法務面で確認すべき主要ポイントを分野別に整理していきます。
会社登記・定款・株主構成の確認
まず確認すべきは、企業の基本情報に関する部分です。
具体的には、次のような項目を中心にチェックしていきます。
- 登記事項と実態が一致しているか
役員変更や本店移転が登記に反映されていないと、重大な法務リスクになります。 - 定款に問題となる規定がないか
譲渡制限、発行可能株式数、優先株式の内容など、M&Aのスキームを左右する項目を精査します。 - 株主名簿と実際の株主構成が一致しているか
スタートアップの場合は、株主間契約(SHA)や投資契約の内容もあわせて確認しましょう。優先株式の権利内容(清算優先・議決権・希薄化防止条項など)も要チェックです。
基礎情報にズレがあると、持分移転や対外的な手続きに支障が出る可能性があります。法務DDでは最初に確認される領域なので、しっかり押さえておきましょう。
主要契約書(取引・リース)の内容精査
事業運営に関わる各種契約書は、将来の収益やコストに直接影響する重要な資料です。
確認すべきポイントは次の通りです。
- 重要取引先との契約内容(解除条項・更新条件・独占条項)
特に「M&A時に契約が解除されるChange of Control条項(CoC条項)」には注意が必要です。 - 販売代理店契約・OEM契約・業務委託契約のリスク
損害賠償の範囲、競業避止義務、成果物の知財帰属などを確認します。 - リース契約・借入契約・保守契約の条件
長期契約の固定費や中途解約時のペナルティは収益性に影響するため、財務DDとも密接に関わる領域です。
契約書の有無や更新状況だけでなく、契約管理の体制そのものを評価することも大切です。
知的財産権の権利関係・ライセンス契約の確認
特にIT企業・製造業・ブランドビジネスでは、知財の確認がM&Aの成否を左右します。
主なチェックポイントは以下の通りです。
- 特許・商標・著作権・ドメインなどの権利が会社に正しく帰属しているか
開発者個人に権利が残っていたり、外注先が著作権を持っているケースは大きなリスクになります。 - 第三者の知財を利用していないか、侵害の可能性はないか
特にソフトウェアでは、オープンソースライセンスの遵守状況を必ず確認しましょう。 - ライセンス契約の条件(利用範囲・期間・ロイヤリティ)
契約内容が不明確だったり、M&A時に再許諾が必要な契約には注意が必要です。
知財は企業価値を構成する中心的な要素です。特に技術系の企業では、かなり深く掘り下げて調査が行われます。
訴訟・係争リスク・コンプライアンス状況の確認
最後に、将来の損失につながりうる訴訟・係争・法令遵守面を精査していきます。
確認すべき項目は以下の通りです。
- 現在進行中、または潜在的な訴訟案件の有無とリスクの金額見積もり
- 行政処分・指導履歴の有無
- 労務関連の法令違反リスク(未払残業、ハラスメント、労使トラブルなど)
- 内部統制・コンプライアンス体制の整備状況
スタートアップの場合、「口頭契約のまま運用している」「契約書なしで業務委託している」「労務管理が不十分」といった問題が発覚するケースが多く見られます。買い手側としては、特に慎重な確認が求められる領域です。
【人事・労務面】デューデリジェンスのチェックリスト
人事・労務デューデリジェンスでは、従業員の処遇や働き方、労務リスクを把握し、買収後のトラブル回避や経営統合(PMI)の計画に役立つ情報を集めていきます。
特に労務リスクは、発覚した場合の影響が大きく、最終的な買収金額にも直接響くことがあります。慎重にチェックしていきましょう。
従業員数・人件費・組織体制の確認
まずは、会社の人材に関する全体像を把握することから始めます。
確認すべき項目は以下の通りです。
- 部門別の従業員数
- 正社員・契約社員・パートなどの雇用区分
- 年齢分布・勤続年数の傾向
- 組織図・役割分担
- 人件費の推移(年収テーブル・残業代・賞与・福利厚生費)
これらを確認することで、人件費が妥当かどうか、将来の人件費負担がどれくらいになりそうか、組織として健全な状態かどうかが見えてきます。また、シナジー効果の検討や統合後の人員配置を考えるうえでも欠かせない情報です。
労働条件・就業規則・未払い残業の精査
労働環境やコンプライアンスの遵守状況を確認するため、以下の資料を重点的にチェックします。
- 労働契約書(契約内容の整合性)
- 就業規則および変更履歴
- 労働時間管理の実態(勤怠システム、残業の申請ルール)
- 未払い残業(サービス残業)のリスク
- 休職・産休・育休制度の運用実態
特に未払い残業は、買収後に発覚すると大きな遡及リスクを伴う代表的な労務問題です。勤怠管理が適切に行われているか、制度と実態にギャップがないかをしっかり確認しておきましょう。
社会保険・退職給付債務の適正性チェック
法定福利費や退職給付に関わる負債は、将来のキャッシュフローに影響する重要な項目です。
確認しておきたいポイントは以下の通りです。
- 社会保険の加入状況に漏れがないか
