M&Aの進め方をフロー図で徹底解説!売り手・買い手別の注意点も紹介


M&Aに興味があるけど、具体的な進め方がわからない…
企業の成長戦略、あるいは事業承継の手段として、M&A(合併・買収)はますます注目を集めています。しかしM&Aのプロセスは複雑で、初めて取り組む企業にとっては、どこから手をつければ良いのか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
この記事では、M&Aの進め方を売り手と買い手の両方の視点からフロー図を用いて分かりやすく解説します。各ステップにおける具体的な手続きや注意点、M&Aを進める前に知っておくべきポイントなどについても詳しく説明していきます。
この記事を読めば、M&Aの基本的な流れを理解し、スムーズに準備を進められるでしょう。

M&Aは、下記の順序で進みます!

M&Aの進め方:売り手側

M&Aを成功させるためには、綿密な計画と準備が不可欠です。売り手側にとって、M&Aは会社の未来を左右する重要な決断です。 ここでは、売り手側がスムーズにM&Aを進めるためのステップを、以下の9段階に分けて解説していきます。
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下記の動画では売り手側のM&Aの進め方について解説されているので、ぜひ参考にしてみてください。
1.M&Aの目的を明確にする
まず、M&Aによって何を達成したいのか、明確な目的を設定することが重要です。
後継者不在による事業承継や資金調達、経営リスクの軽減など、様々な目的が考えられます。目的が明確であれば、売却戦略や買い手企業の選定・交渉もスムーズに進められるでしょう。
2.事業価値の評価
M&Aにおいて、自社事業の価値を正確に評価することは非常に重要です。財務状況や事業の強み、類似企業の事例などを参考に、客観的な評価を行う必要があります。
売却価格を高くしすぎると買い手が見つかりにくく、低すぎると適正な利益が得られません。そこでM&A仲介会社や会計士などの専門家に協力してもらえば、適正な評価ができるでしょう。

主な評価方法やそれぞれのメリット・デメリットについては、以下の表を参考にしてみてください。
評価方法 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
DCF法 | 将来のキャッシュフローを現在価値に割引いて算出 | 将来の収益性を反映できる | 将来予測の精度に依存する |
収益還元法 | 収益に基づいて価値を算出 | 計算が比較的容易 | 将来の収益変動を考慮しにくい |
市場比較法 | 類似企業の取引事例を参考に評価 | 市場の動向を反映しやすい | 類似企業の発見が難しい場合もある |
3.売却戦略の策定
事業価値の評価に基づき、売却戦略を策定します。対象となる買い手企業の選定や交渉条件の設定、自社をどれだけアピールできるかが戦略を策定する上で重要なポイントです。
専門家と連携して、自社にあった買い手を検討することが重要です。
4.買い手企業との交渉
M&A仲介会社のサポートを受けつつ、選定した買い手企業と交渉を進めます。価格交渉に加えて、契約条件やNDA(秘密保持契約)など、様々な事項について合意する必要があります。
価格の交渉では、事業内容や財務状況について買い手側に開示することで、より適正な価格を決定できます。そのため、買い手と売り手同士での必要な情報共有は徹底しておきましょう。
5.基本合意の締結
買い手企業と主要な条件について合意したら、基本合意書を締結します。基本合意書は、M&Aの骨子となる重要な文書です。
基本合意書には、売却価格の目安やデューデリジェンスの実施合意、交渉期間のスケジュール策定などが含まれます。内容をよく確認し、専門家に見てもらうことが大切です。
6.デューデリジェンス(詳細調査)
基本合意後、買い手企業は売り手企業の財務状況、事業内容、法令遵守状況などを詳細に調査します(デューデリジェンス)。売り手側は、調査に協力し正確な情報提供が必要不可欠です。
問題点が発見された場合は、交渉条件の再検討が必要となる可能性があります。デューデリジェンスを行う上での、重要なポイントは以下の通りです。
- 財務リスクの確認・・・負債や未払い金などを抱えていないかを確認
- 契約関係の精査・・・取引先やサプライヤーとの契約状況の確認
- 事業の安定性の評価・・・買収後にスムーズに経営できるかを分析
7.最終契約の締結
デューデリジェンスの結果に基づき、最終的な契約書を作成し締結します。契約書には、売買価格や支払い方法、事業の引継ぎ方法、責任範囲など、重要な事項が詳細に記載されます。専門家による精査が不可欠です。
8.クロージング(M&Aの完了)
最終契約が締結されると、売買代金の支払いや株式の譲渡、事業の移転などが行われ、M&Aが完了します。クロージングの流れは、主に以下の通りです。
クロージングの流れ
- 資金の受領
- 株式・資産の移転
- 従業員や取引先への説明と関係の構築
この段階で経営権の最終引き継ぎを行い、買い手側が運営していくことになります。また同時に、PMI(ポストマージャーインテグレーション)の準備も開始します。
9.PMI(経営統合のサポート)
M&A完了後、両社の経営統合を円滑に進めるためのサポートを行います。組織再編、システム統合、人事異動など、様々な課題に対応する必要があります。
PMIの成功は、M&A全体の成功を左右する重要な要素です。
PMIをスムーズに進めるために、事業のノウハウの提供や取引先との関係維持など売り手側が一定期間サポートするのが望ましいでしょう。