- 外国人労働者やパートタイム従業員への社会保険適用
- 退職金規程の内容
- 退職給付債務(未払退職金)の計上が妥当か
- 厚生年金基金などへの加入状況
特に退職給付債務が大きい企業では、企業価値評価(バリュエーション)に直接影響する可能性があります。会計と労務の両面から丁寧に確認しておくことが大切です。
キーパーソンの処遇と離職リスクの把握
買収後の事業継続に大きく関わるのが、キーパーソンの離職リスクです。
以下の点を確認しておきましょう。
- 経営層・技術責任者・営業トップなど、キーパーソンの特定
- 処遇(給与・待遇)と市場水準との比較
- 過去の離職歴・採用状況
- ストックオプションやインセンティブ制度の有無
- 買収に伴うモチベーション低下リスク
キーパーソンが抜けてしまうと、売上の維持や技術継承、顧客との関係などに深刻な影響が出る可能性があります。早い段階で面談を行ったり、リテンション施策を検討したりすることが求められます。
【ビジネス・事業面】デューデリジェンスのチェックリスト
事業デューデリジェンスでは、買収後のシナジーや将来収益の見込み、事業の継続性を見極めるために、ビジネスモデルや市場環境を多角的に分析していきます。
財務の数字だけでは把握しきれない「事業そのものの強み・弱み」を評価する、非常に重要な工程です。
ビジネスモデル・収益構造の検証
まずは、対象企業が「どのように価値を提供し、どうやって収益を上げているか」を整理します。
特に注目したいポイントは以下の通りです。
- 主力商品・サービスの提供価値と差別化要因
競合と比較したときの優位性や、顧客が選び続けている理由を確認します。 - 単価・数量・リピート率など収益のドライバー
単価依存なのかボリューム依存なのか、継続収益型(サブスクなど)か単発収益型かを把握します。 - 収益源の集中度(売上構造の安定性)
特定の顧客や商品への依存度が高い場合、事業リスクが増します。 - 外注比率・原価構造・粗利率のトレンド
原価の変動要因や粗利率の安定性は、将来の利益予測に直結します。
これらはビジネスの持続可能性、将来の収益性、スケールできる余地があるかどうかを判断するうえで欠かせない項目です。
主要顧客・仕入先・契約条件・解約リスクの把握
次に確認するのは、事業継続に直結する「取引先」と「契約」の安定性です。
チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 主要顧客の売上割合・顧客別の収益性
上位数社で売上の大半を占めている場合、1社が離れるだけで大きな影響が出ます。 - 顧客との契約条件(期間・更新・解除条件・価格改定の可否)
特に解約条項や価格の見直しルールは収益に直結するため、しっかり確認しておきましょう。 - 仕入先の依存度・代替可能性
原材料の調達リスクや価格変動リスクを把握します。 - 未契約の慣行取引や口頭契約の有無
契約書がないまま長年取引しているケースでは、買収後に条件変更や取引終了のリスクがあります。
契約関係は将来の安定収益に影響するため、細かな条項まで含めて実態を把握しておくことが大切です。
市場ポジション・競合環境・成長性の分析
最後に、事業が置かれている市場環境を分析し、将来の伸びしろを評価します。
確認すべき項目は以下の通りです。
- 市場規模・成長率・産業のトレンド
成長市場なのか成熟市場なのかによって、投資判断は大きく変わります。 - 対象企業の市場シェア・ブランド力・ポジション
ニッチトップなのか、競争が激しいレッドオーシャンで戦っているのかを確認します。 - 主要競合の強み・弱み・参入障壁の高さ
新規参入が容易な市場では、収益が不安定になりがちです。 - 技術革新・規制変更など外部環境の変化要因
法改正やテクノロジーの進化による将来的な影響も評価しておきましょう。
事業DDの目的は「今の利益」だけでなく、「未来の成長余地」や「競争優位性が今後も維持できるか」を見極めることにあります。
【IT・セキュリティ面】デューデリジェンスのチェックリスト
IT・セキュリティ面のデューデリジェンスは、買収後の業務継続性やシステム統合コスト、情報漏えいリスクなど、経営に大きなインパクトを与える要素を洗い出すために欠かせません。
特にSaaS比率が高い企業や、顧客情報を扱う事業では優先度がぐっと高まります。
基幹システム・業務ソフトの現状と運用実態の確認
まずは、対象企業がどのようなシステム構成で日々の業務を回しているかを把握します。
確認すべき項目は以下の通りです。
- 会計、販売管理、在庫管理、勤怠、CRMなど基幹システムの一覧
- ベンダー(開発会社)との契約状況、保守契約の有無
- カスタマイズの程度(属人化・ブラックボックス化していないか)
- オンプレミスかクラウドか、サーバー運用の責任範囲
- ライセンス数、契約名義、利用期限の整合性
特に注意したいのは、「担当者に依存しないと運用できないシステム」や「ドキュメントがほとんど存在しないケース」です。こうした状況だと、M&A後の引き継ぎが難しくなり、アップデートや障害対応のたびに追加費用が発生するリスクがあります。
情報セキュリティ体制・アクセス権限の精査
近年のM&Aでは、ITセキュリティの不備が重大なPMIリスクになることがあります。
以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 情報セキュリティポリシーの有無と実効性
- 社員アカウントの管理(退職者アカウントが放置されていないか)
- アクセス権限の設定(過剰権限や設定の一貫性)
- 顧客情報・個人情報の管理状況(暗号化、保存期限、保管場所)
- 外部サービス(SaaS)の利用管理、シャドーITの有無
- 端末管理(MDMの導入、BYODの可否)
- 過去の情報漏えい・事故報告、内部監査の履歴
特に「admin権限が多くの人に付与されている」「退職者のアカウントが削除されていない」といった状況は、買収後のセキュリティインシデントにつながる典型的なリスクです。見落とさないようにしましょう。
システム統合(PMI)に向けた課題とITコストの分析
買収後にグループ全体でシステム統合やデータ連携を進める場合は、その実現可能性・コスト・期間を事前に試算しておくことが重要です。
確認しておきたいポイントは、以下の通りです。
- 自社グループの標準システムとの互換性
- データ形式・項目の共通化が可能か
- API連携やデータ移行の難易度
- 基幹システムの刷新が必要かどうか
- IT保守費用・ライセンス費用の将来的な増減
- システム統合に必要な人的リソース(エンジニア/PM)
- 移行期間中の二重運用コスト
既存システムが老朽化していたり、過度にカスタマイズされていたりすると、統合コストが想定より大幅に膨らむケースがあります。
また、PMI計画が甘いと、「IT統合だけで1年以上かかってしまった」「システム投資が当初見込みの倍以上になった」といった問題も起こりがちです。事前の見積もりは慎重に行いましょう。
【不動産・環境・ガバナンス面】デューデリジェンスのチェックリスト
不動産・環境・ガバナンス面のデューデリジェンスでは、物理的な資産のリスクから企業統治の実態まで、幅広い領域を確認していきます。
特に製造業や不動産を多く保有する企業では、見落としが大きな損失につながることもあるため、丁寧にチェックしておきましょう。
保有不動産・賃貸契約・担保設定の確認
不動産に関する調査では、保有資産の権利関係・賃貸契約の内容・担保設定の有無を網羅的に確認します。
チェックすべきポイントは、以下の通りです。
- 不動産の評価額と実勢価格のギャップ
- 耐震基準への適合状況
- 設備の老朽化や修繕計画の有無
- 賃貸物件の解約条件・原状回復義務
- サブリースの有無・更新時の賃料改定条件
- 金融機関による担保設定の状況と解除条件
不動産の評価額だけでなく、将来の追加コストにつながる項目も見逃せません。賃貸物件については、PMI後の運営に影響する契約リスクもしっかり確認しておきましょう。
環境法規制・土壌汚染・廃棄物管理の把握
環境面のデューデリジェンスは、特に製造業・物流業・食品関連企業などで重要度が高い領域です。
確認しておきたい項目は以下の通りです。
- 環境関連法(大気汚染防止法、水質汚濁防止法、廃棄物処理法など)への対応状況
- 過去の行政指導や違反履歴の有無
- 土壌汚染・地下水汚染のリスク
- アスベスト使用の有無
- 廃棄物の処理・管理体制
こうした環境リスクは、将来発覚した場合に多額の原状回復費用が発生する可能性があります。不動産を保有している企業では特に、早い段階での確認が欠かせません。
内部統制・ガバナンス体制・取締役会運営の確認
ガバナンス面では、内部統制の整備状況、権限と責任の明確化、コンプライアンス体制を中心に確認していきます。
主なチェックポイントは以下の通りです。
- 内部監査の実施状況
- 稟議プロセスや情報共有体制の運用実態
- 取締役会の開催頻度と議事録の内容
- 決議事項の妥当性
形式上は整っていても、実質が伴っていないケースは少なくありません。特にオーナー企業では、経営判断が特定の個人に偏っていないかを慎重に確認する必要があります。買収後の統合にも直結する領域なので、しっかり見ておきましょう。
ESG・サステナビリティ対応状況の評価
近年の企業価値評価では、ESG(環境・社会・ガバナンス)への対応が重要な要素になっています。
特に大企業グループが中小企業を買収する場合、サプライチェーン全体としてのESGリスクが問われるため、以下の点を重点的に評価します。
- 温室効果ガス排出量やエネルギー使用量の管理
- 労働安全衛生・ハラスメント防止体制
- 取引先とのCSR調達基準
- コンプライアンス・倫理規範の浸透度
- 情報開示(サステナビリティレポートなど)の有無
これらが不十分な場合、買収後に改善コストが発生するだけでなく、グループ全体のブランド価値に影響する可能性もあります。M&Aの検討段階から意識しておきたいポイントです。