M&Aの進め方を図解にまとめました。改めて確認しておきましょう!

M&Aの進め方:買い手側

M&Aにおける買い手側の進め方は、綿密な戦略と迅速な行動が求められます。ここでは、買い手側がM&Aを成功させるためのステップを以下の8つの段階に分け、解説します。
- 1.戦略の策定
- 2.対象企業の選定・リサーチ
- 3.初期交渉(トップ面談)
- 4.基本合意の締結
- 5.デューデリジェンス(詳細調査)
- 6.最終契約の締結(譲渡契約の締結)
- 7.クロージング(M&Aの完了)
- 8.PMI(経営統合の実施)

1.戦略の策定
M&Aによって何を達成したいのか、明確な目標を設定しましょう。例えば、市場シェア拡大や新規事業参入、技術取得などの目標を設定することで、対象企業の選定や交渉戦略が明確になります。
目標達成のための具体的なKPIを設定し、M&A後のシナジー効果についても事前にシミュレーションすることが重要です。
売上や利益率、顧客数などをKPIに設定することで、具体的な数値として事業の進捗状況を可視化できます。

M&Aの目的や具体的な目標例、KPI例について以下の表にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
M&Aの目的 | 具体的な目標例 | KPI例 |
---|---|---|
市場シェア拡大 | 特定市場におけるシェアを10%向上させる | 売上高、顧客数、市場占有率 |
新規事業参入 | 新たな事業分野に参入し、3年以内に黒字化 | 売上高、利益率、顧客獲得コスト |
技術取得 | 特定技術の取得による開発期間短縮 | 開発期間、開発コスト、特許取得数 |
コスト削減 | 買収によるコスト削減効果を年間1億円実現 | 人件費、材料費、管理費 |
2.対象企業の選定・リサーチ
戦略に基づき、買収対象となる企業を選定します。
業界分析や競合分析、財務分析などを実施し、潜在的な対象企業をリストアップします。企業規模や財務状況、技術力など様々な観点から詳細な調査を行い、買収にふさわしい企業かどうかを判断しましょう。
この段階では公開情報だけでなく、非公開情報も幅広く収集することが重要です。対象企業をリサーチし、候補を絞り込む具体的な方法は以下の通りです。
3.初期交渉(トップ面談)
選定した企業と、まずは非公式なレベルで接触し、M&Aの可能性を探ります。トップ同士の面談を行い、お互いの企業理念やビジョン、M&Aに対する考え方を共有します。
この段階では、具体的な条件の話し合いは行わず、相互理解を深めることに重点を置きましょう。良好な関係構築が、今後の交渉をスムーズに進める上で非常に重要となります。
4.基本合意の締結
初期交渉を経て、M&Aを進めることが合意された場合、基本合意書を締結します。
基本合意書には、買収価格の目安やデューデリジェンスの実施合意、独占交渉権の設定など、主要な事項を盛り込みます。これは、正式な契約締結に向けた重要な第一歩です。
そのため基本合意書の内容は、弁護士等の専門家と相談しながら慎重に決定しましょう。
5.デューデリジェンス(詳細調査)
基本合意締結後、買い手側は対象企業について財務や法務、営業、技術など、あらゆる側面から詳細な調査を行います。
デューデリジェンスの結果に基づいて、買収価格の修正や契約条件の見直しを行う場合があります。この段階で問題が発覚した場合、M&Aが中止となる可能性もあります。