M&Aデューデリジェンスのチェックリストに関してよくある質問
Q. 買い手と売り手でチェックリストの内容は違いますか?
買い手と売り手では、チェックリストの「目的」が異なるため、重視されるポイントも変わってきます。
買い手側の場合
リスクの把握・企業価値の適正評価・将来の統合リスクの予測が主な目的です。法務・財務・労務・ビジネス・IT・環境など、幅広い領域を詳細にチェックしていきます。
売り手側の場合
事前に問題点を洗い出し、ディール中のトラブルを回避するための「セルサイドDD」として活用します。契約書の整備不足、税務リスク、労務管理の不備などを早めに修正し、企業価値を下げないためのチェックが中心になります。
チェック項目の大枠は共通していますが、「どの深さで調べるか」「どこを重点的に整備するか」という点で違いがあります。
Q. 中小企業のM&Aでもデューデリジェンスは必要ですか?
結論から言うと、必要です。
むしろ中小企業のほうが、属人的な運営やドキュメント未整備によるリスクが表面化しやすく、DDの重要度は高いといえます。
たとえば、中小企業でよく発見されるリスクには以下のようなものがあります。
- 税務申告の誤りや節税スキームによる潜在的な税務リスク
- 契約書がなく、口頭合意のままになっている取引
- 労務管理(残業代・社会保険・就業規則)の不備
- 特定の取引先への依存度が高い
- 代表者の個人保証や個人資産との混在
「規模が小さいから」とDDを省略してしまうと、買収後に思わぬ負債を抱えるリスクがあります。規模に関係なく、しっかり確認しておきましょう。
Q. デューデリジェンスで見落としがちなリスクは何ですか?
実務でよくある見落としリスクは、以下の通りです。
- オーナー社長への依存リスク
営業・技術・資金繰りを社長が一手に担っているケースです。引き継ぎが不十分だと、買収後に業績が急落する恐れがあります。 - 口頭契約・未締結契約の存在
中小企業では特に多く、法務DDで後から判明することが少なくありません。 - 労務コンプライアンス(残業代請求リスク)
未払い残業代は数年分まとめて請求されることがあり、買い手の負担が大きくなります。 - 環境・許認可関連リスク
建設業、製造業、食品業など、業種特有の許可が未更新・不備になっているパターンです。 - IT・情報セキュリティ
システムが属人化している、クラウド移行が未対応、サイバーリスクが管理されていないなどの問題です。
いずれも後から発覚すると高額なコストにつながるため、早い段階での調査が欠かせません。
Q. デューデリジェンスのチェックリストを自社で作る場合の注意点は?
チェックリストをゼロから作成する場合は、以下の点に注意してください。
- 網羅性を担保すること
財務・税務・法務・労務・ビジネス・IT・環境・ガバナンスなど、分野横断的な項目が必要です。 - 業界特有のリスクを落とさないこと
医療・介護・製造・飲食・建設など、ライセンスや規制がある業種は特に漏れが起きやすい領域です。 - 買収スキームに応じて項目が変わることを理解する
株式譲渡、事業譲渡、合併では、調査すべき契約・資産の範囲が異なります。 - 実務経験者のレビューを必ず受けること
自社だけで作成すると、どうしても想定外のリスクが抜け落ちがちです。実務経験のある会計士・弁護士・M&Aアドバイザーにレビューを依頼するのが安心です。
Q. 外部専門家(会計士・弁護士)に依頼する際の費用相場は?
中小企業から中規模ディールを想定した場合、一般的な相場は次の通りです。
| 調査の種類 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|
| 財務・税務DD | 50〜200万円程度 | 規模・調査範囲・期間によって変動 |
| 法務DD | 50〜150万円程度 | 契約数が多い企業や許認可が必要な業種は追加費用の可能性あり |
| ビジネスDD・ITDD・人事DD | 50〜300万円程度 | スコープを限定することでコスト調整が可能 |
なお、売上10億円以下の中小M&Aでは、「簡易DD(ライトDD)」として合計100〜200万円程度に抑えるケースも一般的です。予算に応じて、調査範囲を絞って依頼することも検討してみてください。