デューデリジェンスを行う際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 財務や税務の精査・・・過去の決算書や不良債権の有無など
- 法務リスクの確認・・・契約関係や訴訟リスクなど
- 人事・労務状況の確認・・・従業員の雇用契約や福利厚生など
- ビジネスモデルや競争力の分析・・・将来性や競合の有無など
6.最終契約の締結(譲渡契約の締結)
デューデリジェンスの結果に問題がなく、合意が得られたら、最終的な譲渡契約を締結します。
この契約書には、買収価格や支払方法、従業員の雇用条件、その他合意事項などが詳細に記載されます。法的拘束力のある重要な契約書となるため、弁護士等の専門家のチェックを必ず受けましょう。
7.クロージング(M&Aの完了)
最終契約が締結されると、いよいよクロージングとなります。これは、買収代金の支払いと株式の譲渡などが行われ、M&Aが正式に完了する段階です。この段階では、手続きの正確性と迅速性が求められます。
8.PMI(経営統合の実施)
M&Aが完了した後も、企業統合のプロセスであるPMI(Post Merger Integration)が重要になります。買収した企業と自社を一体化し、シナジー効果を最大限に発揮するために、企業文化や業務プロセス、経営戦略などの統合を進めます。

PMIはM&A成功の鍵となるため、綿密な計画と実行が必要です。
M&Aを進める前に知っておくべき注意点

M&Aは、企業にとって大きな転換期となる重要なイベントです。成功すれば大きな成長の機会となりますが、失敗すれば大きな損失を招く可能性もあります。
そのため、M&Aを進める前に、売り手側と買い手側それぞれが注意すべき点をしっかりと把握しておくことが不可欠です。綿密な準備と慎重な判断が、M&Aの成功を大きく左右します。
ここでは、売り手側と買い手側ごとにそれぞれの注意点を解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
売り手側の注意点

売り手側は、自社にとって最善の取引を実現するために、様々な点に注意を払う必要があります。特に、以下の3つのポイントには注意しましょう。
- 1.事業価値を適切に把握する
- 2.買い手選びは慎重に行う
- 3.デューデリジェンス(買い手の調査)に備える
1.事業価値を適切に把握する
M&Aにおける最大のポイントは、自社事業の価値を正確に把握することです。事業価値を過小評価すれば、売却価格が低くなってしまいますし、逆に過大評価すれば、交渉が難航する可能性があります。
そのため、財務諸表の分析、市場調査、類似企業の事例調査などを通して、客観的な事業価値を評価することが重要です。専門家の意見を参考に、妥当な価格帯を事前に設定しておくことがおすすめです。

主な事業価値評価の方法やそのメリット・デメリットについては、以下の表を参考にしてみてください。
事業価値評価の方法 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
DCF法 | 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出 | 将来の収益性を反映できる | 将来予測の精度に依存する |
市場比較法 | 類似企業の取引事例を参考に算出 | 比較的簡便で分かりやすい | 類似企業が存在しない場合、適用が困難 |
純資産法 | 純資産額をベースに算出 | 比較的簡便 | 将来の収益性を反映できない |
2.買い手選びは慎重に行う
買い手企業との相性は、M&A後の成功に大きく影響します。企業文化や経営理念、事業戦略などが合致しないと、統合後の経営がうまくいかず、シナジー効果が期待できないばかりか、逆に経営悪化を招く可能性もあります。
3.デューデリジェンス(買い手の調査)に備える
デューデリジェンスは、買い手側が売り手側の企業価値やリスクを調査するプロセスです。売り手側は、このプロセスにスムーズに対応できるように事前に自社の財務状況、法令遵守状況、知的財産権などの情報を整理しておく必要があります。

不透明な点や問題点を事前に把握し適切に対処することで、交渉を円滑に進めることができます。
買い手側の注意点

買い手側は、M&Aによって自社の成長戦略を実現するために、様々なリスクを考慮する必要があります。特に、以下の3つの注意点が重要です。
- 1.事業の実態を正確に把握する
- 2.シナジー(相乗効果)が本当にあるか検討する
- 3.経営統合(PMI)の準備を怠らない
1.事業の実態を正確に把握する
表面的な情報だけでなく、対象企業の事業内容、財務状況、経営体制、リスクなどを徹底的に調査する必要があります。
デューデリジェンスを適切に行い、隠されたリスクや問題点を洗い出すことが重要です。特に、簿外債務や訴訟リスクなどは、M&A後に大きな問題となる可能性があります。
2.シナジー(相乗効果)が本当にあるか検討する
M&Aの目的は、シナジー効果によって企業価値を高めることです。
しかし、シナジー効果は必ずしも実現するとは限りません。対象企業との間で、本当にシナジー効果が期待できるのか、綿密に検討する必要があります。
シナジー効果が期待できないにもかかわらずM&Aを進めてしまうと、大きな損失を招く可能性があります。
3.経営統合(PMI)の準備を怠らない
M&Aが完了した後も、経営統合(PMI:Post Merger Integration)のプロセスが重要になります。
PMIは、両社の文化やシステムを統合し、シナジー効果を実現するための重要なプロセスです。PMIをスムーズに進めるためには、事前に計画を立て、担当者を配置しておく必要があります。PMIの準備不足は、M&A後の混乱や経営悪化につながる可能性があります。
これらの注意点を踏まえ、綿密な計画と準備、そして専門家の協力を得ながらM&Aを進めることで、成功の可能性を高めることができます。
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改めてになりますが、M&Aの進め方は、下記の順序で進みます。

M&Aの進め方に関するよくある質問

Q.M&Aには何年くらいかかる?
M&Aにかかる期間は、案件の規模や複雑さ、交渉の進捗状況などによって大きく異なりますが、一般的には3ヶ月~12ヶ月程度と言われています。中には、より短い期間で完了するものや、数年を要するものもあります。

具体的なステップとその期間の目安は、以下の通りです。
- 対象企業の選定・調査・・・1~3ヶ月
- 交渉・・・1~3ヶ月
- デューデリジェンス・・・1~2ヶ月
- 契約締結・・・1ヶ月
- クロージング・・・1ヶ月
スムーズな進行のためには、事前に綿密な計画を立て、各ステップに必要な時間を正確に見積もることが重要です。専門家の協力を得ながら、スケジュール管理していくとトラブルなく進められるでしょう。
Q.M&Aが失敗するケースはある?
M&Aは、成功すれば大きなメリットをもたらしますが、失敗するリスクも伴います。多くの失敗事例から、いくつかの要因が挙げられます。

代表的な失敗ケースとその原因は、以下の通りです。
・買収後のシナジー効果が期待通りに得られない
事業統合の計画不足、企業文化の不適合、経営陣の衝突などが原因
・買収価格が高すぎる
企業価値の評価不足、競争入札の過熱などが原因
・デューデリジェンスが不十分だった
隠れた負債やリスクを発見できなかったことなどが原因
・PMI(ポストマージャーインテグレーション)が失敗した
経営統合の計画や体制が不十分だったことなどが原因
・買収後の経営統合に失敗
企業文化の衝突、従業員のモチベーション低下などが原因
失敗を避けるためには、綿密な計画や適切なデューデリジェンス、そして効果的なPMI計画が不可欠です。専門家のアドバイスを積極的に活用し、リスクを最小限に抑える努力が必要です。
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下記の参考記事のように、実際にM&Aに失敗して倒産するというケースは発生しています。

M&Aを成功させるポイントも併せて確認しておきましょう!

Q.M&Aするといくらで売れる?計算方法は?
M&Aにおける売却価格は、企業の価値によって決定されます。企業価値の算定方法はいくつかありますが、代表的なものは以下の3つです。
・DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
将来予想されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出する方法。企業の将来的な収益力に着目します。
・市場比較法
類似企業の取引事例などを参考に企業価値を推定する方法。過去のM&A事例を参考に算出します。
・純資産法
企業の純資産額をベースに企業価値を算出する方法。比較的シンプルな方法です。
どの方法が適切かは、企業の業種、規模、財務状況などによって異なります。正確な企業価値を算定するためには、専門家の協力を得ることが不可欠です。
また、市場環境や交渉力なども売却価格に影響するため、一概にいくらで売れるとは言えません。まずは専門家と相談し、自社に最適な方法を選択することが重要です。